異世界の軌跡
「わかりましたよ、手伝います。でも、危ない真似はしないで下さいね?」
そうして助手として手伝う事となった。
助手ならぼくに被害が及ぶ事もないだろうし。
まぁ、斑鳩さんの人格をみても竹を割ったようなわかりやすい性格なので、無理やりイヤな事をしてくる事はない……と信じたい。
「そうか! ようやくわかってくれたか! ありがとう! ゆうま!」
斑鳩さんはいきなり目的達成! とばかりに抱きついてきた!
「うわっぷ! まだ何にもしてないですから! これで喜んでたら終わりませんよ!」
「……ああと、すまない。つい興奮してしまってな」
えへへ、失敗した……とつぶやく斑鳩さん。
うう、失敗のリアクションが可愛いぞ!
これなら何回でも失敗したくなっちゃうよ。
色んなバリエーションを見てみたいもん!
「気持ちはわからなくはないですけど……それで、どんな事をすればいいんですか?」
「ええと……目下、今の課題は……メラを唱えて敵を倒す事だ」
「ほうほう……メラをね……って、えっ?」
「えっ?」
「メラ?」
「そうだ。もしかして知っているのか? メラを?」
「知っているも何も……というか、まさか、まだ1番最初の課題とか……だったり?」
「……そうだ。1番最初の課題でつまずいている」
「いつからですか?」
「…………かれこれ半年ほど前、だな」
ヒューー…………
ぼくと斑鳩さんの間に冷たい風が通り過ぎていった。
「ええっと、それでは今日はこの位で……それではまた来週~」
「お、おい! 待て! 帰ろうとするな!」
「だって、メラレベルで挫折していたら、メラゾーマとかの魔法は一生使えませんよ!」
「だ、だが、これでも半年間は頑張っていたんだから!」
「一体、何してたんですか!? 半年間も!」
ぼくの言葉に声を詰まらせながらも、
「うう、それはだな……違う世界を回っていたんだ」
あ、この世界に半年いたわけじゃないんだ。
「この世界以外でも、魔法の修行をしていたんですか?」
「ああ、そうだ。まず最初に跳んだ世界は、確か……」
最初という事は、この少女は何度か、時ならぬ、別世界をかけているようだった。
「確か……そう。森やジャングルに覆われた世界だったな」
ふーん。まぁ、なんとなく想像出来る。
「それで、何人かと一緒になって巨大な敵と戦って過ごしていたな。
マンガ肉を焼いたり、お供のネコと様々な種類の任務をこなしていった感じだったな……ふふっ、懐かしい」
「………………」
「それで旅の途中で出会った、頭がねじの形をした変な連中や宇宙人っぽいマヨラー達と協力して、
一番強い敵を倒して……それから、やる事もなくなったのでその世界から次の世界に跳んだんだったな」
昔の武勇伝を思い出しながら、自分の冒険譚を話している斑鳩さん。
(壮絶な戦いを繰り広げていたんですね……わたくしには想像がつきません)
(うう。残念ながら、ぼくには想像がつくよ……)
(ユーマさん? どうして泣いているんですか?)
(いや、著作権的にギリギリレベルで、胃が痛くなってきたんだよ)
(はぁ……でも、それはユーマさんが気にしなくていい事ではないのですか?)
(まぁ、そうなんだけれど)
ぼくがいらない心配をしている間に斑鳩さんが、次の世界の事を思い出したようだ。
「次に訪れた世界は……ああ、魔法学園がある世界だったな」
「えっ! それはちょうどいいじゃないですか!」
今度は前の世界と違って、断然期待できそうな世界だ。
「それじゃ、魔法は……! あっ……」
そうだ、ここにいるという時点でムリだった、って言っているようなものなんだ。
ぼくの顔色を察してか、トーンが低くなりつつも、律儀に答えてくれる斑鳩さん。
「ああ、そう……察しの通り、無理だった」
「でも、それじゃ、魔法学園に通ってもダメだったら、魔法に関して全く知識のないぼくが立ち会ってもムリなんじゃ……」
「いや、それは問題ない。というか、その魔法学園は全く魔法を教えずに、クイズばかり出題してきたんだ」
「…………………………はい? クイズ?」
「そうだ。おかげで、昔のスポーツ選手やマニアックな地名など、どうでもいい知識は覚えられたんだが……
結局、賢者になっても、全国1位になっても、ただの1つも魔法が覚えられなかった。サギだとしか思えない」
「……………………」
「それに、上位になる頃にはいい加減、いかに早く問題を解くかの熾烈な競争にも飽きてしまってここも諦めたんだ。
それで、次の世界は……」
「も、もういいです! アブない橋を渡っていった、っていうのはわかりましたから!」
「むっ。そうか。ユーマがそう言うんならいいんだが……」
どうも、著作権的にどうか? という世界ばかりを渡り歩いている気がしてならない。
今ごろ担当の人とかが必死に頭を下げ回っているに違いない。苦労がしのばれます。
斑鳩さんはすごい事を成し遂げてはいたようだけれど、話を聞いている限りじゃ肝心の魔法関係は全くといっていいほど、鍛錬をしていなかったようだ。
「とどのつまり、斑鳩さんの話をまとめると……」
「まとめると……?」
「半年間、何もしていなかったという事でいいんですね?」
「そんな事! ……あるのかもしれない。最終クエストをクリアしたり、1位になったりしたが、今考えると魔法となんら関係なかったな……くっ、悩ましい!」
「はぁ……熱くなる性格なのは見ていたらわかりますけれど……それで、今はどこまで魔法を唱えられるようになったんですか?」
「そうだ! 今が大事なんだ! ふふふっ! 聞いて驚くなよ! ここの世界は平和だったから、修練がはかどったんだ! ほら、見ろ!」
そういって、斑鳩さんは目をつぶり、なにやら唱えると、
「メラッ!」
ボッ! ちゃんと手の平から火の玉が飛んだ!
