表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/15

第15話 強かな蛙食い

お待たせ致しました。


あくまでフィクションです!


歴史上かなり危ないジャンルですが突き進みます。


感想返しは暫しお待ちください。


本作は三田の方の作業の合間に息抜きで書いてます。





1907年11月30日


■イタリア王国ローマ クイリナーレ宮殿 フェルディナンド・サヴォイア=ジェノヴァ


ハーグ密使事件というイレギュラーが起こった結果、第二回万国平和会議は急遽朝鮮問題などの話し合いももたれることになった。


流石に、問題が大きくなったために特命全権大使の都筑馨六つづき けいろくだけでは埒があかず、丁度イタリア大使と赴任してきていた、元駐韓公使の林権助はやし ごんすけも対韓・対露強硬外交を推進して第一次、第二次日韓条約を締結させた当事者と言う事で赴任先のローマからハーグへ呼び寄せられた。更にあの明石元二郎も随員に含まれており、各国代表からの質問を的確に論破していた。


1週間ほどの話し合いの結果、明石の的確な反論などと、フランス、ロシアなどの仲裁で第一次、第二次日韓条約は有効と結論づけられ大韓帝国の外交権に関しては日本の主張が認められた。


所が、その直後、事も有ろうに会議中の7月20日に日本の韓国統監府が高宗を廃位し、新帝を擁立し韓国の内政権まで牛耳ろうと脅しを欠けていた事が判明した結果、日本に軛をかけるべきで有るとイギリス、アメリカ、我が国などが主張し、再度審議が行われた。


その結果、日本以外の25参加国のうち、棄権したフランスとロシア以外はその条案に賛成し日本は大韓帝国の内政権を得る事は出来なくなり、更に大韓帝国とは諸外国の承諾無き条約は結んでは成らないと言う、日本にとっては非常に屈辱的な条約を締結させられた。


あの時の日本側は屈辱に満ちた凄い形相だった。特に明石元次郎は満州事変後のリットン調査団による調査結果を受けた時の松岡洋右の様にも見えた。


尤も、韓国も内政権こそ失わなかったが、外交権は失ったままであったから、彼らもかなり不満げな表情がうかがわれた。


その様な事が起こったが、10月28日に第2回万国平和会議は無事に終了し、我々は、ロンドンでエドワード7世たち親族との交流を終えエジンバラ城など遅めのバカンスを楽しんで、昨日帰国し、従兄殿こくおうに報告を行ったのである。


今後日本がどう動くかは神のみぞ知る状態だが、完全なお荷物と言える朝鮮半島の併合を禁止された以上は、本土のインフラ整備に金をかけて貰いたいものだ。朝鮮に金をかけすぎたために、東北などのインフラ整備が出来ずに、農村の疲弊が顕著になって娘の身売りとかが続出するんだからな、それらが原因で226事件とかが起こるのだから。


1908年2月10日


■イタリア王国ローマ クイリナーレ宮殿 フェルディナンド・サヴォイア=ジェノヴァ


ハーグ密使事件幕引きから3ヶ月が過ぎ、事態は予想外の様相を見せていた。

先ずはフランスと日本の仏日協約が早々に改訂された。


史実ではフランスは仏日協約の締結の際に、反仏運動をしているベトナム留学生の引渡しを要求した。しかし史実での日本政府はその要求には応じなかったものの、1909年には留学生全員を国外に追放しているんだが、この世界では改訂された仏日協約では、1億£(10億円)の第二次借款の代わりに二百人を超えるベトナム留学生をフランス政府に差し出してしまった。


彼らは、日本を信じていたのにその日本に売られる形でベトナムのハノイへ送られた。フランス政府は自由と博愛の国が聞いて呆れるほどの一方的で恣意的な裁判の結果、彼らを南米のフランス領ギアナにあるデビルズ島(悪魔島)へ送り込んだ。そしてドンズー運動の指導者ファン・ボイ・チャウは謀殺されクォン・デ侯は幽閉された。


この事や大陸、朝鮮などでの行動で、日本はアジアを白人支配から解放してくれるという幻想が崩れ、多くのアジア人から失望される結果となった。


そういった事も含めて今日は王宮で従兄殿こくおうや親戚(サヴォイア=アオスタ家)や大臣らと話し合いだ。


尤も親父殿は参加していない、何故なら親父殿は既に60越えているから完全に隠居状態で政務に関しては俺に一任という事なんだ。まあ、陸軍の方では未だ現役の元帥閣下なんだけどね。何たって史実での第一次大戦では従兄殿からイタリア軍最高司令官の肩書きを貰ったからな。まあ何分に他国に対する箔付けと王族というコネクションを考えたんだろうけどね。


「それにしても、フランスは強かよの」

「真に」

「日本の混乱に乗じてまんまと漁夫の利を得たか」


フランスの日本政策レポートを見ながら従兄殿とジョヴァンニ・ジョリッティ首相が作ったような笑顔で話しているんだが、狸と狐の化かし合いみたいだよ。


「たいしたお方ですな。クレマンソー首相は」

「確かにな、あそこまで動くとは拍手をおくりたいものよ」

「真に、仏日協約は元々アジアにおけるフランス植民地インドシナと清の南方地帯、所謂広西、広東、雲南各省がフランスの権益下に、台湾、福建省が日本の権益下として、お互いの領域を尊重し侵さないという条約でした。それによりフランスが日本に500万£(5000万円)の借款を行うと言うものでした」


