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夢物語  作者: moru
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第五章 対話


夢の中に入ると、再び少女の姿が目の前に現れた。彼女は優しい微笑みを浮かべ、まるで彼を迎え入れるかのように手を差し伸べている。彼は彼女の手を取り、その温かさに心が和むのを感じた。


「また会えたね。影と向き合う旅はどうだった?」少女が問いかけると、彼は言葉を選ぶようにしながら答えた。「影を受け入れることが大切だって教えてくれた。少しずつ、自分の心と向き合っている。」


彼女は頷き、少しの間静かに彼を見つめていた。「影は私たちの一部であり、私たちが成長するための大切な存在。恐れることはないよ。」


その言葉が心に響き、彼は思わず深呼吸をした。彼女の存在が、どれほど自分にとって支えになっているかを改めて実感した。影を恐れず、むしろその影を受け入れることで自分自身が解放されていくような感覚があった。


「今日はどこに行こうか?」少女が微笑みながら聞く。彼は彼女の提案に興味津々だった。「夢の中のどこへでも行ける。君と一緒なら、どんな場所でも楽しめる気がする。」


少女は目を輝かせて答える。「それなら、夢の森へ行こう。そこには、私たちの影が隠れている場所があるよ。」


二人は手を繋いで森の奥へ進んでいった。柔らかな光が木々の間から差し込み、幻想的な雰囲気が漂っている。道すがら、彼は周囲の美しさに感動し、何度も振り返っては彼女の表情を見つめた。


「森の奥には、影と向き合うための特別な場所があるの。」彼女が言った。「自分の影に触れることで、何か大切なことを学べるかもしれない。」


やがて、彼らは一つの開けた場所に到着した。そこには大きな鏡が立っており、周囲の景色がその中に映し出されている。鏡の表面は静かに揺れ動き、まるで生きているかのようだった。


「これが影を映し出す鏡だよ。」少女が指さす。「ここで自分の影と向き合ってみて。」


彼は鏡の前に立ち、自分の姿が映し出されるのを見つめた。しかし、その中には自分の姿だけでなく、形のない影も見えた。それは彼がこれまで恐れてきた感情や思い出のように見えた。


「怖がらないで、目を逸らさずに見つめて。」少女の声が背中を押すように響いた。


彼は深呼吸し、意を決して影を見つめ続けた。影は少しずつ形を変え、彼が抱えていた恐れや孤独がその姿を表していく。だが、次第に彼はそれが彼自身の一部であることに気づいた。


「それは、私たちが成長するための大切な一部分だよ。」少女が微笑みながら言った。「それを受け入れることで、あなたはもっと自由になれる。」


その言葉を聞いた瞬間、彼の心の中にあった重荷が軽くなっていくのを感じた。影を恐れずに向き合うことで、自分自身を解放することができるという思いが強まった。


彼は鏡に映る影に向かって手を伸ばした。影は一瞬怯えたように揺れたが、彼の手に触れると、ゆっくりと彼に近づいてきた。そして、影と一体となった瞬間、彼はまるで新たな力が自分の中に流れ込んでくるような感覚を味わった。

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