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創世樹  作者: mk-2
プロローグ
26/223

第25話 『力』への恐怖を知るからこそ

 ――やり過ごした危機ののち、再びガンバでエリーたちは森の中を走っていた。




 だが、森に入った当初のような活気は一行には無かった。




「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」



 5人とも、皆一様に押し黙ってしまっている。




 無理もない。




 グロウのとても人間の仕業とは思えない超常の力を伴った対話で、怪物たちを退け……そしてグロウ自身『自分は人間ではない』ということに気付いてしまったのだ。





 死線を超えた戦いの後というのもあるが、グロウ自身を含め、その存在と未知の力に皆、驚きと猜疑の念を拭いきれない。





 仲間に加わって間もないセリーナを始め、グロウを一行に加えたガイやテイテツですらも――――否、謎の遺跡から凡そ人間とは思えない出現をし、記憶も不明。力も人間とは違う。そんな過程をこの目で見ているからこそ、なお猜疑の念は深まってしまった。





 何が目的なのか。一体他にどんな能力を持っていて、どういう存在なのか。そもそも仲間に加えていていいのか。





 肉体と平生の精神は年端もいかぬ少年そのものなグロウ。その不安は誰よりも計り知れず、また誰よりも本人が己の存在を疑っていた。








 ――――と、そこでようやく――――







「――あーっ!! もー、鬱陶しいったらああ~!! みんなウザ過ぎぃ~!!」





 ――やはり声を上げたのはエリーだった。バンバン、と強くガイの座席などを掌で叩く。




「グロウがどんな存在なのか、何者なのか。んなもん、あたしらがここでいくら考え込んでも解りっこないっしょ~!? 少しでも解ろうとするためにニルヴァ市国に向かおうとしてんじゃん~っ! 疑心暗鬼になったってな~んも始まらないよ~!」




「エリー……けどよお……」

「…………」




 ガイとセリーナはエリーのあっけらかんとした態度で少しは固まったような気持ちが解れたが、相も変わらず猜疑の念で傍らのグロウを見てしまう。





「……信じなさいよ~! 例えグロウが人智を超えたなんかだとしてもさ。こんなかわいい男の子があたしらに悪さするわけないじゃん! つーか、今まで一個でも悪さしたあ~? むしろ助けられてきたじゃんよ~!!」





「そりゃあ……」

「確かにそれは……」





 2人はこれまでを思い返してみる。





 確かに、エリーの言う通りだ。





 グロウは持てる力と意志で、セリーナを癒して心の中の轍を解き、エンデュラ鉱山都市もガンバの捕縛を外して窮地を救った。人を傷付けたことは強いて言えばエンデュラの宿で情夫共に犯されそうになった時に囚われた錠や鎖を棘に変えた程度。そしてたった今……森の魍魎たちを退けて全滅しかけたエリーたちを再び救った。





 そこになんら悪意は感じられないし、マイナスな害も無かったはずだ。何の含みも穢れも無い、純粋な少年そのものだ。






「……でっしょ~っ!? 確かにわけわかんないことが多いけど……あたしらはグロウを咎めることなんかひとつもないの。むしろ感謝するべきじゃあないの!?」





「…………」





 ガイは、ガンバを運転しながらもちらちらとルームミラーを覗き込んでエリーとグロウを見ながら話す。





「……言いてえことは解るし、人道上正しいと俺も思うぜ……だが、グロウは人間じゃあねえんだ……その力でこの先、どんなヤベえことに巻き込んでくか、わかんねえんだぞ…………それもひょっとしたら、グロウの意志とか正気とかとは関係なくな。ガラテア軍もつけ狙うだろうぜ…………」





 エリーは殊更ムッとした表情を浮かべたのち――――後ろからガイの両耳を引っ張った。





「うい!? いでででで……!」




「ガイのわからず屋!! ボケ!! アホ!! 人間じゃあなくてどんな力があるか解らないから恐いの!? だったら、あたしらはこの星に生まれた時点でそういう危険にさらされているのよ!! この星っていう『人間じゃあなくてよくわかんない、力あるもの』の上に乗っかってね! それとグロウみたいな子と何が違うっての!?」




「ちょ、ちょっとエリー貴女……!」



「いでででで、やめろエリー! う、運転出来ねえだろが、いででで――――」





 痛みで運転に集中できないガイは手元が乱れ、ガンバは不安定に蛇行する。地面の起伏で車体が浮いたり、倒木にぶつかったりしてぐらつく。





「――ホラ! 見なさい!! ガンバだって、人がちゃんと意志を持って動かさないと暴走すんじゃん!! そんな不安定なモンにあたしらは生まれた時から頼りっぱなしなの! 知らず知らずのうちに、ずっと! なのに、グロウの意志も無視して味噌っかすにするとか、そんなんアリ!?」





「――わわ、わかった!! わかったから…………離しやがれ、わかったって!!」





 ガイは辛うじて、耳をつねるエリーの手をどかす。






「――――そう。それに…………わけわかんない力があって、いつ暴走するかわかんない危険があるのは……あたしもおんなじだっての…………」





「――――エリー…………」



「お姉ちゃん…………」





 伏した目のエリー。ガイは気付き、グロウは驚く。





 『鬼』の力を宿しながら不安定極まりない冒険者稼業をするエリーも、その未知なる力で何にどう危害を及ぼすか解らない事。そんなことを承知の上で共に生きると誓ったはずの自分に、ガイは気付いた。





 そんな恐ろしい、呪いと言ってもいいような力を持っていても明るく生きているエリーが、実はいつも心の裡でいつも泣きたいほど自分の境遇を呪っていて、でも前を向こうとしていた。その強さと弱さに、グロウは驚いた。





 そう。





 自分の中の未知なる力や、それを制御できない恐怖に最も怯えているのは、少なくともこの一行の中ではエリーなのだということに、ようやく気付いた。破壊にしか使い道がない分、むしろグロウのこれまでの力や意志よりよほど危険を孕んでいるはずだったのだ…………。








「――そうか……そうだったよな。エリーは……エリーだからこそ、グロウの不安も解ってやれるってか…………」





「……そうだな、エリー…………なのに私たちはグロウはおろか、貴女の気持ちも考えず…………」







 危険を意識するあまり、配慮に欠けていたことをガイとセリーナは反省した。





「――――すまねえ。悪かった。エリーにグロウ。そうだよな。そーいうのを何とか知る為に、俺たちは今旅をしてんだよな」





「ごめんなさい、2人とも…………」






 2人が慎ましく非礼を詫びると、エリーはまた平生のように、ニカッと快活な笑みを浮かべた。そしてグロウの頭をくしゃくしゃと、また頬をふにゃふにゃと撫でまわしたのち大声で話す。






「わかれば……よろしい~っ。さあ! 地図によるとそろそろ見えてくるんじゃあないの、セフィラの街! どーう? テイテツ?」






「――距離にして15㎞あまり。間もなく街の全景が見えてくるはずです。」






「――よっしゃーっ!! もうすぐ新しい街よん! また冒険があたしたちを待っているのよーっと!!」






 ――どこまでも明るく前進しようとするエリーの姿に、ガイとセリーナは勇気づけられ、ふっ、と笑えた。




 不安に苛まれていたグロウも、柔らかな笑みを浮かべてエリーに声を掛ける。





「ありがとう、お姉ちゃん。」




「えへへ~。お姉ちゃんだから当然だもん!」





 間もなく、セフィラの街だ。

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