「それにプラスして、日本の借り換え公債250万£(2500万円)をフランス銀行団が引き受けるという話も有りましたね」

今度はアオスタ公エマヌエーレ・フィリベルト・ディ・サヴォイア=アオスタ殿が頷きながら答えた。彼は従兄殿の従弟だが、我が家とは再従兄になる。何故なら、我が家は叔母上が先王陛下に嫁に行ったからの母系の従兄で、向こうは先王陛下と先代アオスタ公は兄弟だからだ、そのうえ、複雑なのは先代アオスタ公アメデーオ・フェルディナンド・マリーア・ディ・サヴォイア=アオスタ殿は一時スペイン王になった事も有るんだよ。まあ1870年から73年までの3年弱しか即位して無かったけど。


「当初は、引く手数多だった日本公債だったのうフェルディナンド」

いきなり従兄殿から話を振られたぜ。

「はい、それがハーグ密使事件の影響で日本の大陸利権独占の企みが暴かれた為、日本の国際的な信用は見る影も無くなりました」


「公債など軒並みの下落でフランス、いやロスチャイルドと言えますか、その含み損が恐ろしい金額になっているとか」

「左様、フランスの金融界ではパニックが起こっていたしの」

「真に」


「それでも、我が国は誰かのお蔭で逃げる事が出来て損どころか、利益まで得られたのだからね」

従兄弟殿がニヤリとしながら俺を見てくる。

「利益など少しです。此方としては、フランスとロスチャイルドが混乱した隙を突いてバグー油田の権利を旨くせしめようと考えていたのですが、流石はフランスです。あの程度の混乱は直ぐに対処しました」


「そうだの」

「元々、彼の国は強かさは定評がありますから」

「左様、パニック状態なのはフランスより日本であったからの」


「はい、あの時点で強権的な治安警察法を持つ日本は内国債の支払い延期を法律で制定しました」

「しかし外国公債はそうは行かぬの」

「はい、公債の6割以上の下落で日本公債はジャンク債といって良いほどになりました。それに講和条約締結時に日本の手持ち正貨(金貨、金地金など)は5200万£(5.2億円)でしたが、戦争が終わっても毎月300万£(3000万円)が海外へ流失し、現在では1300万£(1.3億円)を割り込んでいます」


「それに対して日本の国家予算は6020万£(6億200万円)です」

「正貨準備高が5分の1とは」

驚きだよ、これ完全に兌換紙幣が使えなくなるぞ。

この情報が漏れたら取り付け騒ぎだな。


「それに対して、公債は1億3000万£(13億円)です」

「それが、60%の下落で正味7800万£(7.8億円)かね、恐ろしい事だ」

「しかし、暴落したとは言え、それほどの流失とは、無駄使いが多すぎるのでは無いか?」


「ですな、普通で有れば取れたはずの賠償金を取れなかった事での破綻といえます」

「750万£のフランスからの借款で多少は何とか成るのではないか?」

「いえ、仏日協約の500万£は南満州鉄道への資金として充当されています」


「ほう、しかし資本金2000万£(2億円)は全て揃ったのではないのかの?」

「真に、それだからこそ、我が国やアメリカからの資本提供を拒んだのではありませんか?」

皆も、良く知らないことだが、2億円という資本金には絡繰りがあったんだ。


「確かに、南満州鉄道は日本政府と民間株式で2000万£(2億円)という金額が入金された様に装っておりますが、実際には、20£(200円)の満鉄株が僅か0.5£(5円)の保証金で購入できましたので発行株数10万株に対して入金は20万£(200万円)しかありませんでした。その上、政府が1000万£(1億円)を供出するという話も、半分は清の財産である鉄道を現物供出して1000万£(1億円)とするという正に詐欺のような方法でした」


「何と、国際的にけしからん事ではないか」

「だから、極東の野蛮人は」

「公、清は抗議しなかったのですか?」


「清は、速攻で抗議しましたが、清国公使林権助は『これを相手にする必要は無い』と意見具申し日本政府も無視したのです」

「なんと、近代国家へと移行しつつあると言っていたが、所詮は黄色人種か」

「金を貸し、武器の密輸までしたにも係わらず、後ろ足で砂をかける行為を平気でするとは、憤慨ものですな」


「公、早めに公債を処分して助かりましたな」

首相はそう言うが、下落させたのは俺みたいなものだしな。


「しかし、それだけ金をかけても、上海、ウランウデ鉄道が開通すれば水の泡でしょうに」

満鉄の資料を読み終わったアオスタ公が軽蔑した笑いをしながら話してくる。

「確かに、上海港の拡張を行い、極東一の大規模ハブ港を作りますので、日本の横浜、神戸、満州の大連などは10年以内に閑古鳥が鳴くようになるでしょう」


ここまで行くと、先ずはカエサルとの約束にしたがって、イタリア発展を行っているから、その片手間に日本対策という感じにシフトしないとだな。日本ばかりにかまけていたら怒られかねん。それには日本貧乏作戦でもしないとだよ。戦うための金が無ければあそこまで凶暴にならないよな・・・・・・


あー、貧すれば鈍すると言う言葉もあるから、やけのやんぱちでなんかしでかしそうだな。



1908年3月4日


■イタリア王国ローマ クイリナーレ宮殿 フェルディナンド・サヴォイア=ジェノヴァ


事件発生!

