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使い魔と妖精と勇者候補

 5魔王と妖精と鶏


 白月25日

 村の皆がワシを温かい目で見てくれるようになった。魔王、超うれしー

 そんな中、事件が起きてしまったのだ。


 夕方、家に向かう途中で一匹の雄鶏が道のど真ん中にいた。

「探しましたよ、魔王様」

「にににに、鶏が口を開いた。ぎゃーー」

 驚き、逃げ出しそうとしたワシに鶏は飛び掛った。

「あら、マオーちゃん。鶏に遊ばれて楽しそうね」

 倒れたワシの上に乗る雄鶏を見て、村人Bおばーちゃんは笑っていた。



 白月26日

 雄鶏を家に連れて帰り、一晩が明けた。

 人間の言葉をしゃべる鶏は、ワシの使い間オードリィだった。魔界の姿だと人間世界で大変なことになるから変身しているという。

 オードリィはワシに朗報を届けてくれた。

 な、なんと冥府の王様が借金を肩代わりしてくれたのだ。

 魔王が株で破産したのは息子のせいだから、世間体をきにして…まあ、大人の事情というものだ。

「城に仕えていたモンスターたちも戻ってきました。あとは魔王様が戻るだけですよ」

「じゃあ、ワシ、魔界に……」

 魔界に帰れる~

「もちろん、人間世界の借金を返済してからです。この家の返済があるんでしょ」

 がーーーん

「冥府王の借金は魔界だけです。第一、魔界のお金は通用しません。

 踏み倒すものならば、天界のいい笑いもんです。

 いいですね、きっちり稼いでくださいよ」

 世の中は非情だ……


 あ、雄鶏だからオードリィ……魔王、超ウケルんですけどー

「コケッ、コーーー」

「ぎゃー、痛い痛いっ」

 日記を見たオードリィにつっつかれたよ。ワシ魔王なのに……



 白月28日

 リモット村に行商人がやってきた。

 村の雑貨屋にはないめずらしい物ばかり。魔王だってたまにはショピング。

「どうだい、オードリィ。行商人からすてきなマントを買っちゃった」

「素敵って……赤と緑と白のつぎはぎじゃないですか」

「パッチワークという技法だよ。ちょっと値がはったけれども、いい買い物したなぁ」


 ………


 そのあと、魔王はオードリィから跳び蹴りをくらっちゃったよ。とほほ

 返済生活とはいえ、おしゃれぐらいはいいとおもうんだけどなぁ。

「2か月分の返済額を使うとはーーボンクラ魔王めー」




 今回は魔王ではなく、天界に住む偉い男の日記


 黄月6日

 魔王が帰って来ない。 

 青月10日に魔王破産宣言をし、橙月25日に冥府王が負債肩代わり宣言をして2ヶ月もたつのにだ。

 やはり、罠なのか?

 魔王が破産したのは真っ赤な嘘で、本当は人間界を侵略するのではないのか?

 そもそも、魔王が破産なんて馬鹿げた話があるか。

 うむ、これは調べた方がいい。

 それはそうと、今座っているクリスタル製の椅子。何とかならないか、痛くてかなわん。


 

 今回も天界に住む偉い男の日記


 黄月13日

 魔王らしき者を人間界で目撃したという証言をえた。

 やはり、魔王は人間界を侵略し、第二の神魔大戦を起こそうと目論んでいたのだ!

 一刻も早く魔王を見つけ出し阻止しなければならない。

 それから、魔王を倒せそうな人間『勇者っち』を捜さねば。

 妖精王に頼んで妖精たちに『勇者っち候補』を捜してもらおう。

 候補になりそうな人間を世界中から集めなければ。

 ………

 そういえば、妖精王の娘はかなり美人らしい。これは自ら行こう。



 魔王の日記


 黄月15日

 オードリィがワシの爪を集めている。

「怪しげな薬屋で買い取ってくれるんですよ」

「ワシの爪って効能があるんだ。ワシってすごいんだね」

 っていったら、オードリィの目が一瞬だけ怪しく光った。

「……いや、それはまずいな」

 ぼそりといって首を振った……

 オーーードリィ。何を考えてたんだ…



 黄月30日

 今日はすんごい日だったよ。

 魔王ねぇ、妖精さんみちゃったの。

 妖精は心がピュアじゃないと見られないんだよ。魔王、超嬉しい。

 でもね……

 妖精さん。魔王に気がついたら『げっ』って言ったんだ。

 さらに『私、勇者っち候補はイケメンじゃないと嫌』と言って飛んで行っちゃた。


 イケメン


 魔王だってなりたいよ。お隣のビィスナーぐらいなれたらな、魔王だってハッピー人生るんるんだったのに

 イケメンになりたいーー


 ところで『勇者候補』ってなんなんだろう?



