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偽者魔王がやってきた

 


 水色月3日


 こうして魔王様は汗水たらして稼いだお金を村長に返して魔王城に帰りました。

 めでたしめでたし

 …となりたかったんだがのう。

 世の中、甘くはなかったのだよ。


「魔王様、サラーサの村に魔王が現れました」

 使い魔のオードリィ(人間界ではニワトリに変身している)が変な情報を告げたことから始まった。


「へ?ワシは、ここの村にいるのに、サラーサの町に現れた?

 ワシは双子だったかのかね」

 『何年魔王やってるんですかっ』とオードリィにつつかれてしまったよ…

「偽物に決まっているじゃないですか」

「ほう、そりゃ大変だのう」

「何、呑気にお茶をすすっているんですか。さっさと支度して行きますよ」

「どこに?」

「サラーサ町に決まっているんざゃないですか。

 偽物魔王が我が物顔で占領するなんて、魔界の面目丸つぶれです」

「えー。今日は村人Bさんのお庭でティータイムを楽しむ約束をしてた…」

 言い終えないうちに、使い魔オードリィ…様が殺意の眼差しとオーラを放ってきたので、魔王は町へ向かう事になった…とほほ。


 と思ったら天は魔王に味方してくれたのだよ…魔王に天はないか…


 支度をすませて外へ出たら、お隣のヴィスナー君が居候の妖精さんと出てきた所だった。しかも旅支度を整えて。

 聞くところによると、ヴィスナーもサラーサ町に向かうとのこと。

 もちろん一緒に向かうことにしたよ。

 オードリィと2人旅って心細かったから助かったよ。


 いや、オードリィの凶暴さに怯えているわけじゃあないよ…






 水色月4日

 

 勇者(候補)ヴィスナー

 妖精ドリィ

 魔王

 魔王の使い魔オードリィ


 …という一つのパーティができあがり、我々は町に向かったのだよ。


 さて、サラーサ町は遠くて徒歩は困難だから乗り合い馬車を使うことにした。馬車代は返済用にとっておいたお金を使用…完納が遠のいてしまったわい。


 乗り合い馬車があるのは隣町に行くしかなく、ここはテクテク歩いていくことになった。


「やはり偽物なんですね」

 イケメンで勇者候補で、魔王の親友(魔王が勝手につけた)ヴィスナーは、ほっとしてくれた。

「実はドリイが妖精のネットワークで魔王が町に現れたから、ただちに勇者候補と共に向かえと言われてね」

 ふむ、光の属性さん所も大慌てらしい。こりゃ、大変なことになりそうな予感…


 大変といえば、もう一つ…


 オードリィと妖精さんの言い争いが耐えません…

 やっぱり、光と闇の属性だから相性が悪いらしい。

 オードリィの機嫌が悪くなると…魔王、超こわいんですけど…







 水色月9日

 とうとう着いたよ…隣町に

 いやぁ~辛かったよ…オードリィとドリィの激しいバトルが…移動中ずーっとだったんだもん…ワシもヴィスナーも疲れちゃったよ。

 口喧嘩に始まって、飛行バトルに隣町に着いたら着いた出激辛の早食い大会…喧嘩というより競争に変わって……しまいには意気投合してね…

 仲良くなっちゃったんだよ…ドリィの小さな手とオードリィの羽で握手して友達宣言しちゃったよ…王びっくり。


 っていうか…いいのかな?光属性の妖精と魔王の使い魔が……

 ま、ワシはOKだよ。

 仲良ければ、争いなんてないからのう。



 ……あ、ドリィってワシらの正体って知っているのかの?



 水色月12日

 隣町から乗り合い馬車に乗って、途中何度か乗り換えること3日……ずーっと座りっぱなしで体が痛いわい……魔界にいた頃は良かったのう。部下のドラゴンに乗せてもらったから、遠くの町も10分ぐらいでいけたし…何より魔王だから代金かからなかったし…


 何はともあれ、とうとう着いたよ。目的の…サラーサ町に

 偽魔王に占領された…サラーサ町は…

「あれ?」

 いたって普通の大きくて平和な町だった。

 ただ、昼間だっていうのに門はしっかり閉まっていて人の出入りは制限していたよ。

 ちなみにどの町、ワシらが住む村でもモンスターが勝手に入ってこないように丈夫な囲いと門があって夜はきっちりとしめてあるのだよ。(魔王のちょこっと知識)


