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みっ爪。変態。

よろしくお願いします。3話です。長めと残酷的書き込みがあるので苦手な方は戻るをオススメします。




 意識が消失してどれくらい経ったのだろうか。頭の中にある、崩れた無数の断片を1つにまとめるように、首を軽く横に振って様子をうかがうリュウ。


 村の近く遠くで老若男女問わずの悲鳴。動物達も聞いたことのないような鳴き声で四方八方と散らす。


 黒球が衝突した地面と周辺の建築物類や植物が影のように染まっている場所に、絶対靴先でさえ踏み入れず避けて逃げる人達と動物達。その理由は中に入っているリュウが1番に知っている。


 気持ちが悪い。風邪で熱がでている時のような、目まいと吐き気と寒気に襲われる。


 とにかく黒色部分から出ようと足を引きずりながらゆっくりと動かす。綺麗な地面までの距離は決して遠くはない。だが、病的状態でふらつき、終点ゴールまで10倍くらい長く感じた。


 黒色部から抜け出した瞬間、リュウは過呼吸し始める。つまづいたワケではないが前倒し、それでも必死に過呼吸をする。黒色場にいた時に肺に入れていた空気を全部出すように。リュウ自身がそうしようとしているのではなく、身体が勝手にそうしているのだ。


 段々と呼吸が落ち着いてくると、さっきまでの病的状態が嘘だったようになくなる。最後にゆっくりとした深呼吸。そしてリュウは立ち上がり、もう1度周辺の様子を伺う。


「グルルルゥウウ……」


 !?


 怪物モンスターがいつの間にか1体、……いや、数体が存在していた。怪物は人型で何故か複数の穴や所々破れてはいるが黒い服を纏っている怪物達。


 リュウの母親が魔法とアイテムによって魔物や怪物達が、住処や村に近寄れないようになっている為、リュウは不思議に考える。


「グルルルル……。」


 ……考えている暇はないだろう。怪物の側に落ちていた自分リュウの木刀が視界で確認すると、危険を承知で翔けて拾い、力いっぱい握り締めて間合いを取り戦闘体勢。


 絶対襲われる。戦わないと。リュウは目の前にいる相手に集中する。


「グルルゥゥ……がああ!!」


 怪物と視線は合った。ビクビクと不安に怯えるリュウ。


 怪物は、……怪物はリュウを相手にしなかった。と言うよりは怪物は何故か苦しんでいる様子。そのせいなのかリュウを相手にせずにその場からどこかへと走り出した。他怪物も同様にリュウの周りからいなくなる。


 ヒュウウウゥゥゥゥ……


 安堵する余裕もない。空から黒球がまた降ってくる。落ちた場所は教会の方角。


 リュウは心が折れてしまった。黒くなった場所には入ってはいけない。怪物がいる。黒球がいつ自分の所にまた来るか。……自分も逃げた方が良い。『誰かを助けようと村に来たのに』。と、悔しい気持ちを顔に表しながら、木刀を握っている手が、血が出そうな程、チカラを入れて村を出ようとする。


「キャアアアァァァァ!」


 13歩くらい走った時、教会方角から悲鳴が。何人かの悲鳴の中に聞き覚えがある声がリュウを止めた。


 明日遊ぼうと約束した女の子の悲鳴。


 折れた心のリュウは、涙ぐんだ顔になり、それでも『逃げちゃだめだ』と心に訴え、ガクガクと震えている両太ももを叩いて、教会へと駆け始めた。


 途中途中、道を妨害する黒に染まった地面、服を着ている怪物達と遭遇エンカウント。遠回りながらも足を止めず、襲い掛かる怪物には回避と木刀で反撃1回2回だけ当てての逃撃行動。緊張と疲労で息が乱れるがそれ以上悪化する前には教会にたどり着く。


 教会の出入り口扉前は黒球が落ちたようで黒色化している。そしてその部分内に大人子供も含めた数人が倒れ、明日遊ぼうと約束している女の子もそこにいた。


 どうすればいい? 中に入れば具合が悪くなる……。


「リ、リュウ……くん…。」


 女の子が意識があるようで、精一杯リュウに助けを求めていた。


 意を決し、ぐっと気合を入れて黒色内に踏み入れる。視界が2重に見え、身体が重くなる。


 木刀を杖代わりにし、根性で1歩1歩前へ。やっとの思いで女の子に近づき、すぐさま女の子を抱えた。


「リ……リュウく…、あ、ありが、と……。」


 女の子が悲痛ながらも笑みをリュウにくれる。リュウも安心させようと苦しみながらでもニカっと笑い出す。


 女の子が似合っていた赤いスカート服はすっかり黒球のせいだろう、黒色になっている。……そういえば他の倒れている人たちの服も変色している。そこで自分の服も黒色だとようやく気付いた。


