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魔砲艦隊司令官は……  作者: 魔砲教会総務部・広報部
艦隊司令前史。教会入隊から今に至るまで
3/4

前史(3)


細かい事とかは忘れた。……と言うよりもお父さんの顔のように、他全ては覚えているというのに、とある部分だけ切り取られたようにしか思い出すことができなくなった。……それが顕著になったのは漸く回りが私に信頼を寄せ始める兆候が出てきた、魔砲艦隊尉官として従軍していた時からだと思う。それすらも切り取られ始めているけど。


旧大陸暦1909年、この時、私は旧式魔砲駆逐艦の【パタビア】に乗艦し、艦長を勤めていいた。旧式駆逐艦と言えども空間魔法を付与した空中魚雷や砲口径や砲身長を拡張した主砲による、撹乱作戦には対応できるし、旧式由来の魔力燃焼缶と魔導エンジンは信頼性とメンテナンス性が高く、あらゆる戦線に投入されていた。【パタビア】はそんな旧式駆逐艦の中でも比較的新し目の旧式艦だったことも相まって、より多くの戦線に投入されては危険な任務にも従事している。

しかし、近代化改修をされたとは言え解体を免れた旧式艦の中では一番のお古。上はこの艦を『失くしても惜しくない艦』として酷使されていた。私は別にだったが、問題は一般乗組員達だった。

それはそうだろう。砲雷科、機関科、航海科……そして私よりも階級の低い艦橋要員……休む暇もなく前進前進また前進。その疲れが生んでしまった悲劇というか……なんというか。



旧大陸暦1909年8月6日、旧式魔砲駆逐艦【パタビア】と旧式魔砲駆逐艦【バラクシア】と旧式魔砲軽巡洋艦【アランダリア】の3隻で魔族支配領域の、旧生存圏内部にあった巨大軍事施設の強行偵察を命じられた。……反対はしたかった。【パタビア】他2隻の事を悪くは思わない。どちらかと言えば仲間だし乗艦は、最早家族と感じれる。

…けれど、偵察対象となっていた軍事施設は飛行艦艇や小型浮遊艇、更には軍事用工作機械に対空魔導砲など、魔族側からしてみれば前線大軍事施設なのだ。警備艦艇は多数浮いているし、歩哨や空中警戒探照灯による空中警戒も他とは比にならない。偵察なんてするよりも魔法で潰したほうが安上がりに思えるほど、というのが前線の兵士の認識だった。しかし後方司令部は偵察後、総力戦を開始するというので、私達に命令がくだったというのが、あの作戦の過程らしい。


旧大陸暦1909年8月10日、偵察対象の軍事施設へと近づき偵察を行っていたとき、運悪く艦隊と真反対の空中警戒探照灯に見つかり、地上からは熾烈な対空砲火が、空からは飛行艦艇からの艦砲射撃や空間魚雷攻撃が襲いかかってきた。その中には魔族側の戦艦型飛行艦艇を居たと思う。なにせ此処が切り取られてしまっている。

……それにしてもよく耐えたと思う。魔砲艦も一応、艦底部に攻撃手段や装甲はあるとは言え駆逐艦と軽巡洋艦だから、装甲はほぼ無いに等しい。それ故に127mm対空砲であっても脅威になる。そんな中でも卓越した操艦で何とか回避し続けていたけど、運悪く【バラクシア】が被弾。しかも被弾したのが重巡洋艦型飛行艦艇の主砲弾だったから一撃で、弾薬庫と機関部に誘爆し一撃で地上に落下していった。助ける事も出来なかったのが悔しかったかな。

旗艦として、殿として【パタビア】を避難させようと、艦上探照灯やら主砲やら空間魚雷を駆使して勇敢に戦っていた【アランダリア】も途中までは無事だったが、此方も被弾。艦橋気分を根こそぎ持って行かれ、対空砲火が推進軸を破壊し、自律航行が不可能となった所で重巡洋艦型の主砲が炸裂。まだ残っていた空間魚雷に誘爆し此方も一撃で地上へと落下。しかも特大の炎上付きで落下していったから搭乗員の生存も絶望。

……多分、私の大事な人だった【アランダリア】の艦長も艦橋が吹き飛んだ時に死んだと思う。名前は覚えている。性格も覚えている。……けど、何かが抜けている。それが思い出せない。


唯一生き残っていた私の乗艦の【パタビア】は味方支配領域まで60kmの所まで来ていたけど、近くを飛んでいた小型飛行警備艇に見つかり、爆弾を投下され、旗艦部に誘爆。その後、川へと落下したのがたどった末路だった。

途中、大嵐の中へと突っ込んだお陰で追跡艦隊を振り切ることができたけど、乗組員はことごとく重傷で、艦橋要員も大半が死んでいった。生き残ったのは私を含め30人程度。そのうち動けるのは私と、部下の9人程度だったと思う。動ける奴は機関部に回して、他の操艦や火器管制は私の魔法で補い、何とか動いていたけどまともに動く火器はなかったから、ただの標的艦のような動きしか出来なかったのが駄目だったんだろう。


