表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/18

第4話「みつばと、午後のティータイム」

午後の陽ざしが、カーテンのレースをやさしく透かしていた。

ストロベリー柄のジャンスカの裾を揺らしながら、ふたばはリビングに入る。


「ただいま〜!」


台所から母の声が返ってくる。

「おかえり、ふたば。楽しんできた?」

「うん!すっごくかわいいドレス見つけたの!

しかも似合うって言ってもらえたんだ〜♡」

「まぁ、それはよかったわね」

母の和葉は、笑いながらポットにお湯を注いだ。

「紅茶淹れる?せっかくだから、新しいカップ使おうか」

「うん、飲む!」


ふたばはストロベリー柄のスカートをふわりと広げて座り、

テーブルの上のティーセットを見つめた。

白地に小さなピンクのバラ。祖母が昔、骨董市で見つけてくれたお気に入り。


湯気が立ち上がり、部屋中にアールグレイの香りが広がる。

ふたばはほっと息をつき、うっとりと目を細めた。


足もとから「にゃぁ〜」と鳴き声がした。

「みつば!」

黒猫のみつばが、ふたばの足に身体をすり寄せてきた。

「おりこうさんにしてた?お留守番ありがとう」

「にゃっ」

「えへへ、ちゃんといい子印だね。はい、ごほうびのカリカリ〜♡」


小皿にカリカリを出すと、みつばはしっぽをぴんと立てて食べ始める。

その姿を眺めながら、ふたばはティーカップを口に運んだ。


「……やっぱり、おうちの紅茶がいちばん落ち着く」


風が窓を揺らし、カーテンがふわりと膨らむ。

ストロベリー柄のスカートの上に、その影がゆらゆらと踊った。


「ふたば、今日の写真見せてくれる?」

母が隣に座って尋ねる。

「うん!撮ってもらったの、すっごく綺麗なんだよ!」

ふたばはスマホを取り出し、カメラフォルダを開いた。


画面には、いちごのロリィタ服を着た自分が笑っている写真。

自然光の中で、スカートのレースがやわらかく光っていた。

「わぁ……ふたば、ほんとにモデルさんみたい」

「ふふっ、撮ってくれた人も優しくてね。“笑顔が素敵です”って言ってくれたの」

「あなたの笑顔はねぎ畑でも一番輝いてるもの」

「も〜お母さんまで〜!」

ふたばは照れながらも、嬉しそうに笑った。


午後の陽ざしが少し傾き、影がゆっくり伸びていく。

みつばはソファの上で丸くなり、ふたばの膝に頭をのせた。

その温もりが、まるで小さな湯たんぽみたいにやさしい。


「ねぇ、みつば。ふたばね、メイドでもロリィタでも、

ねぎ畑の娘でも、どれも“自分”なんだって思ったんだ」


「にゃぁ」

「うん、そうだよね。みんな一緒でいいんだよね」


ふたばはそっとみつばを撫でながら、目を細めた。

紅茶の香り、風の音、猫の寝息。

それだけで、世界がまるくなるような気がした。


台所から母の声が聞こえる。

「ふたば、夜はシチューよ。にんじん切ってくれる?」

「はーい!」

ふたばは立ち上がり、スカートを軽く押さえてキッチンへ向かう。

足もとでは、みつばがのんびりとついてくる。


「みつばもお手伝いしたいの?」

「にゃ〜」

「じゃあ応援係ね!」


包丁の音がトントンと響く。

夕暮れ前の松戸の家。

窓の外では、ねぎ畑がゆらゆらと風にそよいでいた。


「今日もいい日だったなぁ」

ふたばのつぶやきが、やさしく部屋に溶けていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