「おおっ!? 予想に反して、ちゃんと使えている!?」
(すごいですね! 体から炎が出るなんて! 信じられません!
これが、メラというものなんですね……これは一体……マジックか何かでしょうか?)
(いや、だから魔法でしょ……って、まぁ、ぼくも原理はわからないけど)
エリュエちゃんにそんな突っ込みをしつつも、
「いやぁ、話を聞く限りじゃ、魔法が唱えられるなんて思ってませんでしたが……すごいじゃないですか! これであとは敵を倒すだけですよ!」
「そう、なんだが……」
また歯切れが悪くなる斑鳩さん。
何? 他にもあるの?
このお嬢さんは、どれだけ問題を抱えていらっしゃるんだ。
「他にも何か問題があるんですか?」
「ああ。この世界に来て魔法が使えるようになって、さっそく何度か挑戦しようとしたんだが、
やはり戦闘中に目をつむる、というのは戦士だった私には向いてなくてな……結局、今の所、この世界に現れた悪漢は全て体術で倒しているんだ。
……くっ! 普通に戦うのなら、小足で拳竜昇くらい余裕なのだが……」
情けない……と、ほぞを噛むような表情をする過去さん。
そういえば、さっきのゴーレムも魔法を使う素振りすらせずに、素手で倒していたな。
確かに、敵を目の前にして目をつむるのは自殺行為だ。
ゲームでも、魔法使いは基本的に後衛で、前衛の戦士とかに守られて戦っているから安心して魔法を唱えられるんだよね。
でも今、パーティーを組んでおらず、斑鳩さん1人しかいない。
それじゃ、前衛も後衛も関係がないもんな。
どうすればいいんだろう……?
……そうか! 簡単じゃないか! ぼくが前衛になって盾になればいいんだよ!
「斑鳩さん! 任せて下さい!」
「ん? 何がだ?」
「もし今度、敵が来たら全力で斑鳩さんを守ります! だから、安心して目をつむってバンバン魔法を使って下さい!」
はっきりと斑鳩さんの目を見て、ぼくはそう宣言する。
「そんな……悪い。私のわがままに、そこまで付き合わせるなんて……」
「いいえ! 全然悪くないです! これ位、へっちゃらだし、へのへのかっぱです!
斑鳩さんに助けてもらった恩をここで返さないと、男がすたるってもんですよ!」
「ゆうま……」
「斑鳩さん……」
「それじゃ……お前に守ってもらっても……いいのか?」
「ええ……ぼくを頼って下さい。いや、ぼくにまかせて!」
「!! その言葉、女勇者もよく言っていたな。ふふっ。あいつと似ている」
「そんな……ぼくなんかが勇者さんと似てるなんて……そんな、ありえないですよ」
「謙遜するな。自分の危険を省みずに、人を助ける所なんてのは、主人公の証だからな。
誇ってもいい事だ……だから、安心してお前に前を任せられる」
「わかりました。それじゃ、勇者さんの顔に泥を塗らないように精一杯頑張ります!」
ニコッ! ……キュン……
(!? なんだ、この胸を締め付ける痛みは! これは……もしかして、賢者が言っていた『恋の魔法』なのか!?
なんと言う事だ! 私は主の魔法にかかってしまった! 不甲斐ない。
あいつが言っていた通りなら、この状態異常は治せないはずだ。顔が火照って、ヤル気も半減すると言っていたな。
しかし治す必要はないとも言っていた……しばらく様子を見るだけでいいらしいのだが……くっ、あの時、詳しく聞いておけば良かった!)
「? どうしたんですか? 斑鳩さん?」
「ひゃっ!? い、いやなんでもない! 本当にいいのか? 後悔しても知らないぞ?」
「大丈夫! 斑鳩さんは魔法が使えるんですから、後はぼくが頑張ればいいだけです!」
「主……」
「斑鳩さん……」