川へと落下した直後、生きている乗組員を引きずり出した。けど、生き残ったのは……■■■……?■■■………まずいね。ここも切り取られてる何て。

……兎も角生き残ったのは私と■■■だけだった。しかも魔族支配領域は基本的に寒い。川の水につかった以上、身体から体温がなくなっていくのを感じるし、暖まろうにもそんな時間はない。密林地帯だけれども多数の警備艇や地上捜索隊が組まれれば、直ぐ見つかるだろうと判断し、ぐったりしている■■■を背負い逃げ始めた。

逃げて見つからなそうな洞窟の中で暖をとり、漸く回復し始めた魔力で負っていた傷を回復させあとは気力を回復させるために、夜まで休憩をさせた。真夜中の密林での逃走劇は、軍事訓練の中でもキツかったが本番はもっと厳しいことを知ったときでもあったと同時に、真面目にやっていて良かったと思う。そうでなければ■■■はもう既に事切れていていたと思うから。


けど、やっぱり運がなかったんだろう。味方支配領域に迫った所で先行部隊の魔族に見つかり、襲撃に遭った。流石に先行部隊に遅れを取るほど私は消耗していなかった。けど、■■■はそうじゃなかった。十分な休憩を取らせて、それでもキツかったら私が背負っていたが、既に■■■は生きることを諦めていたんだと思う。反撃にはそんな兆候は見られなかったけど、所々言葉を交えた時に感じた。そして、そんな態度が出てしまい、魔族に一撃腹をえぐられてしまった。私は魔砲の力で魔族を一掃し、身を隠せる場所で■■■を治療していた。味方の近くかつ【この作戦を生き残った人ならば生かす価値はあるだろうと上層部は判断しくれる』。なんて思いながら治療をしていたら■■■から治療をやめてくれと頼まれた。

その代わりに最後の頼みを聞いてくれと頼まれた。勿論聞いたけど、その時の私の顔は見せられたものじゃないと思う。血とか涙とか色々混じった酷く醜い顔だったというのに、■■■は『綺麗なお顔ですね』なんて私の涙を拭ってくれた。女性がそんなことをされてしまえば、もっと涙を流すというのも知らずに……。



……私は生き延びた。…………私だけが生き延びてしまった。そして聞いてもしまった。上層部が私達の3隻を囮にし、軍事施設を破壊する作戦を別で立てていたことを。勿論、軍事施設破壊と支配圏の拡大は成され、その先行部隊を生き残った唯一の艦長だからと言われ、魔砲教会全体から、教会尉官としては最名誉の勲章である《碧玉大勲章》を授与された。それと共に私は生きている中で、2度目の二階級特進を果し、教会尉官から、教会准左官の地位と、より大型の艦の艦長の役目を命じられた。


…その後のリアクションは3つだった。

1つ目は単純に私をおだてる事が目的で昇進を祝う奴等。コレは新兵とか教会歩兵部隊が多かったと思う。見る目が無いなと思うのと同時に、純粋な好意に反応ができなくなってしまったと、一人で勝手に落ち込んでいた。


2つ目は心配するやつ。コレは他の艦艇乗組員や艦長、それとあの作戦に従軍した子達からが多かった。………まぁ、悪くはなかった。けど、あからさまに避けているような感じがして、逆に私が居た堪れなくなった。


3つ目は■■■の妹だった。兄である■■■をあそこまで護れたのに何故見捨てたのか、それを聞くために見つかってしまえば、妹さんが罰せられるというのにも関わらず私を殴り続けた。最後には私から話して妹さんが『自首する』と言ったが、私が止めさせした。多分、そんな事をしても■■■は喜ばないだろうし何より私が申し訳なくなった。……独り善がりでわがまままな私の提案を妹さんは受けてくれた。感謝しか無い。



































…………



…そして旧大陸暦1915年10月3日、人員整理と将校不足により、異例の若さで私が、魔砲教会第一艦隊司令官に任命された。それと同時に私は魔砲教会の少将まで昇格した。

昇格祝にと、教会上層部からは色々と報酬をもらったが、最低限だけ残してあとは【パタビア】【バラクシア】【アランダリア】の乗組員達の遺族へと送った。勿論、妹さんにも送ったが、案の定というか……拒否をされた。でも私の懇願で何とか受け取ってもらえた。

…でも、教会襲撃事件により妹さんも失ってしまい、送ったはずの物は私の元へと戻ってきてしまった。

それに妹さんも私の腕の中で息を引き取ってしまったのも相まって、重ねてはいけないのに、■■■が重なってしまい、錯乱状態で襲撃事件に関わった人達を粛清して回った。……その中には魔砲教会の者も居たことから更に半狂乱で粛清していたのだろう。



…そのせいで、漸く私へに微笑みで接してくれた人が増えたというのに、また元に逆戻りしてしまった。

































…けど、いまの第一艦隊旗艦【シュトゥルムヴィント】の艦長である、ナストレ艦長、ガリア副艦長、第二艦隊司令官のアルマリア司令官、第二艦隊旗艦の艦長のリンカ艦長等の働きで、何とか私に対する恐怖を取り除いてくれた。………ほんとうに、感謝しか無い。


でも、みんな『私たちは何もしていない。変われたのは第一艦隊司令の努力である』なんて言って、私の感謝を受け取ってもらえない。……何とか感謝とかを贈れた人もいるけど、ナストレ艦長だけは未だ、受け取ってもらえない。

……抵抗があるのか、それともこの時代に珍しい聖人なのか知らないけど、ナストレ艦長が死んでしまうその前までには、感謝を伝えれたらな、なんて思う。

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