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第四章 ──異変
刑の執行から二日が過ぎた。
本来は24時間の着用で刑が終了するはずだった。だが、ユウの着ぐるみにはなぜか外れないロックがかかったままだった。
「どういうことだよ……」
刑務局に問い合わせても、AI音声が繰り返すのはたった一言。
「生体適合率が予想値を超過。自主的な解放が困難と判定。延長処置を継続します」
意味がわからない。
あの時から、体の感覚も少しずつおかしくなっていた。
──手の感触が曖昧になり、指が常に丸まっている。
──鏡を見ると、目の中の光彩がほんのり琥珀色に変わっていた。
──眠って目覚めると、無意識に「わん」と鳴いていた。
「まさか……これ、着ぐるみの中で、身体が変わってきてるのか……?」
焦燥と不安。だけど、それだけじゃなかった。
着ぐるみの中は……心地よかった。
何もかもを忘れて、ただ歩いて、座って、誰かに撫でられると──満たされてしまう自分がいた。