「あのぅ…ここは、サラーサの町ですよね」

 ヴィスナーが門番に聞いてみると少し肌が白く金色の髪をした門番さんは営業スマイルで答えてくれた。

「はい、水の庭園と魔王に占領されたサラーサ町でございます。勇者っち候補の御一行様ですね。どうぞ中にお入りください」

 門番はワシらを入れると再び門をがしゃりと閉じた。

「………」

 ワシらは互いに見合わせるしかなかった。


 水の庭園か、後で行ってみようっと。










 今回は今回は魔王ではなく、天界の偉い男の日記


 水色月12日


 全ては計画通りだった。

 私が考案した『偽魔王で本物と勇者っち候補を鉢合わせにして退治しよう作戦』

 その名の通り、サラーサの町を借りて(もちろん魔王が現れたら、うちの部下たちが住民を安全なところに非難させる)魔王が現れたと偽の情報を出して、のこのこ現れた魔王を倒してしまおうというナイスなアイデアだった。

 ついでに、妖精ネットワークにも同じ情報を流して勇者っち候補にも来てもらう。

 世界中に放った妖精たちだが…好奇心旺盛でなかなか勇者っち候補を見つけるどこか遊びほうけているらしい…魔王が現れたと聞いたら慌てて探し出すだろう。


 つまり、両方の問題を一気に解決できると言うわけだ。


 新人だがなかなか気のきく部下を門番にさせて入場者をチェックすれば、後は待つだけ。


 今回の計画には大天使様も、計画に参加してくれるから安心安心…


 だったのに…


「池の上にある花はなんですかいね?上品でいいね」

 魔王!!!何でここにいる

 しかも魔王の隣で話し相手しているの大天使様やんけっ


「あれは睡蓮っていうんですよ。東の国では…」


 ………


 整理しよう

 ここはサラーサ町にある水の庭園。

 魔王を待つ私は庭園を眺めながらティータイムを楽しんでいるところだ。

 で、池のほとりで花を話して…会話しているオッサン2人は…聖魔戦争でさえ顔を合わせなかった大天使と魔王……


 ………


 ローズティが美味しい

 て、現実逃避しないで、この状況、私はどうすればいいんだぁ


 あのオッサン達は話し相手が誰か知っているのか…


 オロオロするしかない私の前に…状況が悪化した。

「魔王さまー」

 ニワトリが現れた。人間の言葉を話すのは魔王の部下が変身しているモンスターの可能性が高い。

「マオーさん、はぐれたら迷子になりますよ」

 その後から人間が妖精と共に現れた。

「あっれー。大天使様と部下がいるー」

 状況を知らない妖精は暴露してしまった……



 あぁ、神様……


 万事休すと頭に浮かんだ……



「魔王さんでしたか。これはこれは気づかなくて失礼しました」

「いえいえいえ。ワシも大天使さんとは知らず、花の話に聞き入ってしまったよ」

「魔王さんは庭や花に興味がありますか」

「ええ。何か、心が癒されますよね」

 オッサン2人はまた平和な会話を始めてしまったよ……収集がつかなくなってきた。

「魔界のお城に庭園を作ってみてはどうでしょうか?」

 ………

「まずは一度、魔界に戻られて土の様子を調べるのが良いですね」

 大天使様は…遠回りに魔王を帰らす方向に持っていった。

「そうですね…そうしたいのは山々なんですが…」

 魔王はニワトリに視線を向けるとニワトリもうなづいた。

「今回の一件が片づいたら、一度もどって部下たちに顔を見せた方がいいですね。部下たちに忘れられないうちに」

「うむ」

「返済はそれからでもできますし」

「そうじゃの…」

 魔王が大人しく魔界に戻ってくれれば倒す必要はないし。

「それはそうと町を占領する魔王は?」

 妖精は忘れたままで良い事を口にした。

「町はいたって平和ですよ」

「やだー嘘だったの?」

「いいじゃないか、ドリィ。争いのない平和な町ならば」

 勇者っち候補が微笑むと、一気に空気が和らぎ、すべては解決と解散になった。



 報告書、どうしよう?

 勇者っち候補が無血で魔王を説得させたことにすれば、上のお堅い連中も納得するだろう。(あとで大天使様と相談する必要があるが…)

 一つの町を借りて大掛かりな事をしたんだから……人間の手によって解決した方が後処理も楽になる。

 庭園に現れた勇者っち候補を無血の勇者に仕立て上げよう。



 終わりよければすべてよし。








 水色月27日

 魔王、故郷に帰って、今日、村に戻ってきたよ。

 久しぶりの魔界城は…借金騒動が起こる前と変わらない状態だったよ。

 魔王、久しぶりにセレブ生活あじわっちゃった。お肌すべすべになったし。

 魔王っていいね…

 いつまでも城にいたかったんだけれどもね…人間界の返済がね…

 ま、リモット村に帰れば親友ヴィスナーや妖精ドリィに合えるし。村人さんもいるし。

 魔王には二つの帰れる場所がある…これってすごくない

 魔王、超幸せ~



 おわり



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