不自然な光と湯けむりがガードしているので安全です
なんという事だ! 今までの騒ぎを聞きつけた妹もお風呂に入ってきた!
春休みにせっかく、一生懸命、誠心誠意に説得し尽くして、
一緒にお風呂に入る事をお兄ちゃんは泣く泣く、メイはしぶしぶ諦めてくれたのに!
「えへへ~! やっぱり、お兄ちゃんがいないとお風呂は楽しくないもんね~!」
ああああ! 逆戻りになってしまう! また一から説得し直さないといけないの!?
「メイ! お兄ちゃんはもう上がるから! それじゃ、冬音姉と2人で楽しんで!」
「ええ~! そんな! お兄ちゃんのケチ! 冬姉ちゃんも何か言ってよ!」
「というか~、ユウちゃん、今、湯船から上がれるの~?」
「……………………」
ちゃぷん…………
(あれ? なんで上がらないんですか? ユーマさん?)
(……心頭滅却……無知蒙昧……臥薪嘗胆……曖昧模糊……警邏巡回……魑魅魍魎……)
(ねぇねぇ、少しはわたくしの質問にも、ちゃんと答えてくださいよ)
(ダメだ! それをしてしまうと、兄の威厳が今、ココで失われてしまうんだ!)
(でも、肝心の妹さんが、楽しくないようですけれど)
「ぶー! お兄ちゃん! 目をつぶってたら、全然、面白くないよ!」
「駄目なの! ぼくは、不用意なHシーンでは、
『目を開けぬ、見ぬ、覗かぬ!』
この鉄の掟に従って生きているんだから!」
「あらら~、でもそんな事してたら~、ここが、がら空きになっちゃうわよ~?」
こちょ、こちょ。
「ぶっ!? あひゃひゃひゃ! ちょ、ちょっと、冬音姉っ!?」
「ほらほら~、早く目を開けないと~、ここも甘いわよ~」
「わたしもわたしも! お兄ちゃん、ここがお留守だよ~」
「ちょ、ちょっと! 止めてよ! うひょひょひょひょ! や、やめて! らめ~!!」
ムニュ! プニッ!
「あんっ♪」「ひゃん!?」
………………今の感触は……?
(それは、妹さんと冬音さんの、)
(みなまで言わないで! これ以上は、のぼせる前に頭に血がのぼっちゃうから!)
「ユウちゃん、ちょっと見ない内に、こんなにえっちぃ子になっちゃったのね~?」
「お兄ちゃん! 妹にそんな事したら、メーッ、だよ! あ、でもちょっと位ならいいかも……もう少し触ってみる?」
(ふふふ、ユーマさんはみんなから好かれていますね?)
「もう限界だ! ここから出してよーーっ! 生き地獄だーー! 生殺しだーーー!!」
ガチャ…………またお風呂の扉が開いた。あれ? 誰か出たの……それとも……?
その疑問は、扉を開けた当人の声を聞く事によって解消された。
「なーんか楽しそうね。私も久しぶりに、母子で入ろうっかな~」
「でぇえええ!? そ、その声は、おおおお、お母さんんんん!!!??????」
「何よ、そんな驚いた声出しちゃって。2年前まで一緒に入ってたじゃない?」
「で、でで、ででも」
「ふーん。少し見ない内に元気に太く、たくましく……じゃなかった、大きくなって~」
「あら~? お母様、見ている場所が少し違うように見えるんですけれど~。
……でも確かに昔と違って、見違えるほどたくましくなっていますね~」
「うふふ……そうでしょ?」
(ちょ、ちょっと母さんたち、一体どこを見ているのさ!?)
(それはですね、ユーマさんの、)
(エリュエちゃんも毎回、律儀に答えようとしなくていいから!
言ったら目を隠している意味と、ぼくの理性と尊厳がなくなっちゃうから!)
「ねぇねぇ~。お母さんに冬姉ちゃん、なんの話をしているの~?」
なんの事かわかってなさそうな妹が、無邪気に2人に質問をする。
「それはね~、ゴニョゴニョ……」
な、何をメイに話しているんだ……メイも、ほえ~、とか言って……気になるじゃないか。
「って、はっ! 今だ! そ、それじゃ、ぼくはもう出るから!」
バチャッ!
「あん! 母さんが入ってすぐに出るなんて、そんな放蕩息子に育てた覚えはないよ!」
「は、離して! お母さん! もし本当に息子の事を思ってるんなら、今だけは、今だけは、ぼくを自由にしてよー!」
ばたばた!!
(なんか和気藹々としていて楽しそうですね)
(どこがだーーっ!? どこを見たらそんな風に見えるんだーーっ!?)
「わーい! わたしも~! お兄ちゃんと!」(ぷにゅ~ん♪)
「それじゃあ~、私は開いているここにね~」(もにゅ~ん♪)
「あらあら、まあ、ユウマったら恥ずかしがって」(モニュモニュ)
「そんな、ちょっと、冬音姉、お母さん、メイ、やめ、やめ……」
「うふふ~、そんな事言っても~。あらあら? おいたはダメよ~?」(たゆんたゆん)
「息子の成長を見るのも母の役目だから、こういうのは仕方がないわ」(むちりむちり)
「お兄ちゃんと久しぶりのお風呂だもん。もっと一緒に入りたいもん」(ペタリペタリ)
(うふふ……この世界の人達はこうやってお風呂に入るんですね)
(エリュエちゃん! 誤った知識を詰めないで! 誤解されるから! ……って、ああ!?)
「そんな……そこは!? ダ、ダメだよ! あっ、あっ、あっ……あーーーーーっ!!」
ワオーーーーーーーン……ワンワンワン!!