疑問点解決
「「ごちそ~さまでした~」」
「いや~、おいしかった、おいしかった」
(……あの~、ユーマさん)
(ん? なんだい? デザートはあげたかったけど、その体だったら、やっぱり……)
(いえ……それも欲しかったのですけど……あの、なんだかおかしくないですか?)
(ん? おかしいって、どういう事だい? どこか、おかしい所でもあるの?)
(あまり、はっきりとは言えないんですけれど……何かが違っているような……)
(ふーん。よくわからないけどさ、気のせいなんじゃないかな?)
(そんな事は……ないと思うんですけど……)
「ほら、ユウマ。そんな所で、ぼさっとしてないで早くお弁当をかばんに入れておきなさい。忘れるわよ」
「ああ、ごめんごめん、お母さん」
ぱぁ!SE お宝ゲット
『母さんの手作り弁当』を手に入れた!
………………。
あああああ! 変な効果音が鳴ってる!? しかも、弁当がアイテムみたいになってるし!
あ、あと、地の文がない! しかもなんか変な注釈がある!?
(ああ、そうです! そこです! 道理でおかしいと思いました!)
危ない、危ない。地の文がなくて会話文とSEだけじゃ、万が一、風景が見えない人がいたら、
全然、状況がわからないじゃないか。
なんておそろしい事を……というか、なんでこんな変な事になったんだ……?
(朝、起きた時には、こうなってましたね)
(うん。そうだ……このまま気づかなかったら……危なかった。エリュエちゃん、他におかしい所はないかな?)
(他にですか…………あ!)
(なにか見つかった?)
(はい! ユーマさんは止まっているのに、その場で手足を動かしています!)
テクテク。
(……ああ!? ホントだ! 止まってるのに、なんで運動会の行進みたいな事を!?)
すぐさま足踏みを止める。
ふぅ、危なかった。何かの呪いでもかけられたのかな?
思い起こしてみると、今日、目が覚めた時からこんな風になっていたな。
覚えていないけれど、夢の中の出来事が関係しているような気がする。
う~ん。なんか、誰かに呼ばれていたような……なんだったけなぁ……
ダメだ。思い出せない。
どうしてこんな昔のRPGみたいな事になったんだ?
「お兄ちゃ~ん! 一緒に学校行こうよ~!」
妹が、考え事をしているぼくに体当たりみたいな格好で抱きついてきた。
なので、ぼくの頭から考えていた事が全て飛んでしまった……って、おお、説明文が戻ってきた!
こういった文がないとわかりにくいし、会話文だけじゃ読みにくいもんね。
うんうん。良かった、良かった。
「いててて……メイ、そうは言っても、中学校と高校じゃ、玄関でお別れだぞ?」
「いいの! ちょっとだけでも、一緒に学校に行ってる気分を味わいたいの~!」
な、なんて、かいがいしい妹なんだ!
中学の時のクラスのやつらは、妹となんて話さないし目も合わせてくれないとか、汚物あつかいされているとか、
こんなに可愛いわけがないとか言っていたけれど、とても信じられないよ。
ウチの妹は、こんなにいい子なのに! あ、こんなに出来た子なのは、ぼくの妹だからか!
「ねぇ、一緒に行こうよ……?」
「そんなに頼まなくても、一緒に行ってあげるからさ! 潤んだ瞳で見つめるなよ」
「えへへ~! じゃ、去年みたいに腕を組んで学校に行こうね♪」
「おーけーおーけー」
(ふふ、仲睦まじい兄妹ですね)
(これくらいどこの家庭の兄妹でも普通にやっている事だよ)
そんなこんなで学校へ行く準備も整い、一緒に玄関を出た。
そして、3秒でお別れ。
「お兄ちゃん……ここで、お別れだね……寂しくない?」
「メイこそ、寂しいんじゃないのか?」
「うん……ちょっと、寂しい……だから、昨日みたいに遅く帰ってきちゃ、いやだよ?」
「ああ、わかった……あっ」
そういえば、昨日の夜にエリュエちゃんの体を捜す、って決めたんだ。うー、どうしよう?
「……? どうしたの? お兄ちゃん?」
「えっ……と、なるべく早く帰るようにするけどさ、ちょーっと用があってね……」
恐る恐る、妹を刺激しないように言ったのだけれども、
じわ……
「うわーーーん! お兄ちゃんが反抗期になったーーーー!」
ダダダダダダ…………と物凄い勢いで走り去ってしまった。
「あっ!? 待ってーーー! メイーーーっ!」
ダメだ。もう見えない所まで行ってしまった。ちゃんと理由を話せばわかってくれると思ったのに……
まぁ、ぼくの背後に取り憑いているエリュエちゃんの体を捜す為に遅れる、って言ってもわかってもらえそうにないけどさ。
(すいません……わたくしのせいで兄妹の仲に亀裂が入ってしまって……)
(いや、大丈夫だよ。メイもすぐに機嫌を直してくれるさ)