トリップ??
ゆびわからあふれ出す光に驚いた私はぎゅっと目をつぶり、無意識に兄に助けを求めるように大きく叫んだ。
とそのあとすぐにまるでジェットコースターの頂上から下に落下するときに感じるような、ふわっとする感覚、体が重力に逆らうような感覚がした。
それは一瞬の出来事なのだろうが、その感覚に背筋がぞくっとし、実際よりも長く感じた。
その感覚が消えると、私はそーっと目をあける。
目の前には海、さっきまでと同じように海があった。
「え? 今のってなに?」
きょろきょろとあたりを見渡すが、特に変わってないと思う。見渡すといっても海と砂浜、森しかないのだけれども。
「もしかして、妖精たちのいたずら? 光と風の子たちとかかも。」
私がそう思うのは、たまに彼らは人々にいたずらをするのを知ってるから。俗に言う、カマイタチや火の玉、なんていうのも実は彼ら、妖精たちの仕業。
妖精の存在を知らない人達にばれない程度で彼らはいたずらをすることがある。
「だから今回もそうだと思ったんだけど……」
隠れていたずらしたとしても、いつもなら誰がしたのか気づくのだが。
「おっかしいなー。おーい、出ておいでー、怒らないからー」
周りに聞こえるように声をだす。……が、反応はない。
あの時、光に包まれて浮遊感を感じた時、確かに妖精の気配がした。
そういえば普段感じる妖精たちの感じとは少し違っていたような? もう少し力が強い、とでもいうのだろうか、そんな感じがした。
とりあえずお兄ちゃんのとこへ戻ろうと思い、さっきのように来た道を戻ろうと振り向いた。
―――振り向いた、と同時に固まった。
振り向いたら、本来は200mほど先にお寺が木に隠れて見えるはずだった。
しかし、あるはずのお寺がなく、あるのは砂浜と海と森のみ。しかも今までいた砂浜はそんなに広くないのに、目の前にあるのは何㎞かはありそうな砂浜。さっきまで前を向いていた方向は砂浜の端のようだ。
「どういうことよ、これ……」
お寺を出てあまり歩いてないけど、実はものすごく遠くへ来ちゃったとか、迷子になったのかなどと乾いた笑いとともに考えるが、頭の中では1つの可能性に行きついていた。
「まさかのトリップってこと?」
私は突如見に降りかかった非現実的な出来事に「は、ははっ」と面白くないのに笑うしかなかった。