意外な真相?
「いや、何。旅をするのは慣れているからな。野宿生活はお手の物だ」
誇らしげに胸を張る斑鳩さん。
なので、胸も強調される。健康的ないい体だなぁ……。
「ヒューヒュー、るーかお姉ちゃん、このお兄ちゃんと結婚するんだー」
「ねーねー、るー姉ちゃん、キスしてよー。キスー」
「ほらー。夫婦になるんだったら、チュー! チュー!」
ぼくが恍惚の表情を浮かべていると、扉の影でずっと覗いていた子供たちがやんややんやとぼくたちを冷やかしてきた。
そしてその中の1人、小学校高学年くらいの男の子が部屋に入ってくるなり、
「おめーなんかに、俺らのるーか姉ちゃんをやらないからな!」
バキッ!
いてぇ!? 思いっきり殴られたよ! 子供は手加減しないからなぁ。
ととと、この調子で殴られたらいけない。どうにかこうにかしないと! と考えていると、
「こら! ケン坊! 暴力はいけないって、いつも言ってるだろ!」
ごちん!
斑鳩さんがケン坊と呼ばれる男の子に、容赦なくげんこつをくらわしてくれた。
(暴力はいけない、と言っている人が暴力を振るっていますが……不思議ですね)
(いや、でもこれは教育だから仕方ない事で……)
鉄拳教育受けたケン坊君は、涙目になりながらもぼくに向かって、
「おいそこの! るーか姉ちゃんが欲しかったら、俺と決闘しろよな! 絶対だぞ!」と宣言してきた。
別にまだそんな事、思ってないのにさ。
「こら! ケン坊! いつになったら人をいじめる癖を治すんだ! お兄ちゃんだろ?」
「うう……でもるーか姉ちゃんがこいつと結婚したら、ここからいなくなるから……グズッ」
「大丈夫だ。結婚したとしても、いなくなるなんてないから。
ほらっ、男の子が泣くな! シャキッとする! そんなんじゃ、女の子にモテないぞ?」
「……うう……うん! 俺、泣かない!」
「ふふっ! それでこそ男の子だ!」
どうやら、みんな仲良くやっているようだ。
「ルーカさんは、みんなと打ち解けていますね。こういうの得意なんですか?」
「いや、得意というか、私も孤児院の生まれなのでな。小さい頃からこうやって暮らしてきたから自然と身についたんだ」
「あっ……すいません。余計な事を聞いちゃって」
「いい、気にするな」
そういってケン坊にしたみたいに、ぼくの頭もぐじぐじと乱暴に撫でてくれる。
……うん。なんだか、斑鳩さんがみんなに好かれる理由がわかる気がする。
「そうだ! ゆうまに頼みたい事があるんだ! 少し時間をくれないか?」
「ええ、いいですけど?」
「教子。もう少しだけ、こいつと話をしてもいいか?」
「はい。いいですよ。この子達の前でイチャイチャしなければ、ですけどね」
「もう! そういった事はしないから!」
そんなこんなで、ぼくたちは孤児院の裏にいる。
なんだか今日は暗い所に行く事が多いような……
手を引っ張って連れてきた斑鳩さんが、ぼくの方へと振り返る。
「斑鳩さん。それで、話というのはなんですか?」
「ああ……それなんだがな……」
なにやら言いにくそうに、もじもじとしている斑鳩さん。なんだか可愛らしい。
「その……」
「その?」
「あの……」
「あの?」
「………………ええい!」
ぱん! と手を合わせて、勢い良く頭を下げると、
「すまない! 私の魔法の練習に付き合ってもらえないか!」
斑鳩さんが重大な告白をするかのように声を振り絞ってこんな頼みごとをしてきた。
魔法……って、ほうきで空を飛んだり、指から火を出したりする魔法の事かな?
でも、なんでそんなに恥ずかしそうなんだろう?
「は、はぁ。よくわかりませんが……まぁいいですけど」
「ホントか!」
ぱぁ! と顔をほころばせる斑鳩さん。
しかし、またすぐに顔を沈ませて、
「ああと、その前に、ここで重大な秘密を、先に打ち明けなければいけないんだ」
と、深刻そうな顔をして話してきた。
「え……なんですか?」
何? もしかして、魔法少女、幽霊と続いて、また何かあるのかな!?
そこまで深刻そうにするって事は、例えば、斑鳩さんが生き別れの姉だったとか!?
それとも、右手の中に獣が寄生していて人間じゃないとか!?
それともそれとも、名前を書いたら死ぬというノートの保持者とか!?
どんな驚愕の事実を打ち明けられるのかと、息巻いて告白を待ち構える。
「実は……………………………………私は別の世界から、異世界から来た人間なんだ」
「……あっ、そうですか。わかりました」