「ケホッ。ケホ…。」


 女の子が咳き込む。すると口から鼻から黒い液体が出てきた。少量のようだがこのままでは危ないとリュウは女の子を担ごうと準備するが……。


 脱力気味でチカラが入らず女の子を助けられずにいる。どうすればいい? リュウは焦る。


「い、イタっ! イタイ!!」


 乱暴にしてしまったのか。リュウはさらに焦る。


 その時だった。


 バンッ! っと、リュウの頬部分が何かにぶつかった。黒色部分範囲から、数分前女の子を発見した場所までリュウは吹っ飛ばされた。


 通常の地面にまで飛ばされたリュウはまた過呼吸になる。おまけに顔の衝撃で眼もダメージを負ったのか視界がぼやけてしまいリュウは混乱してしまう。それでも、どちらも回復するまで待たずに女の子の元へと動こうとした。


 !! 


 仰向け状態なのは理解していたから起き上がろうとするのだが、首から下が至る所に針を刺されたような激痛を受ける。そして全身痺れる感覚が強くなってゆく。


 行動できるのは両目だけ。とにかくと女の子を探す。


 ピントが治りかけようとしている視界で見たのは、二重ダブってはいるが教会の形は分かった。


 顔も動かそうとすれば激痛になるので、教会向きで幸いと感じる。


 瞼で細目したり見開きしたりでようやく教会の形の中に女の子が立ちすくんでいるのが分かった。自分がさっき女の子といた位置と同じ所だろう。


「リュ、ウ……ン……。」


 声で間違いない。つらく出す彼女の声。


 グチグチ……グチュッ。ジュルジュジュジュ……。


「アアアァァァアアア!!」


 気色の悪い音。その後にすぐ彼女の悲鳴。どうしたんだとリュウは戸惑う。


「グアアァァ! ギャアアア!!」


 小さい子が発声してはけない大悲鳴が響く。恐ろしい悲鳴でバクバクしてしまった心臓を落ち着かせようと、いつの間にか治まっていた過呼吸が再び始まる。


 瞼を力強く閉じてからの、目開きでピントもようやく治り、リュウはようやく悲鳴の理由を知る事になる。


 女の子の片腕がまるで鍛えられた大人の太い筋肉のある腕となっている。鋭利ある伸びた爪と大人の頭を握られるくらい巨大となった手。片足も同じく大木のような頑丈な形に変化している。


 ゴキッ、バキッ、っと身体内で骨の折れるような音と何ヶ所から血しぶきが起きるたびに、まだ彼女の少女らしい身体の部分が醜い身体へと変化してゆく。


 やがて、彼女の顔のパーツもが崩れてゆく。目玉が飛び出しそうになるくらい大きく、口は裂けるだけ裂け、ポロポロ抜けた歯の部分は新しい殺傷ある歯が生え、耳が角化となり、身体全体が怪物化へと成り果てていった。


「グルルルルゥウウ…………。…………。ガアアァァァァァ!!!!」


 女の子だった怪物モノがリュウを見て咆哮。


「がああああああ!」


 リュウはもう1体の咆哮を聞く。女の子の近くで倒れていた人……だった怪物モノの咆哮。その1体の他に倒れていた大人も子供も、全身の穴という穴と関節部近くから血を吹き出し、骨が砕ける音を奏で、肉が肥大化して醜態へと変貌して怪物となってゆく。悲鳴や『痛いイタイ痛いっ。』と叫ぶ声が入り交えながら。


 その場にいた人全員が怪物化を見届けたリュウ。ただただ思考が働かない。『どうして?』とだけとしか言葉が表せないでいる。


 女の子だった怪物はリュウの事をおかまいなしに、……近づくと蹴りを入れる。さっきまで助けようとしてくれたリュウを。


 ドカッっと鈍い音がリュウの脇腹から響く。同時にはリュウの身体は空の方向へ高く上がるだけ舞い上がり、重力に負けると徐々に落下し始め落ちてゆく。


 バキッ。っと、今度は落下中に怪物の拳がリュウを襲う。全力で殴られたリュウは横一方方向へ飛ぶ。


 飛ばされた先は民家の壁。何もできずにいるリュウはそのまま壁へ激突。壁はリュウを取り込むようにめり込んだ。


 壁と地面は血と内臓物が飛び散り、骨もむき出しに。リュウは蹴り飛ばされた時、すでに気絶していたのだが……。


 リュウは即死した。





読んでいただきありがとうございました。残酷な書き込みはあったと思いますが、遠慮せずこれからも主人公の前で残酷な展開がありましたら書き込むのでご了承ください。

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