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目覚めた先は……?

「……うー、ん…………」

 こめかみがずきずきと割れるようなくらい痛い……何が起こっていたんだっけ?

 意識が戻ったけれど、半分眠っている感じで頭がはっきりしない。

 ……あれ? すごい事があったような気もするんだけど……思い出せない。ええと。

 記憶を辿って何があったのか思い出そうとした時、誰かから優しく頭を撫でられた。


 ああ、やさしい撫で方だ。落ち着くなぁ……


 そういえば、後頭部のやわらかいクッションのようなものが敷かれているのに気がついた。

 これは女性特有のやわらかいひざの感触だ。

 じゃあ、今ぼくはひざまくらをされていて、頭を撫でられているのかぁ……

 こんな事をしてくれるのは……母さんしかいない。

 そういえば、小さい頃、よく頭を撫でられながらひざまくらをしてもらったな。

「……ママ……?」

 夢うつつのぼくは、思わず小さい頃の呼び名で母さんを呼んでいた。

「気がついたみたいね? 大丈夫?」

 優しい声がぼくを安心させる。うつらうつらしたままママに向かって喋る。

「ママ、ぼく、怖い夢を見たんだ……モンスターに襲われる夢に」

「まぁ、それは大変だったのね。でも、安心して。何があっても守ってあげるから……ここの孤児院は安全だからな」

 そう、ママがいれば安全…………って、


「ええっ!? 孤児院!?」


 絶叫と共に、バッ、と目を開け辺りを見回す。

 目の前には斑鳩さんの顔が……ああ! やはり、あれは夢じゃなかったんだ!


「あいてて……」

「あ、ほら。そんな急に頭を起こしたらダメだ。なにせ気絶していたのだからな」

 そういって無理やり体を横に倒される。そして、またひざまくらの態勢に戻る。

「わざわざありがとう。私をかばってくれて……」

 頭と頬を撫でながら、優しい顔をしている斑鳩さんが感謝の言葉を述べてくれた。

「いえ、咄嗟の事だったんで、別に」

「本当は私が気付いてないといけないのに……くっ、ケガをさせるなんて」

「でも、まぁ結局は気絶したんだから、ぼくがかばった意味はないような気も……」

「そんな事はない。私は今まで常に先頭に立って戦っていたから、守ってもらうなどという事はなくてな……

 だから、助けてくれた事自体がうれしいんだ。足手まといとか、そんな事を言っていたのに……すまない」

「そんな……謝らないで下さい。結局、ここまで運んでもらったから、足手まといなのは変わりありませんし」


「いいや。人を助けようとするのは、とても難しい事なんだ。だから私も嬉しくて」


「斑鳩さん……」


「ゆうま……って、ぷっ、あはははは。そんな見つめられると照れてしまうじゃないか!」


「そんな! 笑うなんて非道いですよ!」


「ははは、ごめんな……でも……ありがとう。ゆうまの気持ちが嬉しかったのは本当だ」


「いえいえ、どういたしまして。斑鳩さん」


「ゆうま……」


「斑鳩さん……」









「……ゴホン! お2人ともイチャイチャしている中、すいませんが……」


「「!!?」」


 いきなり声をかけられて驚き、ばっ、と離れるぼくと斑鳩さん。

 ぼくらのすぐ横には、ぼくと年が同じくらいの女の子がいた。

 全く気づかなかった。それだけ斑鳩さんを見つめていたという事か。


「ど、どうした? 今日香? な、なにか用か?」

「あー、その前に、るーかお姉ちゃん。ベタベタするのはいいんだけれどもう少し人目のつかない所でお願いね。ほらっ、あの子たちもいるんだから」

 と、今日香、という女の子が斑鳩さんに説教をする。

 彼女が指をさした扉の影から、10数人くらいの小さな子供たちがこっちを、ぼくたちの方をニヤニヤと覗き込んでいた。

「い、い、いや! これは別にそういった事ではなくてな……つまり、そのぅ……」

 斑鳩さんが言い訳してるが、そんな事はお構いなしに女の子がぼくに話しかけてきた。

「あなたがゆうまさんですね? パトロールをしていた、るーかお姉ちゃんを悪漢から助けていただいて、どうもありがとうございます」

 ペコリと行儀よく頭を下げた女の子。

「ああ、いや。ぼくは別に庇っただけで……」

「それでも勇気のいる事じゃないですか~。普通の人は出来ませんよ」

「いやぁ、まぁ……」

「まっ、るーかお姉ちゃんみたいに綺麗な女性の前でいい所を見せよう、って気持ちもわからなくはないですけどね! やるね、盛るね、ニクいね! このっ! このっ!」

「い、いや、そんな事ないんだけどね……」

 照れているぼくをいやらしく追及していた子が、あっ! と小さく叫び、

「自己紹介がまだでしたね。私はここの孤児院のシスターをやっている今日香と言います」

 そう言って十字を切り、手を組んでお祈りをしてくれた。

「ああ、ユウマです。今日香ちゃんだね? よろしく」

「はい。こちらこそよろしくです。神のご加護があらん事を……ところで、何か困っている事はありませんか?」

「いや、特に今はないんですけど……あ、でもここは孤児院なんですか?」

「なんだ。せっかくセーブしてくれると思ったのに……じゃなくて、そうです! ここは困っている人や、みよりのない子供を育てているんですよ!」

「ああ、私もこの今日香に助けてもらった1人なんだ」

「へぇー。斑鳩さんもですか」

「ああ、私は2ヶ月前くらいに橋の下で住んでいた所を拾ってもらった」

「は、橋の下ですか……」

「そう、金星人や、かっぱたちと暮らしていたんだが、シスターからボランティアの仕事をもらってな。それで今日香の手伝いをしていたんだが、

『ずっと、ここにいて欲しい!』と子供たちに頼み込まれて……結局、住み込みで働くことにして、今に至るわけだ」


「……結構、アグレッシブな波乱万丈な人生を送っていますね……」

 色々突っ込みどころがあったけど、ぼくはその言葉しか言えなかった。


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