第11話「ふたばと春のティータイム」
放課後の空は、やわらかなピンク色に染まっていた。
校門を出ると、春の風がスカートの裾を揺らす。
「ねぇ、ふたば。今日はちょっと寄り道してかない?」
声をかけてきたのは親友の水野しずく。
いつも明るくて、今日もリュックには撮影用の小道具が覗いている。
「いいよ。どこ行くの?」
「21世紀の森の方。桜がすっごく綺麗なんだって!」
「じゃあ、紅茶持っていこっか。今日はちょっと贅沢しよ♪」
公園に着くと、あちこちで家族連れや学生がシートを広げていた。
木漏れ日の下、ベンチに腰かけてしずくが言った。
「ねぇ、今日もお店だったんでしょ? 新人ちゃん、どう?」
「がんばってるよ。まだ緊張してるけど、笑顔がすごく素敵なの」
「ふたばが先輩なんて、なんか感慨深いなぁ」
「私も最初は何もできなかったよ。
でも“おかえりなさいませ”って言って笑ってもらえたとき、
あ、これが魔法なんだって思ったんだ」
しずくはふわっと笑って、鞄から小さな瓶を取り出した。
「実はね、これ今日の撮影用に作ったんだ。魔法瓶、って設定」
瓶の中には、小さなスパンコールとピンクのリボン。
光が当たるたびに、きらりと瞬く。
「わぁ、かわいい……!本当に魔法みたい」
「でしょ?でも、ふたばの“笑顔の魔法”の方が本物だよ」
「ふふ、ありがと。でも私、しずくのコスプレも魔法だと思うよ。
だって“なりたい自分”になれてるんだもん」
二人は見つめ合って笑った。
桜の花びらが、紅茶のカップにひとひら落ちる。
「ねぇ、しずく。いつか私も衣装作ってみたいな」
「いいじゃん! ふたばなら絶対かわいく作れるよ。
ロリィタ服も、アクセも、全部自分の“好き”が出てるもん」
「うーん、やってみようかな。みつばにも似合うリボン、作りたいの」
「にゃ〜って鳴きながらモデルしてくれそう」
「ふふ、そうだね。きっと可愛い写真が撮れるよ」
日が傾いて、公園の木々の影が長く伸びていく。
ふたばは残りの紅茶を飲み干して、ゆっくりと立ち上がった。
「帰ろっか。明日もお店だし、ほのかちゃんにも会わなきゃ」
「がんばってね、先輩メイドさん♡」
「もう〜、からかわないでよ〜」
笑い声が春の空に溶けていく。
桜の花びらが風に乗って舞い、
ふたばの髪にも、ひとひらふわりととまった。




