勇者よ……
勇者よ……
勇者よ……
目覚めなさい……
私の勇者よ……
勇者?
勇者! 勇者っ!!
ちょ、起きなさい!
こらー! おーきーなーさーいー! ゆーうーしゃーー!
えっ? まだ眠るの? 全く反応なし?
普通、脳に直接、呼び出されたら起きるでしょ!?
どんだけ眠りが深いのよ!? ちょっと、早く起きてよ!
私もあんまり時間がないんだから!
ちょっと~~! あんたが寝てたままじゃ、物語が始まらないでしょ!
ねぇ、早く起きて……って、ああ!?
勇者が起きない内に通信が終わっちゃう!?
こんなの前代未聞よ! 聞いた事ないわよ!
ていうか、私1人で喋ってるなんて、変な人みたいじゃないの!
う~、こんな事、恥ずかしくて他の人に言えない~!
屈辱だわ~!! もう、こうなったら最終兵器を出すしか……
あ、そうだ。今日はなかった事にしておこけばいいんだ!
それで明日また連絡すれば、何も問題は……
って、明日もこんな風に起きないんじゃないの!?
もしそうだとしたら、どうすればいいのかわかんプツン。
ちゅんちゅん、ちゅんちゅんSE 小鳥の鳴声
(起きて下さい。起きて下さい。ユーマさん、もう起床時間ですよ)
「う~ん。むにゃむにゃ……あと、5時間…………」
(それは無理です。あと、5秒でそちらの時計から信号が鳴る予定ですから)
ジリリ……ガシャン! …………zzz……SE アラーム
(まぁ! 眠っていらっしゃるのに、なんとも素早い身のこなし……じゃなかった。
感心している場合じゃなかった。起きて下さらないのなら……すいません……はぁ!!!!)
キーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!!!!SE 超音波
「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
ななななななな、な、なん、なにが起こった!!!??? ええええええ、ななななな
(おはようございます。ユーマさん。爽やかな朝ですね)
(……はぁはぁ、びっくりした……も、もしかして今の爆音は、エリュエちゃん?)
(はい、何度起こしても起きて下さらないので、少し大きい音を出してみたのですが……お気に召さなかったですか?)
(あんなの、誰もお気に召さないよ! 今度から絶対にやめてね!!)
(すいません……明日から違う方法を考えておきます)
(出来れば、その方法を試す前にぼくに教えてね。はぁ~って、あれ?
なんか、重要な夢を見てたような気がするんだけど……ええと、どんな夢だったかな……?)
(ユーマさんを見ていましたけど、かわいい寝顔でしたよ。夢を見ていたような気配なんて)
(もう、恥ずかしいから寝てる所の顔なんて見ないでよ……)
(そうでしたか。それなら今度から……)
バァン!SE 扉・突入
「お兄ちゃん、どうしたの!?」
「うおっ!? ああ、メイか。……いや、なんでもない。少し悪い夢を見ただけだから」
「そうなの……怖くなったら、いつでもわたしの部屋で寝ていいからね?」
「いやいや、兄としてそれをする訳にはいかないよ……てか、久々に1人で起きれたな」
「あ~ん! 夢のバカ~~! お兄ちゃんを起こしていいのは、わたしだけなのに~!」
「はいはい。メイも早く着替えろよ」
「は~~い。それじゃ、後でね~」BGM♪ 爽やかな朝
バタバタ、バタバタ……バシャ、バシャ……ふきふき……SE 足音・水音・布ずれ
「おはよう、ユウマ。2階で大声出してどうしたの?」
「いや、少し変な夢を見ちゃってさ、おはよう、お母さん。って、なんで玄関にいるの?」
「ユウちゃん~、それって~、どんな夢だったの~?」
「それが、ぼくの大声で忘れちゃってさ……あれ?」
「おはよ~、ユウちゃ~ん」
「おはよう、千冬姉。……えっ? 靴を履いて、もう学校に行っちゃうの?」
「うん。先生は、みんなより、ちょ~っと、早く学校に行かなくちゃいけないの~。
本当は、ユウちゃんと一緒にごはんを食べたり~、いっぱいお話したかったんだけどね~」
「そうなんだ、残念。それじゃ、明日から早く起きれるように頑張るよ」
じ~ん……!SE 感動の涙
「うう……朝の弱いユウちゃんが、そんな事を考えてくれるなんて……感激~!」
ぎゅうっ!!SE 背骨折り
「ううっ!? 苦しいけど、気持ちいい……………………ぐえっ…………」
「……んん~~! これで、HRまでのユウちゃん分が補給できたわ~。
それじゃ、改めて行ってきま~す♪ お母さん、お見送りありがとうございました~」
「はいよ。行ってらっしゃい…………んっ? なに、ここで寝てるの? ユウマ、起きなさい」
「ううう………………がくっ……」
画面演出 暗転