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セーラー服と20歳の女子大生

作者: 勇気

「本っ当にすみませんでした!」


 その場の当事者はセーラー服を着た女子高生と成人男性だった。現状を詳しく知らない人ならば、女子高生が男に何かしてしまって謝罪したんだななんて考えてしまうかもしれない。

 だが、しかし実際には。


 男が困惑ぎみの女子高生に向かってぴったり45°の角度で頭を下げ、本当に申し訳なさそうに誠意を持って謝罪していた。


 セーラー服を着た女子高生、名前は『時雨しぐれゆかな』といって女子高生ではなくれっきとした20歳の大学生である。一方、謝罪していた男性は『大門だいもんつかさ』、28歳の高校教師である。

 この2人、この日が初対面なのだが、何故このような状況になったのかは、まず時をさかのぼること数時間前。



 その頃ゆかなはまだセーラー服は着ておらず私服姿で夜遅くまで高校時代の女友達2人とカラオケに遊びに行っていた。 

 そこで歌ったり飲んだり食べたりして各々楽しんでいた。

 

 「ねぇねぇ折角だからロシアンルーレットやろうよ!」

 

 ゆかなの友人の一人がふとそんな提案して頼んだのは店のメニューにある一つだけ激辛が混ざっているたこ焼き。そしてそれを当てた人が罰ゲームということになったのだが…。流石主人公というべきか、ゆかながあててしまった。


 ゆかなは激辛たこ焼きによって窒息しかけるくらいにむせるという酷い目に遭った。しかしその後の罰ゲームは罰というよりゆかなにとってはちょっとしたご褒美だった。


 その罰ゲームはロシアンを提案した友人が持ち込んだ高校のセーラー服を着ることだった。期限は家に帰るまで。それまで私服は没収だそうだ。

 ゆかな達が通っていた高校の制服はセーラーではなくそんなに可愛くはないブレザーのものだったので、ずっと今まで着る機会がなかったセーラー服をゆかなは着てみたかった。

 

 ちなみになぜ友人がセーラー服を持っていたのかというと、最初から2人の友人のどちらかに着せるつもりで今大学生の妹が高校に通っていたときの夏物の制服を借りてきたからだ。


 カラオケの部屋の中ではカメラが設置してあるためトイレで着替えるはめになったが、ゆかなのテンションは上がった。記念に写真まで撮った。


 それから十分歌ったり騒いだりして楽しんだ後、終電が近いというのでついに解散になった。その時間は夜10時を過ぎていた。ゆかなはカラオケ店と近かったので家まで歩きだが、2人は電車で来ていたのでその場で別れた。

 

 帰るときになってやっとゆかなは少し焦った。もし知り合いに会ったらどうしよう、と。高校を卒業して2年は経つのにセーラー服を着ているところを見られるのは絶対恥ずかしい。まあ、世の中にはそんなこと気にせず堂々とコスプレしている人もいるのだが、コスプレ初心者なゆかなはついつい人の目を気にしてしまう。ゆかなは無意識にこそこそ人と目を合わさないように目線を下にして歩いていた。

 

 その様子は端から見たら逆に怪かったことにゆかなは気づかない。だからだろうか。帰り道の途中で後ろから声をかけられた。ゲームセンターやパチンコ店などがある少し賑わっている通りだった。 


「君、ちょっといいかな?」

 思わずびくっとゆかなが振り向くとそこにはいかにも真面目そうな眼鏡をかけた結構顔が整っているゆかな好みの青年が立っていた。

 

 思わず数秒見とれてしまったゆかなだが、何故声をかけられたのかすぐには分からず首を傾げた。

「何ですか?」

「その制服、うちの生徒だよね。こんな夜遅くに出歩いて何してた?」

「へ…!?あ、いやそのぉ」

 これにはゆかなも焦った。知り合いに遭遇することばかりに警戒していて、まさか本当の女子高生に間違われるなんて思わなかった。しかもうちの生徒って…まさかの先生!?


