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第11話 結局こうなる

お待たせしました。


結局こうなりました。

1906年12月2日


■イタリア王国ジェノヴァ アンサンドル社  ウィンストン・レナード・スペンサー=チャーチル


目の前の岸壁にはイタリアが建造した新型戦艦の姿が有る。

こいつは、今までの戦艦と違い、中間砲を廃止して多数の主砲を装備するというヴィットリオ・クニベルティ造船官がジェーン海軍年鑑に投書したアイデアとフィッシャーの爺さんが地中海艦隊時代に考えたアイデアが混ざった結果。ブリテンではドレッドノートがイタリアではこのクソ長い名前の艦が同日竣工した訳だが、ここまでには紆余曲折があったからな。


フィッシャーの爺さんが黄海海戦、日本海海戦での艦艇の戦い振りから、単一巨砲搭載艦こそが今後の戦艦の有り様だと考えた頃、既にこの艦の建造は始まっていたのだから、賞賛されるのは、公とクニベルティ造船官なんだよな。


フィッシャーの爺さんが工廠を急かして一年半で完成させるとは、老人の執念は恐ろしいもんだ。

まあ、その事を知った公と誤魔化そうとする爺さんとの駆け引きと、国王陛下の仲裁で、今回の同日竣工に成った訳だが、爺さんは舌の根が乾く前に工廠に更なる工事の督促行って、結局の所の皇太子殿下をお目付役にするはめになったからな。


全く、爺さん我が強すぎるんだよな。

それに引き替え公が温厚で物わかりが良いからこそ喧嘩にならなかったが、何処ぞの腐ったキャベツを食う連中の皇帝なら戦争になりかねない事だからな。


それにしても、公はその温厚さだけでは無く恐ろしい人物だと言えるがな。

温厚な面では、自国民だけで無く欧州全域からのユダヤ人移民の受け入れや、それに伴う学校や職業訓練所の開設にイタリアとイタリア海外領のインフラ整備の強化による労働力の受け入れ、ベルギーの守銭奴から買い取ったコンゴの再建と原住民に対するケアなどなどを行い、イタリアは現在未曾有の繁栄を得ている。


その他では、グリエルモ・マルコーニ、ニコラ・テスラ、レジナルド・フェッセンデンらと共同でイタリア全土に無線式放送を送信し始めた。これには俺も驚いた。今までは有線式放送なら数は少ないが存在したが、無線式は初めてだった。最初は聞き辛かったが、最近では鮮明に聞こえるように成り、イタリア国民の娯楽として活躍している。


これに関しては本国やアメリカでも興味を持つ者が出始めている。これに関しては三人の頭文字を会社名にしたMTF社が各国で特許と敷設権を申請している。既に許可を出した本国では敷設工事が始められ、無線式受音器の試験運用も行われているところだ。


これもまた、ユダヤ人などの勤勉な移民と大らかなイタリア人との共同製作により進められているが、真空管などの精密機器の製造にはユダヤ人が、外箱などの製作にイタリア人がという感じで民族性を考慮して作らせている。これにより製品の歩詰まりが改善され良品が多くなっているそうだから、適材適所の良法といえる。


公の恐ろしい面は、何故か知らぬが、人の生死、紛争、株価の乱高下などの情報を集めるのが早く、それを元に多くの富を得ている事だ。


何と言っても、現在アメリカの株式総額40億$の40%が公の息の掛かった証券会社の持ち物だと判明したときは国王陛下も資料の機密指定を命じたくらいだ。


情報部が調べた結果では、公は移民したイタリア系住民のコロニーごとにファミリーを形成させ、彼らに証券会社を経営させることで正業に就かせ、イタリア移民を貧困から救うだけでなく、各社に株の売買を命じて的確な儲けを得ているわけだが、その儲けが尋常じゃ無い。


最近では1901年に起こった鉄道株買収の争いであるモルガン・グループとクーン・ローブ・グループの戦い”ノーザン・パシフィック事件”での活躍を読んで寒気がした。


元はシカゴ・バーリントン・アンド・クインシー鉄道を自社の影響下にしようと株の買い占めを画策したハリマンのユニオン・パシフィック鉄道とモルガンのノーザン・パシフィック鉄道の争いから始まり、ノーザン・パシフィック鉄道が勝利して幕が降りた。


しかし諦めきれなかったクーン・ローブ・グループのハリマンがモルガンの持つノーザン・パシフィック鉄道の株式を密かに買収しようとして、75万株近くを買い占めそれに気づいたモルガンも買い占めに走った結果、異様な出来高に成った。


元々ノーザン・パシフィック鉄道株は150万株でしか無い中でハリマンもモルガンも秘密裏に買い占めをした為、市場には買い占め情報が流れること無く、株価だけが異様な上昇をしていった。


それに乗ったトレーダーや資本家が、株価の下落を見越して次々に空売りしたが、売るそばから株が買われてしまった結果、一ヶ月ほど前は50$程度だった株価が木曜日の大引け前に1000$を超えた。