何と日本で大規模暴動が発生!


「日本では主食の米の輸入すら出来ずに庶民が餓死しかけない状態になり主食の買い占めや売り惜しみした業者を襲う、一揆が起こったとか」


そうなんだよな、結局、この当時の日本は米の20%を輸入に頼ってたが、今回の大混乱で輸入量が激減しただけじゃなく、天候不順で凶作に成ったことで飢饉になりかけ、売り惜しみや買い占めが起こって、庶民が米寄越せと暴れたんだよ。まさに、1918年の米騒動が10年以上早く起こった結果にプラスして公債価格の暴落による株価の暴落と合わさって、倒産する会社が続出し巷には失業者の山が出来、彼らも暴動に加わった結果、日本中で百姓一揆に革命じみた暴動が続発、暴動参加者は数百万人となり、警察だけではどうしようも無く成り、戒厳令が敷かれ軍により鎮圧されたが、死者多数という悲惨な結果になった。


「それにより、我が国を含め、アメリカ、イギリス大使館が襲撃され尋常では無い被害が出ています」

「我が国は運良く死者が出なかったが、アメリカは副公使が、イギリスは商社の社員が殺害されたそうだ」

「はい、アメリカ副公使、ジョージ・エドワーズ氏が暴漢に襲われ刺殺されております」


向こうは、今回の事はアメリカ、イタリア、イギリスがハーグで邪魔したからだと新聞や弁士などがアジリまくって大使館、教会、外国系の商社などを襲い焼き討ちした。アメリカ、我が国、イギリス共に大使館が焼失、その他損害多数と言う結果だが、幸いにもイタリアはそれほど日本には在留者がいなかったので重軽傷者は出たが被害は軽微なんだが、他国はそうとう深刻な被害らしく各国とも怒り心頭になっているらしい。


「ルーズベルト大統領は怒り心頭とか」

「国民も反日デモを行っています」

「そこで、クレマンソーか」


「はい、クレマンソー首相がインドシナより米を大量に援助したことで、食料事情が安定し暴動後にも燻っていた社会不安は沈静化しました」

「今では彼は日本国民の英雄だそうじゃ無いか」


「はい、新聞の論調ですと『暴利を貪る英米伊との条約を廃し、手を差し伸べてくれた仏と同盟を結ぶべき』と」

「なるほど、国民を味方に付けたわけだ」

「今ならクレマンソー氏が日本で立候補すれば首相になれるでしょうな」

「違いない」


この暴動で、反米、反英、反伊、親仏となった日本に対して、フランスは色々仕掛けて来ていたようだ。


前回、フランスが日本に対して500万£の借款を行ったが、使えない金で目減りしていく資金にほとほと困った日本は、フランスからの提案で第二回目の援助公債と言う名の政府借款10億円を得る事が出来たのだが、その為の担保として鉄道債を出す事とした。


しかし東海道本線、東北本線、山陽本線などの基幹線を担保にする事は陸軍の猛反対で断念し、代わって鉄道国有法で国有化を除外されていた15私鉄である川越鉄道(西武鉄道国分寺線、新宿線)成田鉄道(JR成田線)、東武鉄道、上武鉄道(秩父鉄道)、豆相鉄道(伊豆箱根鉄道駿豆線)、水戸鉄道(JR水郡線)、中越鉄道(JR城端線、氷見線、JR貨物新湊線)、豊川鉄道(JR飯田線)、尾西鉄道(名古屋鉄道尾西線)、近江鉄道、南海鉄道(南海電気鉄道)、高野鉄道(南海電気鉄道高野線)、河南鉄道(近畿日本鉄道長野線など)、中国鉄道(JR津山線、吉備線)、博多湾鉄道(JR香椎線)が強制買収され担保として差し出された。


これは日本国内の内国債ならば幾らでも発行可能だからこそで、買収金額は全て年利3%ので90年満期公債で支払われ、しかも売却可能は5年後という詐欺のような方法で巻き上げられた。これって第二次世界大戦中の戦時強制買収と殆ど変わらんぞ、あの時も換金不可能な戦時公債で支払って戦後の驚異的なインフレと新円切り換えで紙くずにして主要鉄道をてにいれたんだからな。


何時の時代も政府は汚いわ。

取り上げられた株主は、公債の6割下落の影響で株価も暴落し多くが破産するという結果にもなった。


しかし、東武鉄道とか南海鉄道とかが国有化されたわけだから、スペーシアやラピートが消えるのか?

日本で暴動が起こりました。

そしてフランスはあざとい。

日仏が同盟関係になりつつあります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