 そんなゆかなの慌てている様子を見て何を思ったのか相手が呆れた風にはぁ、と溜め息を吐いた。

「高校生がこの時間に出歩くのは禁止されてるのは知ってるよね。しかも君お酒飲んでない?顔赤いし匂いもする。これはどんな事情があっても親御さんに連絡しなきゃならない。」

 

 そう、もっとまずいことに友人たちと酒も飲んでいたのだ。

 しかも親に連絡って、この歳になって!理由も恥ずかしすぎる。

 このまま流されては面倒なことになると判断したゆかなは誤解を解こうとして事実を話すことにした。


 「あの、私はこの時間に歩いてもお酒飲んでも大丈夫なんです!」


 空気が凍った。明らか言葉が足らない。その一拍後男は眉間にシワを寄せた。

「いやいや、例えお金持ちや親がどんなに偉い人でもそれはまかり通らないだろ。」

 そう、先程の言葉では遠回りすぎて余計に悪印象だ。

「あ、いや、ち、違います!」

 もっと悪い印象を持たれたことに焦ったゆかなは、そうだ、学生証!とカバンの中を漁るがパニクっていてどこにしまったのか思い出せず学生証は見つけられなかった…。

 

「と、とにかく、私成人してるんです!」

 その言葉を聞いても男は嘘だと疑っているのか、冷静で。

「だったら証拠見せてね。」

 ばっさりと切り捨てられた。


 自分が高校生に間違えられる程童顔だったことにもびっくりしたが、それよりも不良少女に思われたことが悲しくて泣きそうになった。


 男の方もゆかながあまりにも庇護欲をそそるというか可哀想な顔をしていたのでどうしたものかと困った。

 と、そこでゆかなは漸く学生証がしまってある場所を思い出した。学生証はバッグの普段あまり使わないポケットの中に入れていたので気づかなかったのだ。

 カバンから学生証を取り出したゆかなは両手で学生証を掲げる。

「あの、これ見てください!」

「ん…?成丘なるおか大学の学生証…?」

 男はゆかなの出した学生証をしばらく見ていたが、次第に青ざめていった。


「この写真、お姉さん…?」

「正真正銘私の写真です!」

 4月に撮った写真だが、写真写りも良くもなく悪くもなく、そのまんまゆかなで本人だと疑いようもない。


「時雨…ゆかな、さん?」 

「はい。」

「なんでそんな格好を…?」

「な、成り行きで?」

 両者引きつった笑みを浮かべた。


 そして…冒頭へ戻る!


 目の前には綺麗に腰を折った教師。そしてその学校の制服を着た自分。周りには大勢ではないが5、6人の人。絶対こっちを見ている。ゆかなはあまりのいたたまれなさに早く逃げ出したかったので


「分かってくれたんならいいんです!ってことでさようなら!」

 全力疾走でその場から駆け出した。

 その場には置いてかれて呆然とした教師こと大門司が残された。


 しかし、このときゆかなは失敗してしまった。逃げ出したはいいが、学生証をその場に落としてしまったのである。

 そのことに気づいたのは次の日の朝になってからであった。


 

 次の日は大学は二限からだったのでとりあえず仮IDを作ってその日の授業をしのいだ。ゆかなは学生証を探しに行かなくとも再発行すれば大丈夫かと思っていたが、その予定は5限が終わった後の学生課の呼び出しにより変更になった。


ゆかなが呼び出された先にいたのは…


「えっ、どうして!?」

 もう二度と会いたくないと願ったゆかなに先日頭を下げた高校の教師大門が会釈をしてそこにいた。


 ゆかなの疑問の答えを事務の人が教えてくれた。

 大門はゆかなが落とした学生証を拾ったので学生課の方に届けてくれたそうだ。事務の人が調べたらゆかなの授業がちょうど終わるようだったので、わざわざ届けてくれたのだからとお礼を直接言えるようにゆかなを呼び出してくれたらしい。


 昨日までのゆかなだったら素直に学生証見つかって良かったなどと喜んでいたかもしれない。けれど見つけた人が悪かった。


 ゆかなが呼び出されたのは応接室だったのだが、気を利かせた事務の人はお茶を2人分用意して部屋から去っていった。とりあえずゆかなはお礼を言おうと決意した。


「あの、学生証拾ってくれてありがとうございました。しかもわざわざ大学まで持ってきて頂いて…。」

 なんとなく手を膝の上で握ったり開いたりする。

「いえ、こちらに来たのは他に用事もあって…。それにこちらも呼び出してしまったようですし。あと私ももう一度きちんと謝罪しようと思ってたので。この度は変な勘違いをしてしまって、申し訳ありません。」