しかし、既にそれ以前にハリマンとモルガンにより市場の殆どの株式は買われていた為、実際の株は殆ど残っていなかった。そして空売りと空買いだけで、株価が動き結果的に株価が下がらなかった事で、トレーダーや資本家が支払いのために持ち株を売りまくり、結果的にアメリカの株価が一気に30%も下落した。


これはアメリカの株価総評価額35億$が25億$に下がるほどの事件で、これが引き金の恐慌が起こり多くのトレーダーや資本家が破産し”暗黒の木曜日“と言われるようになった訳だ。


その時、公は半年以上前からノーザン・パシフィック鉄道株を50万株も密かに買い集め木曜の大引け前に一気に売り出していた。結果的に買値2500万$が売値5億$にまで化けた。この金額はあの鉄鋼王カーネギーがモルガンにカーネギー製綱を売却した4億8000万$を越えるのだから恐ろしい。


公の動きはそれだけでは無く、大引け前に軒並み大暴落した株を10億$分買い漁った事だ。これも全て100近い証券会社により分割して購入させたために、目立たなかったが、実際の株主は公只一人な訳だ。

10億$だぞ10億$、ポンドに直せば2億£だ。フィッシャーの爺さんが心血注いだドレッドノートが180万£だ。つまり100隻以上建造出来るんだぞ! そんな大金を右から左にポンと出せるのだから、国王陛下がパトレシア様だけで無く、ヴィクトリア様も遣わされたのが判る。


そのうえ最近では、ケープ植民地のダイヤモンド鉱山を経営するデビアス社の株を70%取得したとか。ロンドン市場も9億£の内、3億£が公の息の掛かった証券会社の持ち物だからな。

まあ、公の性格なのか、ロシアの株や外債は買わないようだが。


良い点ではボーア戦争で我が国が戦費2億3000万£も使い、経済的に青息吐息だった普通予算に充てる外債1億£を一人で受けてくれたことだ、これで我が国の財政が一息付けたと財務卿も喜んでいた。


結論から言って、公の資産は計り知れない、累算でもブリテン、アメリカ、イタリア、フランス、ドイツ、ベルギー、ネーデルランド、スイス、スエーデン、日本などの各国株で、10億£、債券で6億£、その他にも鉱山や油田の権利などある、総資産が一体どれ程あるのやら俺には想像も付かん。


これだけ見ても、公を敵に回すことは絶対にしては成らないと言う事が判るだろう。運の良いことに公は我が国に非常に好意的であり、第二の故郷と言って憚らない程だ、性格の良く、俺とも馬が合うのだからな、これほどの幸運を捨て去る馬鹿がいたらその顔を見てやりたいが・・・・・・いたな、髭の皇帝と極東の島国が・・・・・・


それにしても、造船所労働者もそうだが国中の労働者が生き生きしているのが判る。コレもやはり公の功績だ。公は社会主義者どもがインターナショナルで叫んでいる8時間労働を法律で制定させただけでなく。驚くべき事にそれ以上である完全週休二日制と夏のバカンス休暇2週間制などを含む労働基準法、国民全てを健康保険に加入させる健康保険法、ビスマルクの始めた年金制度を基にしたイタリア年金法の設定、学制の改革、渋る資本家や地主を説得し労働組合の設置や農業協同組合の設置などを進めた結果、イタリア国民は、急進的左翼どもや無政府主義者アナーキストどもに興味を無くしている。


これは、公から『衣食足りて礼節を知る』という東洋の諺を教わったがまさにそう言えるな。今現在、イタリア国民は豊富な資源により十分な生活をおくれる事で、国民の不平不満が殆ど無く、危険思想にかぶれる連中などが殆どいないからな。


治安も、公が再編成したマフィアが地回りとして地元警察と共に不逞者の捜査などに宛たり、イタリア全土に張られたコンビニエンスストアと言う24時間営業の小規模販売店のネットワークを利用した事で、各地の治安と監視が強化されているのだから。


監視と言っても国民を締め付けるタイプの監視では無く、安全を守るために不審者などを監視するシステムだそうで、危険な無政府主義者などのテロリズムなどを未然に防ぐことに成功している。

