エピローグ
落ち着きたくて、目を瞑った。
ここまで来る長い、長い道のりを思い返した。
二年かかった。そう、どちらも二年だ。
二年というのは俺の中で忘れがたく刻まれた二つの記憶だ。
一つ目は、転落の二年。
召喚士というものを目指して、願いが実らずに諦める寸前までいった二年。あれも、ちょうど二年だった。
そこから、ラルゴと出会ったあとの二年はいまに続く。
様々な記憶が断片となって思い浮かんでくる。記憶の大半が笑っていた。使い魔とだったり、誰かとだったり。
「ふっ」
思わず笑ってしまうほどだった。
「おやぁ? 試合前だっつーのに、随分と気が軽そうっすね。俺っちはイヤでイヤで仕方ないっつーのに」
羽を組んだラルゴが言う。
二人とも足を止めて通路の先の歓声が聞こえる光る舞台を見ていた。
「ついに、やっと……と思うと感慨深いものがあってな」
「やっと、の続きの言葉はなんすか? やっと最強が決まるっすか?」
「やっと最強が決まる。それと、やっと借りを返せる」
息を吐き出すように、すっと気が軽くなるのを感じた。
「なつかしいっすね。俺っちらが初めて戦ったときの試合っすか」
どこか遠くを見つめるようにラルゴが言った。目を細めて頷いている。ヨルムンガンドとリヴァイアサンが負けたあの試合を思い出しているのだろう。
いきなり、ラルゴがため息をついて言った。
「はぁ。フィオナ嬢ちゃん、竜王出してくるっすよねえ」
今すぐに帰りたい。そんなことを口から飛び出しそうになるかと思うぐらいイヤイヤ口から漏らしていた。
「出すだろうな。竜王を止められるのは魔王、魔王を止められるのは竜王だ。お前らを使役している俺たちならば、それはわかる。相手がそれを使役している以上、出さざるを得ないだろう。勝ちに拘るのなら」
「実質、俺っちと竜王との戦いになりそうっすねえ。ああ、ヤダヤダ。俺っちとあいつ、相性悪いんすよ。決着もついてないですし」
ラルゴがぽつりと漏らした。
「なんだ。お前らもか」
「そうなんすよ。俺っちらも試合で戦う以上、勝敗がつくんすよ」
珍しくふてくされているそいつの頭をポンと叩く。こすり付けるように顔を左右に振っていた。
「しょうがねえマスターのために勝ってきてやるっすかね」
「ああ、頼んだ。相棒」
ラルゴの目が輝いた。
「えっ、いまなんて!?」
バサバサと翼をはためかせるラルゴが言う。けれど、時間切れのようだ。
「ラドルフさん、舞台の上へお願いします」
その声と共に歩き出す。光の当たる、栄光の舞台へと。
「ラルゴ」
歩きながら足元のそいつに拳を向ける。どんと翼が帰って来た。
それと同時にラルゴが走り出す。俺はそれを追いかけてステージの上へと姿を見せた。
ラルゴが俺の足元より飛び立つ。
それと同時に俺の名前を呼ぶコールが鳴った。
――――『魔王』ラドルフ・ヴォルフ