 大門は申し訳無さから顔を歪ませる。そんな顔をしても様になるため、美形は得だ。

「いえいえ、そんな!もうそんなに気にしてないので謝罪はもういいですから!」

 ゆかなはあわあわと胸の前で両手を横に振る。


「いや、いくら謝っても足りないぐらいでしょう。しかし、ずっと気になっていたのですが何故あのような格好を?成り行きと言っていましたが。」

 大門は不思議そうに首を傾げる。この仕草もまた様になっていた。しかも疑われていた時は焦っていたのであまり注目してなかったのだが、ゆかな好みの顔なので尚更だ。


「うぇっ!えーと、実を言うと罰ゲームだったんです。友達とロシアンルーレットをしていたもので。」

 ゆかなも内心ノリノリで着ていたことは言わない、いや、言えない。

「ああ、そうだったんですか。なるほど、罰ゲームか、納得です。」

 うんうん、と頷きながら納得している。それから大門は自己紹介していないことに気づいて

「あの、今更なんですが私佐野高校で数学を教えております大門司と申します。たしかあなたは時雨ゆかなさんですよね?」

 大門が自分で作った名刺を渡す。

「あ、はい。」

「実はあの日は教師でローテーションで交代するパトロールの当番だったんです。言い訳になってしまいますがあの時は時雨さんがすっかりうちの生徒だと思ってしまってつい厳しくなってしまいました。…その、あまりにうちの制服が似合うほど可愛らしかったので。」

 大門は少し恥ずかしそうに頬をかく。


 ゆかなは最後の台詞に思わず固まってしまった。

(か、可愛いって言った!?いや、たぶん童顔ってことが言いたいのよ。うん。それか天然たらしだ。)

 固まること1秒、脳内でゆかなはそう結論づけた。そう、今までの説明になかったが、ゆかなの顔は美人というより可愛いと言われることが多いので、つまりは童顔である。


「あっ、そういえば時雨さんは教育学部だったんですね。」

 学生証に学部が載っていたのを見て大門は知った。

「へ、あ、はい。そうですけど…。」

「もしかして教育実習って今年ですか?

「はい、2カ月後行く予定ですけど。」

 教育実習はゆかなにとって楽しみなような怖いようなで少し緊張している。


「もう行く学校って決まってますか?」

「うーん、母校に行こうと思ってたんですけど、うちの大学は母校とは別のところにいく方針になっていて、まだどこに行こうか迷ってます。」

「では、うちの高校とかどうでしょう?せっかく知り合ったんですから、知り合いがいた方がやりやすいでしょうし、ね?」

 

 これは名案だという風に微笑を浮かべて大門が提案した。あっでも、と続けて


「僕がいたんじゃ逆に嫌ですよね。」

 と言いながら苦笑する。

 

 ゆかなは悩んだ。確かにあの時は苦手意識があったが、今話してみると案外いい人そうで話しやすいし、確かに知り合いがいた方が安心だし。ましてや顔がもろ好み!←ここ重要!(?)

「あ、いえ、大門さんももう誤解を解いて下さったじゃないですか。それに反省も凄くしているみたいですし、その件は水に流しましょうよ!」


 ゆかなはそれ以上大門が気にしない様にとなるべく明るく言った。

「時雨さんは優しいんですね。分かりました、昨日の件に関しては僕も何も言いません。」

 それを聞いてゆかなも安心した。これ以上謝られてもどうしていいか分からない。


「あ、それで教育実習の話ですよね。確かに母校以外の場所となると知人がいないので、知り合ったばかりとはいえ大門さんがいると心強いです。あ、でも、希望者とか結構いるんじゃないですか?」


「いえ、それが佐野高は僕が知る限り毎年何故だか希望者がいないんですよ。うちの高校は商業に特化しているので卒業しても教育学部に入るような人が少ないのだと思います。」

「へえ、そうなんですか。では、本当に行っても大丈夫ですか?」

「はい、是非!生徒たちの方も毎年教育実習生が来ないので残念がってるんですよ。」

 そう、教育実習でもなかったら大学生と関わる機会がない!と残念がる生徒も中にはいるのだ。


 それを聞いたゆかながくすくす笑う。

「そんなに期待されても困りますけどね。では、佐野高で希望だしてみます。」

「よろしくお願いします。」

「こちらこそ。」


 