この点に関しては我が国も見習うべき点が多々有ると思う。


結論から言って公に敵対するのは馬鹿であり、公を排除すれば、世界経済に与える影響は破滅的になると思える。我が国は総力を以て公を守るのが良いだろう。


「おい、禿、何をボッーと考え事しているんだ?」

ん、いかんいかん、俺としたことが考えすぎていたか。

「いやなに、数日前のお前さんの醜態振りを思い出していただけだ」


「ケッ、嫌なことを、それにしてもトリア姉もかよ」

「まあ、それだけお前さんが重要な人物と言う事だからな」

「まあ、日本での事は反省している」


「それなら良いが、これからは2人を護るんだから無茶するなよ」

「ああ、それにしても国王陛下(エドワード7世)にはしてやられたぜ」

「ハハハ、陛下も溜飲を下げただろうよ」


「まあな、陛下には今後ともお世話になるからな」

「娘婿なら尚更さ」

「まあ、宗教上、愛人という感じだがね」


「それは姫さまが仰ったそうだからな」

「トリア姉らしいや」

「まあ、頑張れや」

「お前もな」


やはり気の置けない友人というのは良いものだな。



1906年12月2日


■イタリア王国ジェノヴァ アンサンドル社  フェルディナンド・ウンベルト・フィリッポ・アーダルベルト・ディ・サヴォイア=ジェノヴァ


全く、この禿にもエドワード陛下にも困ったもんだわ。

あの日、シアに強請られてベットへゴーして夜遅くまで致した末にバタンキュウ状態で、ロイヤルサイズのベッドで寝ていたら、朝になってあれだけしたのにテントを張った股間をもぞもぞした感覚が・・・・・・

「シア、朝からはしたないよ」


あの時は完全に寝ぼけていたから、シアが隣で寝息を立てていたけどなかなか気がつかなかったからな。

もぞもぞ感は更に大きくなっていきなり咥えられて驚いた。

「シアったら全く」


「あっ貴方、おはよう・・・・・・」

声を聞けば、隣りにはシアが、なら下に蠢く塊は何だと、意を決して布団を剥ぐとそこには。

「あっ、フェル君おはよう」


全裸で俺の息子を頬張るトリア姉さんの姿が・・・・・・

「ネネ姉さん、何を!」

「何って何なのよね」


ほんのり頬を赤めながら上目遣いで息子を弄くる姉さん・・・・・・絶句するほどなんだが。

「ウーン、貴方、何を叫んでいるの?」

ウギャーアが目を覚ました! 修羅場が!!


「シア、いや、何でも無い・・・・・・」

「おはよう、シア」

トリア姉さん、何言ってるんだよ、修羅場になるだろが!


「ああトリア姉さん、早速頑張ったんだ。おめでとう」

「頑張ったわよ」

2人して何を言っているのか、判らないんだけど?


「シア、トリア姉さん、いったい何が?」

「えーとね、無謀をするフィル君に少しは自重してして貰わなきゃって、シアと話し合って、私も同衾すれば良いねって、決めたのよ」


トリア姉。笑顔でにこやかに言いながら、モミモミしないで下さい。

「私も、トリア姉さんが一緒なら良いなって頼んだの」

「けど、トリア姉さんに手を出したって言うか手を出された訳だけど、国王陛下にどう言えば」


俺の心配を余所にトリア姉さんはケロッとして話してきた。

「ああ、大丈夫よ。私がこっちに来たのは、シアの事も有るけどあわよくばフェル君と同衾して良いぞってお父様から薦められたのよ」


ゲッ、エドワード陛下もかよ。

「それでも、王妃殿下に申し訳ないですよ。王妃殿下はトリア姉さんを嫁に出さない程大事にして居たじゃ無いですか」

「ああ、それもOKなのよ、お母様もフェル君ならOKだって、薦めてくれたのよ」


うわー、四面楚歌じゃん!

「貴方、父(アーサー・ウィリアム・パトリック・アルバート)も母(ルイーゼ・マルガレーテ・フォン・プロイセン)も義御父上も義御母上からもOKが出てるわ」

「それに、国王陛下(ヴィットーリオ・エマヌエーレ3世)の許可も受けているのよ」


「完全に嵌められた訳か」

「まあ、貴方がはめるわけだけど」

「シア、はしたないわよ」


「うふふふ」

「ふふふ」

「なんでこうなるの?」


そうだ、宗教的には重婚は不味いし、シアよりトリア姉のほうが位階が高いからその辺が問題を提起して事を納めれば。

「トリア姉さん、重婚は出来ませんから、それにトリア姉を愛人にする事は王室に対する不敬になるでしょう」


「ああ、それなら大丈夫よ。私はシアの事が心配で来たし、静養のためでもあるのよ。お父様も20歳の時にはじめて女性と寝て以降売春婦を除いて101人の女性と関係を持って言うし、最近ではアリス・ケッペル夫人を寵愛しているんだから。それに比べて私は行かず後家で人妻じゃないから大丈夫よ」


「そう言う事じゃないんだけどな」

「貴方、良いと思うの、貴方は危ないことばかりだからねっね」

えーい、ここまで堀を全て埋められては仕方が無い。


「判った。2人とも宜しく」

「貴方、トリア姉さんと共に宜しくね」

「フェル君、シアと一緒に宜しくね」


と言う事で、図らずもシアが正妻、トリア姉さんが愛人という結果に、そして昨日まで散々搾り取られたのだ。ハーレムなんぞしたくないのだが、これ以上は増やしたくない!





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