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しゅじんこうたち は にげだした!

 ジリリリリリ!!

『Caution,Caution!』

 ラスボスを倒していないのに、アクションゲームの最後みたいに自爆装置が発動してしまった!

 なんてこったい!


「へへ! なーにが、『まゆた~ん』だよ! おめーら、気持ち悪いっつーの!」

 正義の味方であるはずの人間が自分の組織をぶっ壊すなんてそんなバカな事があるはずない。

「いや、そんな事を言っている場合じゃないですよ! 早く逃げましょうよ!」

『Caution! あと、3分位でこの施設は爆破します。全員ただちに避難してください』

「ええ!? さ、3分!? いくらなんでも早すぎない!? 始めの頃に出会ったトイレに行っている人は大丈夫なの!? もし大なら、間に合わないんじゃ!?」

「ほら! バカな事言ってないで、あたしたちも早くズラかるぞ!」

「ズラかるって言葉って、悪者のセリフじゃないですかー!? もうイヤだー! お家に帰りたいー!」

「幼児退行するんじゃねー!」

 バキッ!

「いたぁ!? ……はっ! 何があったんですか!?」

「とにかく逃げるんだよ!」

 真由さんは、うろたえているぼくの手を引っ張って、大急ぎで来た道を引き返す。

 しかし、廊下にはさっきの研究員の人も含めて、山のような人だかりが出来ていて、退路までの道を隙間なく埋めていた。

 混ざってしまうと一発でバレてしまう。

 せめて、研究員の服でもあれば……いや、ダメだ。

 皆さん、いかにもな科学者の人ばかりだから、真由さんみたいな小さな女の子では変装の意味がない。隠れられるようなダンボールもないし。

 捕まったら、爆破に巻き込まれはしなくなるけど、違う形でゲームオーバーになりそうだ。しかも、ぼくだけが。

 万事休すか!? だけれども、他に方法なんて……

「おい! ここにある研究所の地図を見たら、奥の方からも逃げられるみたいだぞ!」

 ホントだ! バツ印があるけれども、もう1つの脱出ルートが書かれていた。

 ……ん? よく見ると……ドクロマーク?

「いやいや! 完全に危ない橋じゃないですか! 罠に決まってますよ! しかも行った事のない道ですし、どんな所かもわからないから、二重の意味で危険じゃないですか!」

「大丈夫だから……こういった時は、あたしたちの日頃の行いを信じればいーだろ?」

「えええっ!? 格好つけて言ってますけど、真由さん、自分の行いがいいと思ってるんですか!? さっきの行動だけで、充分、天罰が下りそうなんですけども!?」

「知らん! あたしは過去を省みないタイプだから!」

「もう、言っている事がめちゃくちゃですよ~!」

 なんとも行き当たりばったりの作戦だったのだけれども、それにすがるしかない。

 2人して、こっそりと部屋を飛び出る。

 既に全員避難し終えたのか、見知らぬ初めて通る廊下には人っ子一人、誰もいなかった。

 ふぅ。こんな調子で脱出出来ればいいんだけど……。




 心配していたけれど、案外すんなりとスムーズに目的の場所まで向かう事が出来た。

 ここまでは日頃の行いのお陰なのかな?

 それともぼくがテンションを無理やりあげているからなのかな?


 そんな感じで真由さんとぼくとエリュエちゃんの逃走劇は続いていたのだったけれども……

 やはりといっていいのか、最後の最後でまたひと悶着が起こってしまった。

 ぼくと真由さんとエリュエちゃんの3人がようやくドクロマークがあった脱出口まで辿りついた時、

 ウィーン、カリカリという音がし、それと共に下のほうに字幕が出てきた。

 心なしか、体や表情が滑らかに動くようになったような気がするけど……どういう事だろう?

 しかし、ぼく達はそんな事よりも重大な生命に関わる危機に直面してしまった。


ユウマ「ああ! 出口が封鎖されている! これじゃ、逃げられない!?」

エリュエ(ドクロマークはこういった意味だったんですね)

ユウマ「やっぱり止めておけばよかったんだ! 今からでも引き返せば、」

『あと1分位で、爆発します。奥の方に行った人、ご愁傷様です』

ユウマ「ご愁傷様って言われた!? もう間に合わないんだ! 臨終しちゃう!」

真由「焦るな! まだどこかに助かる方法はあるはずだ!」

ユウマ「でも、どうすればいいんですか~? ああ~、絶対絶命のピンチだ~」

エリュエ(ユウマさん! この奥に秘密の道がありそうです!)

ユウマ(あ! ホントだ! ここだけ、なぜか壁の色が違うぞ! えーい!)