 気がつけば、事務の人が出してくれたお茶がすっかり冷めてしまう程話し込んでいたらしい。


「結構話し込んでしまいましたね。」

 大門がそう切り出す。

「そうですね。あ、用事とか大丈夫ですか?確かここには別の用事があったんですよね?」

「ああ、用事はもう済ませましたから大丈夫ですよ。実は佐野高で講演会を予定してまして、ここの教授がその講師を引き受けて下さったので打ち合わせを時雨さんを呼ぶ前にしてきたんです。」

「へえ、うちの大学の教授が講演を…。じゃあ、これから高校の方へもどるんですか?」

「いいえ、こちらの用事が済んだらもう家に帰っていいと言われたので、このまま直帰する予定です。時雨さんはこの後、用事とかは…?」

「私も帰るしか予定はないですよ。」

「帰りは電車ですか?」

「はい。」

「僕は車で来ているのですが、よろしかったら家の近くまで送りますよ。」

「ええ!?いいですよ、そんな!電車に乗ったらすぐですし。しかもうちと大門さんの家とが遠かったら大変でしょうし。」

「家は昨日いた場所から離れていますか?」

「いえ、歩いていけるくらい近いです。」

「なら大丈夫。車で行くのでそんなに離れてないですよ。それに、どうしても送りたいので送らせてくれませんか?」

「??どうしても送りたいなんて変わってますね。」

「はい。僕は変わってるので。」

 ゆかなもそこまで断る理由もないのでとりあえず送ってもらうことにした。

「正直言うと凄い助かります。お願いしてもいいですか?」

「はい、もちろん。」

 

 そんなわけで、2人は事務の人にお礼を言ってから、大門の車のある駐車場へと向かった。


「座り心地はそんなに良くはありませんが、どうぞ楽にしててください。」

 車の扉を開けてゆかなを中に入れた大門はそう言って自分も乗り込んだ。

「おぉ、結構広い車ですね。」

「時雨さんならどんな車も広くなってしまいそうですね。」

 大門は冗談半分で言ったが本気も半分混ざっている。

「それって私がちびだって言いたいんですか?まあ、否定はできませんけど。」

 ゆかなはぷうっと頬をふくまらせてから2人で笑った。


 それからの道中はゆかなは緊張するんじゃないかと危惧していたが、案外話が弾むのでそんなこと忘れていた。

「なんだか昨日会ったばっかりというのが嘘みたいなぐらい私達気が合いますね。」

「本当に。時雨さん、たぶんもうすぐ家の近くだと思うのですがどこら辺で下ります?」

「そうですね、2つ先の信号の近くにスーパーがあるのですが、そこの駐車場でお願いします。」

「了解。」


 3分もしないうちにスーパーの駐車場に着いた。

 2人とも車から降りて立っている。

「ここまで送ってくれてありがとうございました。車中でも充足した時間を過ごせました。次に会うのは教育実習でですかね。その時はよろしくお願いします。」

「あ、いや、その。」

 ゆかなの口ごもるクセが移ったのか珍しく大門が口ごもる。

「あの、もしよろしかったら、なんですが…。教育実習前にも会いたいなと。」

「?打ち合わせでですか?」

「打ち合わせもいいのですが。」

 あーとかうんとか大門は唸っている。

しばらくしてから決心がついたという風にゆかなの目を真っすぐに見た。眼鏡越しに目力の強い目で見られたゆかなは動揺して僅かにたじろぐ。


「時雨ゆかなさん、お付き合いを前提に友人になってくれませんか?」

 告白なのかなんなのか分からない言葉にゆかなは混乱した。

「お、お付き合い?友人?ど、どっちですか!?」


「欲を言えばお付き合いしたいですけど、昨日会ったばかりでお互いのことを知らない部分の方が多いと思うので、まずはお友達からかと。」

「な、なんでお付き合い前提なんですか?普通にお友達でもいいと思いますけど。」

 

 そこまで言ってからふとゆかなは思った。本当にこの目の前にいる人とただの友達への感情で接し続けられるのかと。もろ好みな外見でしかも中身も今のところ好印象だ。それどころか会話する度に一緒にいて楽しいと思える。

 

