2話 目を覚ますとそこには美少女がいました
「は?」
思わず声が漏れる。
無理もない。豪華絢爛という言葉がぴったりな西洋風の部屋が目に入った。それだけならまだ声は漏れなかっただろう。
なにより部屋が広すぎるのだ。ホテルのロイヤルスイートと同じかそれよりも広い。そして飾られている彫刻や絵画になんともいえない高級さを感じる。
ここは本当に結婚式場か?私がいた結婚式場はどちらかといえば生花や噴水が似合うような洗練された式場だったはずだ。こんなに西洋のお貴族様御用達というような重厚感ある部屋が似合うとは思えない。
本当にどういうことだろうか。軽くパニックになりながらもどうしたものかと考えてみる。
ふと視線を落とすと、自分の手が視界にはいる。なんか小さくない?幼い子どもの手みたい。
まじまじと自分の手を見ていると肩から髪の毛が一房落ちてきて思わず目を疑う。
「……金髪だ……。」
え?寝てる間に染めた?!そんなわけないよね?!
もしかしてウィッグか?
軽く引っ張ってみるが、どう考えても自分の頭皮に繋がっている感覚がある。地毛で間違いないみたいだ。
「意味がわからぬ……」
思わず武士言葉になるのも無理はない。本当にわけがわからないのだから。どうしたらいいですか?
▽▲▽▲▽▲
しばらく髪の毛を意味もなく触ったり、部屋をキョロキョロ眺めたりと過ごしていた。幾分か落ち着き、やはり同じ疑問ばかりが浮かぶ。
ここはどこ?
目に入るものから情報を得ようとしたが、なにせ高そうな家具や装飾品しかない。こんな美術館のような室内は私のもちうる記憶の中には存在しない。ゆえにここがどこなのか全く不明なのだ。
私が目を開けてからどれくらい経ったのかわからないが、人の気配もない。これは自分から誰かに声をかけに行った方がいいのだろうか。
しばらく考えていたが、正解がわかりそうにもないのでとりあえずベッドから降り部屋から出てみることにした。
ベッドから降りようと布団をめくりベッド脇に足をかけたときに自分が裸足であること、白いネグリジェのようなものを着てること、そしてベッドがわりと高いことに気づいた。
え?私の足ちょっと小さくない?
え?ネグリジェ着るの始めてなんだけどこれ誰が着替えさせたの?
え?ベッドこんなに高かったら寝るとき大変じゃない?
次々と思考がかけ巡って疑問ばかりである。
そんな疑問を抱きながらもベッドから軽く飛ぶように降り、足はおそらく部屋から出れるであろう扉へ向かう。
その途中でベッドの上からは死角で見えてなかった姿鏡の前を通過した。
そしてふと立ち止まる。
もう一度姿鏡の前へ戻る。
「!!!」
絶句した。
意味がわからないほど心臓の音が大きく聞こえる。
そこに映っていたのは金の髪にブルーの瞳、白いネグリジェのようなワンピースを着た明らかに私ではない少女だった。
姿鏡を両手で鷲掴みにして顔を近づける。
どれだけじっくり見ても私の知ってる私の顔ではない。
純日本人がどうやったらこんな西洋のお人形のような顔になれるのか。
なによりどうやったら27歳の女が10歳やそこらの少女になれるのか。
どうりで手足が小さいはずだ。ベッドも高くて当たり前。私が小さいのだから。
「それにしても可愛いな……」
思わず言葉にしてしまう。焦りすぎて正気じゃないのかもしれない。ふと気づいたら別人になってましたなんて、ファンタジーの世界だ。
自分の容姿に見とれていると扉の方から足音が聞こえる。次の瞬間にはノック音が響いた。
「お嬢様、失礼いたします。」
ガチャっと扉が開かれると、メイドのような服を着た若い女性が白いシーツのような布を持って入ってきた。
私と目が合うなり驚いた!というように目を見開いて慌てて開いた扉から外に向かって叫んだ。
「お嬢様がお目覚めになられています!!!」
そこからはあれよあれよと急展開だった。
再びベッドに戻るようにと抱えて戻され、ワンワンと泣く先ほどのメイド服の女性が何やらたくさん話しかけてきたがほとんど嗚咽で聞き取れなかった。
そうして5分も経たないうちに白衣を着たいかにも医師というような男性に身体中をくまなく調べられた。どこか痛むか、苦しくないかと聞かれたが大丈夫だと答えた。
「特に身体に異常は見られませんでした。お嬢様も特に問題ないとおっしゃっていますし、もう大丈夫でしょう。念の為しばらくは安静に過ごしていただき、10日もすれば普段の生活に戻っていただいて問題ありません。」
「承知いたしました。ありがとうございます。」
医師の言葉にメイド服の女性が答える。
確かに痛みや苦しみはない。それよりも若返っていることに問題がある。果たしてそれをこの医師に言っていいものだろうか。
どう考えても私が西洋風美少女であることに疑問を抱いているのは私だけ。なんならこの2人は当たり前のように私をお嬢様だなんて呼んでいる。なんだこれは。




