三話 冒険者ギルドに登録しよう【3】
ペッシ視点です
短めだょ
俺が傭兵を引退してから5年が経過した。
かっては傭兵として、大国の徴兵によって魔王軍と戦う事になった。
人間側としてはアレだが、糞な大国の王(我が国は小国の為逆らえなかった)や貴族よりも魔王軍の方がよっぽど誠実であり、戦場で負傷した俺を手当てしてくれたのは魔王軍の魔族達だった。
彼らのおかげで俺は妻と別れなくて済んだのだが、勇者という無差別兵器によって俺を助けてくれた魔族は生きて入るのかも分からない、生きていて欲しいとただ願う。
ただ魔族であると言うだけで女子供問わず虐殺する勇者、アレは人族では無い。
多くの国民は恐怖した、魔王や魔族よりもよっぽど恐ろしい生物だ。
魔王軍を壊滅させた生物兵器が俺たちに牙を向かないと如何して思えよう。
そもそも奴は別世界から呼ばれたらしく、俺たちとはこの世界に対する価値観が全く異なるに決まっている。
勇者による戦争の勝利がもたらした利益は糞共が掻っさらい、俺達市民は戦争の傷跡しかもたらさない。
せめてあの時助けてくれた魔族にお礼を言いたい、怪我により冒険者は不可能になり、妻子を残して旅へも行けない。
そんな俺は、昔からの知り合いであるこの街の冒険者ギルドのギルドマスターに誘われ、ギルドの教官になった。
様々な新しい冒険者が訪れるのだ、いつか俺を助けた魔族を知る冒険者に会えることを期待して。
5年の月日が経ち、何人もの冒険者達を見てきたが、亜人をごく稀に見る程度であり魔族は全く見ない、人間に一方的な暴力を振るわれたのだ、戦争に反対していた国とは言え人間の王が治める国には来たくないのだろう。
そんな日々が続く中、ギルドの職員が新新人の実力を見て欲しいと依頼して来たのだ。
魔族のだ。
最初に彼らを見た時から只者では無い事が伺えた。
外見年齢が低い少女もいたが、彼等は種族的に外見から強さを判別する事は難しい。
かの魔王軍の騎士団長は一見太った猫にしか見えないが、人間ですら珍しい聖騎士の職業を所有した一騎当千の戦士だと聞く。
1人目は魔族の美女が名乗り出た。
結論だけ言えば何が起きたのかわからなかった。ホブゴブリンの棍棒に叩き潰されたかと焦ってみれば、一瞬でその場から移動していた。
一瞬だぞ!なんの予備動作も無くだ!
それ以上に恐ろしいのは、何かを撃つ仕草をした後、ホブゴブリンが絶命したのだ。
慌てて見たが、外傷は頭に何かが突き刺さった後のみで、致命傷を負わせた武器なのか魔法なのかは全く不明である。
こいつは何をしたんだ!
相次いで前に出たのは10歳にも満たない外見の幼女である。
娘に会いたくなってきた、今日は早く帰ろう。
正直彼女が何をしたのかは見ていないが、俺は正気に戻った時には幼女の前に正座するホブゴブリンがいた。ジャックの説明によれば、俺ごと魅了状態にされてしまったらしい。
傭兵時代、元Cランクの冒険者並と言われた俺が何とも情けない事だ。
だが、元とは言えC俺を魅了してしまうとは恐ろしい魔術か、もしくは魔眼か?
どちらにしろ5年前の戦争で相対しなくて良かったと安堵するべきであろう。
さて、彼女の次に控えるのは2メートルを超える巨体の龍人ジャックである。
既に一体殺されてしまったホブゴブリンもギルド的には結構痛い損失だが、恐らくこの中で1番の貫禄を持つジャックだ、ホブゴブリンは肉片へと姿を変えてしまうに違いない。
始末書を書かないといけないかもしれないな。
正座から立ち上がったホブゴブリンは魅了の微睡みからゆっくりと覚醒していく、美しい御主人の幻想から戻った眼前には恐ろしい龍人、ホブゴブリンが哀れに思える。
自分と同じ程の身長と、自分以上の体格を見たホブゴブリンは数歩後ずさるが、首輪に施された使役印が淡く発光し苦痛に顔を歪めた。
ホブゴブリンは前に進むしかないのだ。
ホブゴブリンは発見される事も余り多くないですが、異端であるホブゴブリンがリーダーとなり統率する事は割と少ない為、基本的に単独で行動する為捕獲自体はそれ程難しくありません。