「それは…、僕が時雨さんのこと気になっているからです。もちろん異性として。」

 その言葉を聞いてゆかなの顔が赤くなる。

 でも、あまり期待しすぎると後で落胆することになると考えて、あまり期待しないことにした。

「ええっと、私なんかそんなにぱっとしない外見だし、中身も実は面倒くさがりだし、そんな大門さんが気にかけるようなところなんてありませんよ?」

「いいえ、今日一日だけでゆかなさんのいい所はたくさん見れました!」

 

 大門はどう言えば良いかと思案した。

「俺、初対面でこんなに会話が続いたの初めてで。あーそれと、おそらくギャップ萌えってやつなんですけど、はじめ時雨さんのこと不良少女だと思ってたんですよ、申し訳ないことに。でも実際話してみると優しいし、いい意味で真面目だし、可愛いし。それにそんな謙遜しなくても時雨さんは僕が会った中で一番素敵な人です。」

 それを言い切った後、あー恥ずい、と赤くなった顔を隠すように顔を上に向けて手を当てた。それを聞いたゆかなも顔が赤くしてぼうっとその様子を見ていた。男性にそんなこと言われたことが初めてでどう答えたらいいのか分からなかった。

「もちろん、俺も時雨さんのこと全部知っているわけじゃないし、時雨さんも俺のこと知っているわけじゃない。だからこそお互いのことを知る友達期間なんです。あー、すみません、付き合い前提って言ったから混乱してるんですよね。やっぱり聞かなかったことにして純粋に友達になりましょう。」

 だめですか?とゆかなをまっすぐみていた大門が首を傾げる。大門がいい加減なことを言っていないことは十分分かった。分かったからこそ言えたというかゆかなは咄嗟に言ってしまった。


「お、お付き合い前提なくさなくていいです!わ、私は大門さんのこともう純粋に友達なんて見れないし、異性としてしか見れないというか。でも、やっぱりまだ付き合うのも早いと思うので、友達から、その、友達になって、くれませんか?」

 最初は勢い込んで言えたが、だんだん不安になって思わず言葉尻が小さくなる。


「へ…、いいんですか!?あ、いや、自分から言っておいて何ですよね。なりましょう、うん、なりましょう!」

 大門が嬉しそうに目を細めて笑ってゆかなの手をぎゅっと両手で握った。

 だゆかなはその笑顔に見とれるやらしっかりした手の感触ににどきどきするやらで忙しかった。

「は、はい!」

 でも結局、大門が笑ってくれたことが嬉しくてゆかなも笑う。


 それを見た大門が

「あの、ところで、友達ってどこまでOKなんですかね。」

「んん?何がですか?」

「いや、もう既に時雨さんのこと抱きしめたくなっちゃったのでどうしたものかと。」

 目を見開きぽかんと口を開けるゆかな。

「だ、抱きしめるのはダメです!だ、誰かに見られたら…。」

 そう、皆さんお忘れかと思いますが、2人がいちゃついて(?)いた場所はスーパーの駐車場。車は端の方に停めたのでそんなに2人に注目する人がいないのが救いだ。

「すみません調子に乗っちゃいました。あ、手を握るのはどうですか?」

「手?…手ぇー!」

 未だに手を握られていたことを思い出したゆかなが思わず手を引く。大門は残念そうな顔をする。

 

「ご、ごめんなさい!決して嫌だったわけではないです。は、恥ずかしくて…。」

 恥ずかしがるゆかなの可愛らしさに大門が優しく微笑む。

「まずは健全な友達付き合いから始めますか。」

「お願いします。」


 この後、数年後に教会で結婚式を挙げ、皆に祝福されて幸せそうな2人の姿があったとかなかったとか。ま、それはずーっと後の話で、その前に教育実習にてゆかなにライバルが現れるとか大門と付き合うとか、とにかく結婚するまでも結婚してからも色々な出来事が2人の間にあることになるかもしれない。

 

 罰ゲームとして着たセーラー服が運んだのは幸せかだったかどうか、それは未来にゆかなに聞いてみるしかなさそうだ。 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 私は、中学男子で〜す。 セーラー服は、紺に緑のスカーフでたまにかわいくしてあげるといじられ、 じゃんけん出負けると、放課後着替えさせられます。
[一言] 初めまして、セーラー服と20歳の女子大生を読ませていただきました。 外で制服を着ると、その人が何か問題っを起こした時、その制服の学校の問題になることもあるので、無関係ま人が外で制服を着た…
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