 茶月1日

 朝から使い魔(今は鶏に変身中)オードリィに怒られちゃったよ。とほほ。

 何でも、真夜中に突然むくりと起き上がって『魔王、イケメンになりたいー』って叫んだみたい。

『近所迷惑な寝言はやめてください』だって

 魔王だって叫びたい事だってあるのだよ。

「オードリィよ、ワシ、整形しようかな」

「寝言は寝て言えーー 」

 魔王なのに跳び蹴りくらっちゃったよ。

 本気で考えていたのに……



 今回はアンナ=S=ドリイ(妖精)の日記


 茶月2日

 妖精王から魔王を倒せる勇者候補『勇者っち』を探して来いと言われて人間界に来たけれども…見つかんないよー。

 あたしら妖精を見られる人間自体少ないし、見えても子供ばっかり。

 この間、大人で見られた人間いたけれども、灰色肌をしたおっさん。超ウケた。

 とはいえ、勇者っちを見つけられないと、妖精界に帰れないし、怒られるし、最悪。

 どっかにイケメンの勇者っちいないかな。別に勇者じゃなくてもいいや。というより魔王を倒せる勇者候補を見つけたら真面目に魔王退治しないといけないからヤダ。

 勇者候補はたくさんいるから、アタシぐらいサボってもいいよね。



 今回もアンナ=S=ドリイ(職業、妖精)の日記


 茶月3日

 ついに見つけた勇者候補のイケメン君が

 名前はヴィスナー、かなりの好青年。アタシ的には、ちゃらついてた方が良かったんだけれども、こんな田舎じゃ妖精を見られるイケメンでも良い方よね。

 森で1人歩いている所を見つけて、早速、アタック

「ぱんぱかぱーん。

 オメデトー、あなたは勇者っち候補50人の1人に選ばれました~」

 華麗に登場したけれども、新しい相棒君はきょとんとしてた。

 ま、フツーそうよね。ある日、突然、妖精が現れたかと思ったら勝手に勇者候補にされちゃっているんだから。アタシだったらウケる。

 ヴィスナーに事情説明して納得してもらうのに時間がかかった。

 アタシが魔王退治がメンドーだからやらない事も言ったら『じゃあ、家で好きなだけくつろいでいたらいいよ』って。

 人間も捨てたもんじゃないわね。アタシ、見直しちゃったよ。


 無事にヴィスナー宅でくつろいでいたら、隣の人が作ったてのアップルパイを持ってきてくれてた。

 しかも、その人がこの前の灰色肌をしたオッサンだった。超ウケてお腹が苦しくなるまで笑ってた。

 アップルパイは初めてにしては美味しかった。

 灰色肌のオッサンは「マオー」さんって言ってた。

 まさか、魔王じゃないわよね。そうだったら一生笑いっぱなしになっちゃうよ。



 魔王の日記


 茶月5日

 お隣のヴィスナー君が、人間世界のお話をしてくれた。

「毎年、1年最後の月の24日になると、赤い服を着たおじいさんが空飛ぶソリに乗って、世界中の子供達にプレゼントを配るんだよ」

「プレゼント。いい子にしていたら、魔王も貰えるかな?」

「……いや、マオーさんは大人だから無理だよ。

 それに、最近の子供たちは信じないから、赤い服のおじいさんの存在が薄くなっているんだ」

「そんな、かわいそうな子供たち。

 よし、ワシが赤い服のおじいさんの代わりになってプレゼントを配ろうじゃないか

 ソリはないから、レッドドラゴンさんに頼んで運んでもらおう」

「……… え、と、マオーさん。それはやめた方がいいよ」

 レッドドラゴンに乗った魔王がやって来た……

 誤解されて下手したら第二神魔戦争になりえないか……てへっ



 


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