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第五章 ──他の者たち
ある日、ユウは刑務局の敷地内にある「延長者区画」へと移された。
そこには、彼と同じように着ぐるみ刑が終わらなかった者たちがいた。
柴犬、猫、クマ、キツネ……
みんな「着ぐるみの形」で暮らしていた。人間の言葉はもう発せず、動きも限られている。
ユウが近づくと、茶色いパンダのような着ぐるみが振り返った。
そして、小さな声で言った。
「……キミも、まだ“自分”でいられるんだね」
「えっ?」
「もうすぐ……境界が曖昧になる。最初は言葉が出せなくなる。次に、自分の名前を忘れる。最後に、“着ぐるみであること”が自然になる」
「そんなの、冗談じゃ──」
「でも、怖くないよ。ここにいるみんな、もう寂しくないんだ」
彼らの目は穏やかだった。
ユウは言葉を失った。だがその時、心のどこかがふわりと軽くなったような気もしていた。