  ドコン! ガラガラ……

ユウマ「ぬおっ! いかにもな、秘密の階段が出てきたぞ~!」

真由「どこに行けるかわからねーけど、とにかく行ってみるしかねーな!」

  たったったったっ……

ユウマ「……うわー! とても町の地下にあるとは思えない、大きな空洞が!」

真由「ほら! もたもたしてると、爆発に巻き込まれるぞ! 早く走れ!」

  グラグラグラ……

ユウマ「ある地点を越えたら、爆発する前なのか、地震みたいに揺れ始めたぞ~!」

エリュエ(ちょうど、脱出出来そうなポイントを通過したからですかね)

ユウマ(スーパーマリオの中間地点みたいなものかな? 再スタートはここからとか)

エリュエ(それは、よくわかりませんが……)

真由「おい! こんな所に脱出用のボートがあるぞ! しかも、まだ使えそうだ!」

ユウマ「わぁ~、ガソリンも入ってるし、この様子じゃ、すぐに出発出来そうだな~」

エリュエ(なんだか、えらく都合がいいですね。ここは封鎖されていたはずですのに)

ユウマ(確かにありえないよね……なんで1つだけあるかとか、ここの管理は、とか)

真由「ユウマ! ぶつぶつと一人言を言ってねーで、早く脱出すんぞ!」

ユウマ「このボートで、レースゲームみたいに地下の下水道を走ればいいんですね?」

真由「ああ! そうだ! 突っ切って行くぞ!」

  ブルルン!! 

真由「しっかり掴まっておけよ!」

ユウマ「はい!」

  ブオオオオオオンッ!!!!

真由「ひゃっほーーーっ! ヒィアウィ、ゴーーーーッ!」

ユウマ「ロケットダッシュ!? それに、とうふ屋も驚きのハンドル手さばきだ!」

真由「限界まで、突っ走るぜっ!!」

ユウマ「お願いですから、限界は超えないで下さいねーー!」

  ゴゴゴゴゴ……!!

エリュエ(あっ! ユウマさん! 右の大きな岩壁が崩れそうです!)

ユウマ(ホントだ!? 今まで走ってた時は崩れる気配もなかったのに!? 急に!)

ユウマ「真由さん! 岩が落ちてきます! 左に切って下さい!」

真由「合点!」

  Lボタン! ぐいんっ!

エリュエ(次は左……そして右、わわわっ、両側から落ちてきてます!)

ユウマ「ひえぇ! そんなの説明出来ないよ! 真由さん、とにかく避けて!!」

真由「わかった! いっけーー! マグナーーームッ!!」

  LR同時押し! ジャンプ!

  ガラガラッ! ドッシャーーンッ!

真由「ふぅ……あぶねぇ。007も真っ青な危機一発だったぜ!」

ユウマ「す、すごいです! さすが、真由さん! よっ、日本一!」

真由「いつも峠をチャリで攻めているからな……へへっ、燃えたろ?」

ユウマ「はい! ……あ! 今度は左右に道が分かれてる!? どうしよう!」

エリュエ(あそこの看板に何か書かれていますよ)

ユウマ「ん? 何々? うそなら左、ほんとなら右?」

『1問目 ピーマンは とうがらしのなかまである』

真由「みぎだ!」

  ぐいん!

『にほんにくる たいふうのうずは ひだりまきである』

真由「みぎ!」

『カンガルーはおよげない』

真由「ひだり!」

『ほっきょく より なん……』

真由「みぎ! 楽勝!」

ユウマ「おお! すごい! 全問正解です! 真由さん物知りですね!? ……ん?」

『きりこは なっとうが たべられない』

ユウマ「なんなのこの問題!? ていうか、きりこって誰ーーっ!?」

真由「ファミコンのゲームでやった事がある! 覚えてる! だから、ひだりだ!」

  Lボタン! ぐいんっ!

『ぜんもんせいかいだ! おめでとう よくやった』

真由「やったぜ!」

エリュエ(見事、脱出出来ましたね!)

ユウマ(なんか、爆破から逃げてる前提で話が進んでいるのが、疑問なんだけど……)

エリュエ(とにかく助かったからいいじゃないですか!)

ユウマ(まぁ、そうだけどさ……)


 そして、なおも落ちてくる岩々を一行を乗せたボートは華麗に避け続け、ようやく洞窟を抜けた。

 やった! 1コインクリア達成だ! ボーナス画像は……ないよね。現実だし。

 そんな落胆をしながらも、安全な地点まで辿りついた瞬間、


 どっかーーーん! ゴゴゴゴゴゴ……!!


 派手な4ビット音の爆発音と共に、悪魔城のように、遠くにある施設が崩れ始めた。






 かずおおくの ぎせいをはらい、


 かくして、まほうしょうじょのそうぜつな


 たたかいは、まくをとじた






 ……なんだか、このままスタッフロールが流れて終わりそうな雰囲気だ。

 ま、仮にこれでエンディングを迎えたとしても、現実という物語は、その後も話が進んでいくんだけれどもね。

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