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00 はじまる為に必要な”私が終わる”話
生まれる前の私、保谷千尋の話をしようと思う。
“生まれる前”、私はとても地味な女の子だった。
休み時間に教室の隅で一人で本を読んだり、絵を描いたり、自作の小説を書いたりしているような、オンリーでロンリーなボッチな少女だった。
誰も私に構わなかったし、私も誰にも構わなかった。
本ばかり読んで頭でっかちになっていた私は、髪の巻き具合や新作ネイルの販売日とか、誰と誰が付き合ったとかに興味はなかったし、うまく取り繕って合わせられるほど器用でもなかったから。
張り出された成績上位者の中に自分の名前があることで、そんな自分の在り方が肯定されていると思っていた。こうして評価されているのだから、正しいのは自分の方なのだと、間違っているのは彼らなのだと。私は頑なにそう思い込んでいた。
そしてある日、そんな独りよがりな奴なままに私は死んだ。
階段から突き落とされて死んだ。一人で死んだ。
痛いと思ったのは一瞬で、頭を打って気を失って。
気付けば、子供になっていた。