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3 ギフト

 ――――。

 もう誰も食事に手をつけなくなった。いや、まだミノリさんが一人で食べ続けている。このお姉さん、何気に一番度胸があるのでは? ユズリハちゃんなんてもう気絶してるのに。

 一方で、エルゼマイアさんはテーブルの上で頭を抱えていた。もう当初の厳かな空気はあまり感じられない。


「……私としたことが、こんなミスを犯すなんて」


 後悔の念に押し潰されそうな教皇様をサキがちらりと。


「やっぱり、私達あまり似てないかもしれませんね。あなたは詰めが甘い。よく教皇になれましたね」


 容赦なく追撃をしたと思ったら、サキは「とりあえず」と言った。


「私達のギフトを確認しましょう。生存率はそれで大きく変わってきますし」


 ギフトとは私達が転送されてきた際に授かった各々の才能のことだ。才能というより特殊能力に近い感じだそうだけど。わざわざ異世界から私達が召喚されるのはこれの効果が大きいから。ただ、ギフトにはハズレもあるんだとか。何とかいいギフトが出てくれることを願わずにはいられない。本当に今後の生存に関わってくる。


 レゼリオン神様! どうか私達五人にすごいギフトを!

 とさっき知ったばかりの神様に祈りを捧げていると、サキが呆れたような視線を向けてきた。


「リナ、ギフトはもう私達に宿っているんだって。今更祈っても遅い」

「いや、まだいける。私が認識するまでが勝負だ」

「ああそう、ご自由に」


 私達が喋っている間に、ギフト確認の準備が進められていた。

 石盤を持ったセフィルさんと数人の人達が並ぶ。私達が召喚された広間にもいた彼らは、召喚の儀を担う神官達なんだって。セフィルさんはその機関のリーダーらしい。

 ちょっと頼りない感じのリーダーは、また少し緊張の面持ちで仕事を開始した。


「ギ、ギフトを確認させていただきます。それではカレン様、こちらへどうぞ」


 指名された最年長のお姉さんが前へ出る。これは応援するべきだよね。


「頑張ってください、カレンさん!」

「もうギフトは決まってるんだから頑張りようがないわよ……」


 セフィルさんがかざす石盤が輝きはじめる。やがてこれを覗きこんでいた神官達から驚きの声が上がった。

 おや、何かいいのが出たのかな?

 セフィルさんがこちらに向き直り、代表して結果を発表した。


「カレン様のギフトは、【烈火】です」


 ふーん、炎を操る能力なのかな。皆の反応を見る限りはハズレじゃなくてアタリっぽいけど。

 エルゼマイアさんも席を立ち、セフィルさん達神官と一緒に並んだ。


「【烈火】は火属性の最上位ランク、アルティメットギフトと呼ばれるものです。非常に稀少で、発現したのは幸運と言えます。これでレゼリオン教国の戦力は最低限が保証されましたので、残りの皆様は肩の力を抜いてください」


 教皇様は上機嫌でこう語った。どうやら大アタリだったみたいだ。

 当のカレンさんは少し複雑そうな表情をしている。


「火だなんて何だか危ないわね。まあ、役に立たない力よりはマシか」


 いいなあ、私はその力が欲しかったよ。戦力的に優秀な上に自力で焼き鳥を焼けそう。

 羨んでいるとセフィルさんが次のミノリさんの名前を呼んだ。


「私ですか、私も皆さんに喜んでいただけるギフトだといいのですが」


 おっとりそう言ったミノリさんに石盤がかざされる。すると、再び神官達から歓声が上がった。


「ミノリ様のギフトは、【大地】です」


 エルゼマイアさんは続いてミノリさんの隣に立った。もう喋り出す前から機嫌がいいのが伝わってくる。


「【大地】は【烈火】の地属性版で、同じく最上位ランク、アルティメットギフトになります。ふふふふふ、これはレゼリオン教国の時代が来てしまうかもしれません」


 ……これ、私達というより教皇様のガチャな気がしてきた。

 でも、別に人間同士で戦うわけじゃないよね? それで国の優劣が決まったりするの?

 サキに尋ねると、やはり彼女はその答を持ち合わせていた。


「おそらく戦争にどれだけ貢献できるかで国の立場が決まるんだよ。さらに、その後の百年の世界の形も決定づけてしまう。戦争終結後も活躍した英雄達が残ってくれたら国の地位は確固たるものになるから、カレンさん達を全力で引き止めにくるはず。現実的に二人は強力な兵器のようなものみたいだし」


 アタリが出たら出たで大変ってことか。……カレンさんとミノリさん、終結後に帰らせてもらえるといいけど。

 だが、ミノリさんの方も何だか嬉しそうにしている。


「私、園芸なんかも大好きなんです。こちらでも趣味にできそうではないでしょうか」


 ……おっとりしてるとしか言いようがない。国家レベルで重宝されるギフトを趣味の園芸に。ついでに私達も守ってくださいね。

 次はサキのギフト確認だったが、彼女は呼ばれるより先にもうセフィルさんの前に立っていた。


「さあ、やってください」

「承知しました……。……サキ様のギフトは、【浮遊】です」


 これにエルゼマイアさんと神官達が一斉に声を上げた。しかし、サキの方は納得できない表情をしている。


「私にはそれほどいいギフトには思えないのですが」


 教皇様が、分かっていませんね、といった感じの笑みを浮かべた。


「それは浮遊系統の最上位ランク、アルティメットギフトなんですよ。下位には対象や重量など細かく分類されたギフトが多数連なります。あなたのギフトはそれらの制約を受けません」

「ああ、そういうことですか。なら……、まるで神の力だ」


 サキがニヤリと口元をほころばせると、エルゼマイアさんの方はもう笑いが止まらなかった。


「ええ! 魔獣を退けた後は世界がレゼリオン教国になってしまうかもしれません!」


 この人、うかれすぎてとうとう世界征服を口に……。

 思わず目を背けると、いつの間にかユズリハちゃんが起き上がっていることに気付いた。(戦死率の高さにショックを受けて気絶していた)

 よし、もう大丈夫って教えてあげよう。


「安心して、カレンさんもミノリさんもサキも、すごくいいギフトが出たから私達聖女チームは絶対に大丈夫」

「はい、見ていました……。で、でも、これはもしや、私だけが全く役に立たないギフトが出るパターンではないでしょうか……!」


 ……なるほど、ユズリハちゃんはついつい最悪の事態を考えてしまって、常に悩みが尽きないタイプか。困った子だ。

 少女が再びカタカタと震え出したのを見てサキがため息をつく。


「そのパターンがあるとすればリナだから心配ないよ」

「なんで私!」

「何となく、キャラ的に」

「ひどいな!」


 これで安心できるはずもなく、ユズリハちゃんは「で、でも」とさらにネガティブ思考を展開する。


「私の順番は最後なんです……! こういうのって大体最後にオチがつきますよね……!」


 あーもう、私の順番と代わってあげるよ!

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