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勝利?

 クルクルクル……シュタッ!

 芸術点で満点が取れそうな位の綺麗な着地。

 逆行でシルエットしか見えない演出が、またニクい。


 ガシッ!


 未だに逆光で顔が見えない人物はぼくを踏み潰そうとしたゴーレムの足を片手で……なにぃ、受け止めたぁ!? そんな芸当可能なの!?

「大丈夫か? 私が来たからには、もう安心だ」

 そんな頼もしい言葉をぼくに言ってくれた人物は……なんと、花も恥らう、うら若き女性だったのだ! しかも、モデルみたいに格好良くて美しい!

「ふん!」

 ドーーーンッ!


 シャギーがかった黒髪をなびかせて、そんな細い体のどこに力があるのだろうか、ゴーレムを純粋な力だけで向かいの壁へと吹き飛ばした。

 そして、ぼくを背中で守りつつも戦闘体勢を整える。

 か、かっこいい! 痺れるし、憧れる! ぼくが女だったら惚れちゃうよ!

(とても勇ましい方ですね。わたくしの部下と……ああ何か思い出せそうな……)

 エリュエちゃんが何やら頭を悩ませていたけれど、今はこの女性の動向に目が行ってしまう。

「さあ、どうした! どこからでも、かかってこい!」

「ぴぎーーーっ!?」

 その女性の威圧に圧倒されたのか、ようやく今ここへたどり着いたスライムは、またすぐに一目散に逃げ出してどこかへ行ってしまった。

 やはり、自分と圧倒的強さを見せ付けられると、モンスターでも怖気づくものなのだろうか。

 ……まぁ、スライムはぼくでも倒せそうだけど。


 となると、残すは、倒れていた体を立て直している怒り心頭のゴーレムだけである。


「オラオラッ! どうした、どうした? こっち、こっち! かかってらしゃ~い!」

 女性はゴーレムを前にしても全く恐れておらず、挑発を繰り返している。

 なんというか取るに足らない相手だという風な態度だ。

 すでに挑発によって怒りゲージがMaxまでたまった状態のゴーレムが、

 さっきからずっと挑発を繰り返して無防備になっている女性に向けて、会心の一撃を放った!


 グォオオオオォォ!!


 こ、これは……避けられないんじゃないか!? 果たして彼女はガッツが足りているんだろうか!?


 だが、既に戦闘態勢に戻っていた女性はゴーレムの超必殺を待っていたかのように、ブロッキングで相手の攻撃をいなし、

「もらったぁ! 発散っ!」

 と、彼女はクロスカウンター気味に、深く腰を落とし、まっすぐに正拳突きを放った。


 ばこーーん!


「ごーれむー!」


 なんと! ゴーレムは一突きで粉々に砕け散った!

 てか、ゴーレムはそんな風に悲鳴を上げないような気もするけど……おおっと、そんな事はどうでもいいや。


 やられたまものは消滅して、代わりに宝石や金貨となった。そういうシステムなのね。


 女性は、えいえいおー! みたいなポーズを取りながら勝利の余韻に浸っているのだけれども……それは違うゲームなんじゃない?

 あ、ぼくにも経験値がもらえた。じゃあ、いっか。



 そして、ファンファーレも鳴り止み、倒れていたぼくに手を差し伸べてくれた。

「やぁ、大丈夫かい? 危なかったな。怪我はしていないようだったけれど」

「あ……ええ、大丈夫です。ありがとうございます」

 女性の手に引かれて立ち上がってみると……うわ、彼女の方が背が高い。ちょっと凹む。

「パトロール中で良かったよ……しかし、なぜこの世界に私たちのモンスターが……」

「えっ? 私たちの?」

「あ、いや、なんでもない……おおっと、自己紹介がまだだったな。私は斑鳩いかるがだ」

「斑鳩さんですか。ぼくはユウマです。危ない所、助けてくださってありがとうございました」

「いやいや、それがパトロールの役目だからな。ま、今までに、このせか……この地区で、ゴーレムを相手する事はなかったんだが……とにかく、怪我してなくて何よりだ」

「でも、よくゴーレムなんて倒せましたね」

「いや、ゴーレムなんて指先1つでも充分だ。なんたって、全てのバトルをマスターしているからな」

「はぁ……」

「だが、おかしいな。これまでこういったモンスターは出てこなかったのだが……」

 斑鳩さんが首をかしげながら、なにやらブツブツと呟いている。

「……何かが起こる前ぶれか……ああと、ゆうま君。君はもう帰った方がいい。ここは危険だ」

「そうですけど……でも、やっぱり女性を、斑鳩さんを置いて逃げるなんて出来ません。ぼくも何か手伝わせて下さい」

「そうは言うが、さっき君は腰を抜かしていただろう? そうなると、君を毎回助けないといけなくなる」

「でも!」

「……言いたくはないが、足手まといになるんだ。助けてくれる気持ちはありがたいが、君はもうお家に帰りなさい」

「そんな……助けてもらったお礼もまだしてないし」

「そんなのはどうでもいい。礼を言われる為に助けている訳じゃないんだからな」

「でも……」

 くっ。続く言葉が見つからない。力のないのが悔しい。

 守られているだけの人生なんて男の子として情けないよ!

(あの……ユーマさん。お2人で話し込んでいる所すいませんが、)

 ぼくが失意のうちに打ちひしがれていると、背後からぼくの肩を叩く素振りをしてくる人物が。

(……ん? エリュエちゃん、どうしたの?)

(はい。そこにまだ、モンスターらしき人物がいらっしゃるのですけど……)

 そう言ってエリュエちゃんが指をさす。

 んん? 何を言っているんだ? もうモンスターはいないよ?

 そんな所には、なんにも見あたらないけど……あっ!?

 姿かたちはわからないが、なにかユラユラと蜃気楼のように揺れている物体が近づいてきている!

「……? どうした? ゆうま君? おとなしく帰る気になったのか?」

 斑鳩さんは気付いていない! モンスターが斑鳩さんの背中に向けて手を振り上げた!

「あぶないっ!」

 おもわず斑鳩さんに体当たりをしてしまった!

「なっ!? いきなり、何をする!? というか、どこに顔をうずめて!? きゃ!?」

 斑鳩さんがなにやら文句を言おうとしたが、

 ザシュッ!!

「ぐはっ!!」

 その前に、背中へとても強い衝撃を受けショックで意識が遠くなり、斑鳩さんの言う事を最後まで聞く事が出来なかった。

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