プロローグ
ジャックちゃんはまだ出てきません
勇者だった僕は逃亡の末討伐された。
彼女の話を聞いていれば良かったと後悔を胸に抱いて。
僕はキャバレ王国で別世界から召喚された転移者であり、元の世界への帰省を条件に出現した魔王という脅威の討伐を約束した。
その背景を知らず。
魔族達の国は勇者である僕にとっては通過点でしか無いが、人間達にとって技術と奴隷という資産に満ちた宝箱だったのだ。
勇者という兵器を投入し、無差別な武力による侵略。渡来人と呼ばれる、砂糖の精製等あらゆる技術を独占していた者達や、新しい魔道具、労働や性の捌け口となる奴隷達。
王国や貴族、商人達は笑いが止まらなかっただろう。
そして魔王討伐した直後、魔王を殺す程の力を持つ勇者は脅威と見なされ人類の敵となった。信頼していた味方は次々と処刑され、守った市民には石と暴言を投げられる。
ただ、救いと言えば魔王であった彼女が聡明であった事だ。魔王は幹部や魔族の貴族を亡命させていた、自らが討たれた後、人間達に食い尽くされない様に。
信頼できる家臣も全て城から逃がし、総戦力を持った人間の兵は自らが闘い勝利する。僕が魔王城と呼ばれる王座で出会ったのは、満身創痍で勇者を迎える真の王であった。
彼女は確信していたのだろう、魔王を討った人間達は、次に勇者である僕を滅ぼし、最後は人間同士で争う事を。
彼女の話によれば、人間達が渡来人と呼ぶ未知なる技術の提供者は、地球から記憶を保持してこの世界に生まれ変わった転生者の事だった。
渡来人は皆、魔物の姿であるが少なくとも群れることを好む日本人を中心とした集まりであり、人間達の様な略奪者では無い。日本以外の転生者もいるが、協力を得られたのはそれ程多くはないそうだ。
彼女は僕を説得しようとしてくれたのだが、仲間の聖女は彼女の言葉を遮り攻撃を仕掛ける。
長い戦いの末、僕の聖剣は彼女の胸を貫いた。
死の間際、薄れゆく少女の口から溢れたのは、「さよなら、くもちゃん」と言う別れの声。
きっと愛する者へ向けた言葉なのだろう。
彼女の行動が、理解できても、既に遅い。
僕は仲間の聖女から保護したいと呼び出され、彼女の短剣に胸を貫かれた。
もう、目は、何も
ジャックちゃんは魔王ではありません、部下です。奴は四天王最弱の四天王ですらないです。
勇者とも関係無いです