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よっ爪。会えて、別れて。

よろしくお願いします。4話目です。3話目からの投稿間が早いですが、早い時は早く投稿します。でも基本のらりくらり遅いと思います。





『リュウ君。』


 暗闇の場所で声が聞こえた。どこを見ても振り向いても、真っ暗な所。自分は立っているような感覚だけしか理解できずにいる。


 自分の名前を呼ぶ、知っている女の子の声。リュウは返答した。


『リュウ君。ごめんね。ごめんね……。』


 懸命に謝ってくる。何度も。途中で泣き声となっているのが伝わる。


 『大丈夫だよ。』と、リュウは答えた。何故そう言ったのか自身分からずだが、そう答えるべきだと感じていた。


『リュウ君。私の手を。握ってくれる?』


 光もないはずなのに、左右の手がくっきりとリュウの前に現れた。


 ふるふると震えている手のひら。その手を優しく包むようにリュウは握る。


『あったかい……。』


 自分の手と違ってとても冷たい手だった。手を擦り合わせ精一杯温めようと必死になるリュウ。


『ありがとう、リュウ君。……ありがとう。……ありがとう。』


 感謝の意志が言葉と温かくなった手からも伝わる。


 握っている手の隣に新たな手が唐突もなく現れる。女の子の手もだが、手首までしかどうしても見られないから、誰のなのか分からない。


『僕もお願いできる?』


 声で分かったのは握っている手の子と同じ年くらいの男の子だ。


『ワシのも握ってくださらんか?』


 今度はシワくちゃの手が現れる。


『お姉ちゃんのもお願いできる?』


『俺の手も温めてくれ。』


『リュウ。水の礼だと思って頼む。』


『楽になりたい。握ってくれ。』


『リュウ。嫌だと思うけど、助けてくれ。頼む。』


 何人に声を掛けられたのだろうか。その中に自分リュウの事を知っている声主もいるようで、次々と自分の温もりを求めて、手を差し伸べられた。


『リュウ君。皆のも、お願い。助けてあげて。』


 自分はもういらないからと、でも少し名残惜しそうに、リュウの手からそっと、ゆっくりと、リュウの手から女の子の手が離れる。


 時間という概念がある空間なのかは別の問題として、我先にと争うような事はなく、リュウが好きに選び、1人1人じっくりと相手が満足ゆくまで温める。


『ありがとう。』


『わりぃなリュウ。あんがと。』


『すまない。』


『温かい。……ありがとう。』


『ありがとう。これで助かる。』


 ――――。


 どれくらい感謝されただろう。どれくらい行動しただろうか。しかし疲労感はない。


 疲労感は確かにない。が、悲哀感が段々と溢れるのが分かった。溢れたものがやがて、涙として生まれた感じがした。


『リュウ君。辛い事させちゃって……本当にごめんなさい。』


 どうやら女の子はリュウの姿が見えるらしい。自分リュウの姿が見えず触れずなのに、女の子の手が適格に涙ぐむリュウの目を拭いてくれる。いや、拭いてくれるような感覚。


『…………お詫びに明日の約束は無しね。絶対疲れて夜まで眠ってるだろうから。別の日に遊ぼうね。……バイバイ! リュウ君!』


 涙を拭いてくれてから少しの間が流れると、お別れの言葉を口にした女の子。


 !


 リュウは驚く。なぜなら女の子の手が砕けて散り、砂のようにさらさら風に流れるよう消えていったから。


 他の手も同じように砂となり消えてゆく。中にはお別れの仕草をしながら。言葉の感謝も混ざりながらも。


 …………。


 …………。


 皆どこかへ行ってしまった。


 ……自分はどうすればいいだろう? 自分も砂になればいいのだろうか。そんな事を考え始めた。


「…ウ…ャン」


 どこかで声がした。


「リ…ウ……ん!」


 少しずつはっきりと聞こえてくる。声のする方へとリュウは向かう。


「リュウちゃん!」


 それは母親の声。はっきりとした声の方向はいつの間にか真っ白いポツンと点がある。点がやがて円となり、眩しい光となってようやくリュウの身体全体が照らされたのだった。






ありがとうございます。5話目は多分期間長めの投稿となります。できるだけこの物語は続けたいです。

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