第一章 ──判決
罪状:情緒の不安定・公共秩序の撹乱
少年ユウは感情を爆発させたことで「子犬の着ぐるみ刑」に。
撫でられ、可愛がられる日々の中で、自我は薄れ、最後は“着ぐるみの中”に溶けてしまう。
しかし、残された意識が抗い、彼は人間として戻る選択を
「被告人、ユウ・ミナト。罪状は”公共秩序の撹乱および情緒不安定による市民不快の誘発”。よって本裁判所は、被告に対し──子犬の着ぐるみを着せられる刑を言い渡す」
その判決が告げられた瞬間、法廷の空気が一瞬静まり返ったかと思うと、軽いざわめきが広がった。
「またか……」「あの刑、最近多くない?」「あれ、地味にきついらしいよ」
ユウは呆然と立ち尽くしていた。
「……なんだよ、それ。冗談だろ?」
彼は学生だった。年齢は17、特に目立つこともなく、騒がしいことも好きではなかった。ただ、ある日、少しばかりクラスの中で鬱憤を爆発させてしまった。それだけだ。机を蹴り上げた。壁に向かって叫んだ。
その様子が偶然、クラスメイトの持っていた監視端末に記録され、教師のAIが即座に通報した。
情緒不安定者は社会の円滑な機能を妨げる。そんな時代だった。
そして今日──彼は、「子犬の着ぐるみを着せられる刑」を言い渡されたのだ。