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第九章 ──心の奥にある檻
ふと気づくと、意識の中に部屋があった。
柔らかい布でできた檻のような、四角い空間。中には、自分と同じような「人間の姿をした何か」が、何人も座っていた。
「……誰?」
その一人が、ユウに顔を向けた。少年だった。どこか自分に似ている。
目が虚ろで、口は何も言わず、ただじっとこちらを見つめている。
「お前も……?」
「……うん。僕はタカシ。猫の着ぐるみ刑で……ここに来た」
彼はゆっくりと答える。もう言葉を話すのも辛そうだった。
「でも……もうすぐ僕は、この部屋の中からも消える。外にいる“猫”が本当の僕になって、ここにいる意識は……泡みたいに、ふっと消えるんだ」
「そんな……!」
「逃げられない。でも……まだ君は、声を出せた。名前も思い出せてる。だから……もしかしたら、君だけは……」
言いかけた彼の姿が、少しずつ透けていく。
まるで風船がしぼむように、彼の輪郭はぼやけ、やがてふわりと、何もない空気に溶けていった。
ユウは立ち上がる。
「……消えない。僕は、消えたくない。絶対に!」