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6 危険物

 エルゼマイアさんが執務机の上に広げた地図を見ようと聖女の皆が集まっていた。

 私もそこに、ズン、ズン、と足を進める。なお、擬音ではなく実際にこういう音が鳴っているよ。まるで雪の上を歩くように石の床に足が沈んだ。

 振り返ると私が歩いてきたところはやはり雪面のように靴の跡が。


「すみません、エルゼマイアさん……」

「大丈夫ですよ、もう執務室は引っ越すことにしましたので」


 と彼女が視線をやったのは先ほどまでミノリさんがいた場所だった。様々な植物が繁り、花まで咲いてしまっている。

 あと少しで執務机に到着というところでサキが手を出した。


「そこまでだ、止まれ」

「扱いが本当にひどい……」

「しょうがないだろ、強化人間なんだから」


 そうだけど、この距離だと書かれている文字とかちょっと見えづらいな。……いや、そんなことない。くっきりはっきりと見える!

 どうしてこんな……、ああそうか、強化人間だからだ。


 改めて地図に目をやると、このレゼリオン教国は大陸の東側、結構右上の方に位置していた。西側の大部分が黒く塗り潰されている。きっと魔獣の勢力範囲なんだろうけど、ずいぶん広いな。

 この戦争、本当に人類はかなりの劣勢なんだ……。


 サキも食い入るように地図を見つめていたが、やがて顔を上げた。


「本棚の本を見せてもらっても?」

「どうぞ、ご自由にお読みください」


 手を差し出してエルゼマイアさんが許可すると、早速サキは物色を始める。すぐに一冊手に取って読み出した。

 何を調べてるんだろう? ずっと黙ったまま本を読んでるけど。

 全員が不思議に思っているとサキはパタンと本を閉じた。


「エルゼマイアさん、魔獣が活性化してから今で何年目ですか?」

「十一年目になります。私達人類も頑張ってはいるのですが、すでに多くの土地を魔獣に奪われてしまいました……」

「もっと早い段階で召喚してほしかったところですが、時間的制約というやつですか?」

「その通りです。ですが心配ありません。現在、他の国々でも召喚の儀が行われていますので、これから一気に攻勢に出られます!」


 サキは少し考え事をしてからもう一度机の上の地図を見た。


「今後のことについてですが、少し後にしてください。私達も疲れましたの休みたいと思います」

「え……、あ、そうですよね。分かりました、すぐにお部屋を準備しますのでゆっくりお休みください。今後のことは明日にでも」


 え、もう休むの? でも、突然色んなことがあって皆は疲れているのかも。私はそうでもないけど。サキったら気が利くじゃない。

 じゃあ、私もゆっくり……、あれ? 私、この強化状態でゆっくりなんてできるの? そもそも部屋までどうやって移動すればいいんだろ。廊下とか私の足跡だらけになっちゃうんじゃ……。

 心配したものの、私の移動についてはサキが打開策を考えてくれた。


 ガラガラといかにも頑丈そうな台車が執務室に入ってきた。サキがそれを指差し、私に。


「よし、リナ、こいつに乗れ。壊れる可能性は大いにあるから慎重にな」

「……もう完全に危険物扱いだね」

「実際にそうなんだから仕方ないだろ。いいか、そーっとだぞ」


 ――――。



 台車で運ばれる私を、すれ違う人達が可哀想な人、もしくは危険物でも見るかのような目で見てくる。

 ……いたたまれない。私、早く魔力をコントロールできるようになろう。

 そう心に誓っている間に案内係の人が、「こちらが皆様のお部屋になります」と言った。台車を押すサキ(と台車上の私)、カレンさん、ミノリさん、ユズリハちゃんと順に中に入る。


 部屋の中はかなりの広さだった。ソファーやテーブルセットがあり、壁には高そうな絵画がかけてある。どうやら寝室は隣の部屋になるらしい。

 すごい、ホテルのスイートルームとかってこんな感じなのかな。泊まったことないけど。

 ちなみに、私達がいるここはレゼリオン大神殿というそうだ。レゼリオン教国の首都にある、いわゆる王城にあたる建物なんだって。


 全員が部屋に入ると真っ先にサキが口を開いた。


「とりあえず私の話から聞いてくれ。皆も薄々感じているだろうが、この戦争はマジでやばい」


 ん? 改めて言うほどそんなにやばいの?

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