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モンスターがあらわれた!

 ぼくは1人寂しく残ったアイスを食べ終え、帰途へとつく。

(うう、あの食べ物はとてもおいしそうだったのですが……)

 実体がないので、アイスを食べれずに指をくわえていて、すねているエリュエちゃん。

 食べている間、ずっと恨めしそうにしていて、申し訳なかったのだけれど、どうしたって食べさせる事は出来ないのでしょうがない。

(ごめんよ、エリュエちゃん……エリュエちゃんの体が戻ったら、アイスをご馳走するからね)

(本当ですか? うわーい! やったーです)

 空中でピョンピョンと跳ねて喜ぶエリュエちゃん。それ、一体どうやってるのかな?

(そんな喜ばなくてもいいのに。エリュエちゃんには色々お世話になってるし、ホント、これ位は全然いいからね。なんといっても命の恩人だし)

(そういった事をしているつもりはないのですが……あ、でも、わたくしもさっきみたいに、ユーマさんとアイスという食べ物を一緒に食べたいです)

(うん。だからおごるって、)

(いえ! 一緒にああして仲良く食べたいのです! わたくし、あんな風に人と食べた事がないのです。見ていてすごくうらやましかったです……)

(そんな悲しい顔をしないで。エリュエちゃんがちゃんと元に戻ることが出来たら、その時はまたあそこで一緒に食べてあげるからさ! ほら、約束!)

(ホントにですか? ありがとうございます! ……はて? どうしたのですか?)

 小指を立てているぼくを不思議そうに見てくるエリュエちゃん。あ、そうか。知らないよね。

(これはね、ぼくらの世界では約束をする時に、お互いの指を絡めて誓うんだよ)

(そうなのですか……興味深いです。それなら早速、その儀式をしましょうか)

 ぼくとエリュエちゃんは触れ合う事は出来ないけれど、お互いの小指を絡ませあう。

(ユーマさん。なんだか恥ずかしいです……けれど、暖かい気持ちにもなれます)

(そうなんだ。よかった。じゃあ、約束するよ! ぼくの言葉を続けて言ってね)


((指きりげんまん、ウソついたらハリセンボン、飲ーます! ゆびきった!))


 小さい頃によくやった、おなじみのゆびきりをしたのだけれども、

(拳万? 針を千本飲ませる!? 指を切断する!? あ、あなたたちの星はずいぶんと残酷な事をなさるのですね!

 こんな誓いを立ててしまったら、何が何でも約束を果たさなければいけません……ああ! 恐ろしい!)

(えええええ!? い、いや! そんな事ないよ! ただの言葉のあやだからさ! ホントにするわけじゃないから! そんな深く考えなくてもいいよ!)

 確かに額面どおりに受け取ったら、そんな怖い事になるな……恐ろしや、昔の人達。


(そ、そうでしたか……でも、約束を果たそうとしてくれる気持ちが伝わりました)

(そう。じゃあ、早く元の体を戻さないとね)

(はい。そうですね~)

 実体はないけれど、和気藹々とエリュエちゃんと仲良く(テレパシーで)しゃべる。

 が、その和気藹々とした雰囲気は、次の曲がり角を曲がった瞬間に消えてしまった。

 なぜならエンカウント音と共に見た事もない、いや、見た事もないというと語弊があるけれど、

 仮想空間、いや、仮想空間というのもおかしいな、空想世界あたりかな?

 その空想世界なら見た事はあるけれど、こちらの実世界というか実際の世界にはあまりにおかしい物体がいたからだ。





 まものたのむれがあらわれた!


「ぴぎーーっ!」「ウガーーッ!!」


 なんと、そこには、スライムとゴーレムの姿が!!









「………………えっ?」


 なんかおかしくない? 組み合わせ的に。

 だってスライムは最初の村近辺に出るし、ゴーレムは結構ストーリーが進んだ中盤あたりとか、

 千回遊べるダンジョンだったら地下18階クラスだよね? しかも見た目のバランス的にも肉まんくらいの大きさと、3mくらいの大きさだよ?

