第16話「ふたばとしずくの原宿デート」
日曜日の朝。
松戸の空はやわらかな春色で、
ふたばは鏡の前でピンクのリボンをきゅっと結んだ。
「今日はしずくと原宿デート。双子ロリィタ、できるといいなぁ」
ピンクのストロベリー柄のジャンパースカートに白いレースのブラウス。
お気に入りのカーディガンを羽織ると、気持ちもふんわり軽くなる。
玄関では黒猫のみつばが、スカートの裾にじゃれついていた。
「だめだよ、みつば。今日は大事なお出かけなんだから」
「にゃ〜」
「ふふっ、帰ったらちゅ〜るね」
千代田線の車内。
ふたばはスマホを開いて、メッセージを確認した。
【しずく:もう明治神宮前に着いたよ〜。サックスのロリィタで行った!】
「サックスかぁ……ピンクと並んだら絶対かわいい。今日こそ双子コーデ、完成させよう」
電車が地下を抜けるたびに、胸の中がどんどん弾んでいく。
明治神宮前〈原宿〉駅。
改札を出ると、すぐに手を振るしずくの姿が見えた。
淡いサックスのロリィタドレスに白いパラソル。
春の光を受けて、まるで空をまとう妖精のようだった。
「しずく〜!」
「ふたば〜! ピンクめっちゃ似合ってる〜♡」
「ありがと! しずくもすごく綺麗! 一緒に歩いたら絶対映えるね!」
2人は並んで地上へ上がり、神宮前交差点を渡る。
竹下通りの入口が見えてきたころ、
ふわりとクレープの甘い香りが風に乗って流れてきた。
「やっぱり原宿に来たらこの匂いだよね〜」
「うん! おしゃれと甘いもの、どっちもセット♡」
ふたばとしずくが向かったのは、おなじみのロリィタショップ
「Étoile Ange」。
木の扉を押すと、鈴の音といっしょに春の空気が流れ込んだ。
「いらっしゃいませ〜♡」
店内には春色のドレスが並び、
ピンク、サックス、ミント、イエロー……まるでお菓子の国のようだった。
「ねぇ、ふたば! 見て! このシリーズ、ピンクとサックスがある!」
「わぁ! レースもうさぎプリントも同じデザインだ!」
「これで双子コーデできるよ!」
「ほんと!?やったぁ〜♡」
2人は目を輝かせながら、それぞれの色を手に取った。
ピンクとサックス――春のいちごと空の色。
試着室のカーテンが同時に開く。
鏡の前には、同じデザインのロリィタ服を着たふたばとしずく。
色だけ違う“双子コーデ”が完成していた。
「きゃ〜っ♡ わたしたち、本当に双子みたい!」
「ふたばのピンク、甘くてかわいい! わたしのサックスも爽やかで合うね!」
しずくがスマホを取り出した。
「写真撮りたいけど……店内って大丈夫かな?」
「少しだけなら大丈夫ですよ〜♡」と店員がにっこり微笑む。
「ありがとうございます!」
ふたばとしずくは鏡の前でそっと並び、一枚だけ撮影した。
撮った瞬間、ふたばの頬が照れてほんのり赤くなった。
お会計を済ませ、お店を出ると、
しずくが小さく言った。
「ねぇ、外でも撮ろっか。竹下通りの入口のとこで♪」
「うんっ! 双子ロリィタ、原宿デビューだね!」
人通りの少ないタイミングを見計らって、
看板の前でツーショットを撮る。
ピンクとサックスのリボンが、春の風にふわりと揺れた。
「やっぱり、色違いって最高だね」
「うん。“双子”って感じがする」
そのあと、2人はカフェに立ち寄った。
ふたばはストロベリーパフェを、
しずくはブルーベリータルトを頼んで、
窓際の席に腰を下ろす。
「ねぇ、ふたば。ロリィタ服って、ただの服じゃないね」
「うん。“かわいい時間”を一緒に作れる魔法だよね」
「今日のタグ、#双子ロリィタ にしよう♡」
「いいね! きっと見た人、笑顔になるよ」
夕方。
オレンジ色の光が街を包みはじめる。
ふたばとしずくはおそろいの紙袋を手に歩いていた。
「次は夏の双子コーデしよっか」
「うん! ミントとピンクで“夏のロリィタ姉妹”だね♪」
ふたばが笑うと、しずくも同じタイミングで笑った。
2人のリボンが、夕暮れの風にやさしく揺れていた。