 つーか、ゴーレムがいたら、ぶっちゃけスライムいらないよね!? それ以前にこんな町で見かける事ないよね!?

 というか町の中はモンスターが出ないって暗黙の了解があったんじゃないの!? だから、これもホログラムとか夢でしょ!?

 最新技術で驚かせる新手の映画宣伝とか? 頼むよ! 早くネタばらしをしてよ! 夢なら覚めてよ!


 そんな風に、頭は現実逃避をしているけれど、向こうにいる架空の生き物達は、

 ちゃんと現実に存在していて、1歩1歩ぼくらの方に向かってきていた。

 あわわわ、どうすればいいんだ!? はがねのつるぎはおろか、ひのきのぼうも持ってないよ! 目を閉じて死んだふりとかすればいいの!?

(ユーマさん。戦わないといけませんよ、現実と)

(……はっ、メダパニってた! 危ない所だったよ……)

 エリュエちゃんのひと言で、少しは冷静になる……けれど、それでもどうすればいいのかわからない。

 だって、どう考えたって勝てる見込みが1%もないからだ。

 漫画では成功する可能性が1%以下でも必ず成功するのだけれど、現実的に考えると無謀極まりない。


(これはやっぱり逃げるべきだよね? だって無理だよね?)

 エリュエちゃんに意見を求めるけれど、

(ユーマさんが何をそこまで慌てているのかわかりませんが……とりあえず、未知の生物と接触した場合は、平和的に接触をせよ、とわたくし達の星では習いましたよ?)

 とエリュエちゃんが正論を述べる。


 確かに正論だけれども、そんな悠長な事をしてる内に、ステータスバーが赤くなるよ。

 ……って、ああ、そうか。エリュエちゃんは、あのゲームを知らないのか。

(一応、ぼくはこの未知の生物を見た事あるんだ。いや、実際に接した事はないし、

 実世界で遭遇した時の対処法なんて知らないし、ゲームでも倒す以外見た事はないから、

 わからないけども、つまり何が言いたいかというと、話が通じるような気がしないんだよ)

 そうエリュエちゃんに言ってみるものの、

(でも、何事も話し合う事が先決だと思います。対話をしない内に攻撃をする、というのは、わたくし達の間ではもっとも恥ずべき行為だと教えられています)

 自信満々にそう言い切るエリュエちゃん。


 さっきから言っている事はとても正しいのだけれども……でも今は命がかかっているんだから、そうも言ってられないよ。

(でもまずは、はじめの一歩からですよ! ふぁいと、だよ!)

 うう、やってみるしかないか。山みたいな大きなゴーレムに向かって愛想笑いをする。

「あ、あの……ゴーレムさん、ぼくと仲良く踊りません、かぁ!?」


 ぶん!!


「ひぇえ!!?」

 話してる最中に、いきなり先制攻撃を仕掛けられてきた! とっさに頭を下げる!

 ミス! ユーマはゴーレムの攻撃をかわした!

 ガツンッ!! がしゃあっ……

 ゴーレムの大きな腕は、さっきまでぼくの頭があった壁を壊していた。 

 とっさに避ける事が出来て助かったけれど、もしあのままだったらと思うと……死!?

(むっ。失礼な人ですね。この方は、人の話は聞くものと習わなかったのでしょうか?)

(いやいや! そんなのん気な事言ってないで! もう少し反応が遅れたらぼく、亡き者にされてたから!

「何もしゃべらない ただの屍のようだ」になっちゃうから!)

(むぅー、確かにそうでしたね。話し合いで解決がつかないとなると……何か友好の証のようなものでも、いや、遺憾の意を表明しましょうか?)

(この期に及んで、まだそう言った段階の話なのーーー!?)





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