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魔法使いを夢見る少女の冒険譚  作者: 夢達磨
第4章裏 決別編

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第13話裏 後日談

 王国記念日から二週間が経ちました。


 ビーリスはリトニアに話があると言い、時間を作ってもらっていました。


 嫌な予感がしていたリトニアは、あまり乗り気ではありません。


 ビーリスはバロンを連れ、共にリトニアのもとを訪れました。


 他愛のない挨拶を交わした三人は、その後、王国記念日の話をしていました。


 リトニアは、他の貴族やその関係者が急な訓練に戸惑っていなかったか、何か変化はなかったかと尋ねました。


 そして最後に、アリアたちが古封異人アクィラを討伐したこと。彼らが新たな進化を遂げようとしていること。アクィラとメイドの女性には認識がなさそうだったことを、二人に話しました。


 話がひと段落した後、ビーリスは満を持して口を開きます。


「リトニア国王。本日をもちまして、私は……公爵の爵位を返上させてください」


 リトニアは頭を抱え、うつむきました。


「えぇ!? どういうことですかな? ビーリス公爵」

「それは……」

「それは僕から話そう」


 バロンの言葉にビーリスが語ろうとしますが、リトニアはそれを制しました。


 ビーリスがこれまでの自分の行いに罪悪感を抱いていることは、リトニアも承知しています。しかしリトニアは、一人の友人として、ビーリスをこのまま終わらせたくはなかったのです。


「前にも言ったけど、そう遠くない未来、ハンターギルドと古封異人と決着をつけなきゃいけない日が来る。今回の王国記念日は、そのための予行練習だった。冒険者に、ハンターギルドとして、ビーリス君に悪役を頼んだんだ」


「なるほどですぞ。でも、それとビーリス公爵が爵位を返上することに、どんな関係があるのです?」


「リトニア国王! それは違います! 私は自分自身の利益のために、この国を危険に晒したのです!」


 ビーリスの言葉を否定するように、リトニアは首を横に振ります。


「彼は、演技だったとしても、僕を、この国に危害を加えたことに責任を感じているんだよ」


 ビーリスは胸に手を当て、「違うっ、違うっ」と言葉にします。


「えっと、どちらが正しいのですかな……。しかし、ビーリス公爵は否定されておりますし……」


「僕の言葉が信じられないかな?」

「い、いえ! 決してそのようなことはありませんぞ! ビーリス公爵もお疲れで、混乱されているのですな」


 ビーリスはバロンに視線を向けました。


「私の言葉が信じられないのですか?」

「い、いえ! そんなことはありませんぞ!」


 そしてバロンは両手を頭に乗せ、大声で叫びました。


「わ、私はどうすればよいのだーーーっ!」


 リトニアは玉座から降り、バロンの肩に手を置きます。


「まあまあ、落ち着いて」


 そして小さく笑いました。


「じゃあ僕からも一つ、大事な話をいいかな。まだ誰にも言ってないんだけど」


「はいですぞ」

「もちろんです」


 リトニアは二人から少し距離を取りました。


「僕の未来視が……無くなったかもしれないんだ」


「「えぇっ!?」」


 二人は大きく反応しました。


「何か心当たりがあるのですかな?」


 リトニアは静かに語ります。


 古封異人のアジトの場所を確認するため外に出た時、名も知らぬメイドに襲われ、首を掴まれ血を吸われたこと。その日を境に、未来視の能力が使えなくなったこと。


 最初は偶然だと楽観視していたようです。


「二週間まったく視えないなんて、今までなかったんだよ。だから確信はないけど、もしかしたらってね」


「やはり、私のせいです。なんとお詫びすればよいか……」


「いやいや、別にビーリス君のせいじゃないよ!? 謝ってほしくて言ったわけじゃないんだ」


 深く頭を下げるビーリスに、リトニアは慌てて言いました。


「私にはなぜそこまで自分を責められるのか分かりませんが、リトニア国王がそう言っておられるのです。あまり自分を追い詰めなくてもよろしいのでは?」


「バロン君の言う通りだよ。どんな境地に立たされても、前を向いて歩くしかない。これで僕からの話は終わりだよ。バロン君、先に退出してくれて構わない。お疲れ様。ビーリス君は少し落ち着いてから出ようか」


「分かりましたですぞ。本日はありがとうございました。失礼いたします」


 バロンは一礼し、王室を後にしました。


「さて、ビーリス君。メイドの格好をした女性の話をしたよね。実は続きがあるんだ」

「続き、ですか?」


「あのメイドが姿を消す時に、こう言ったんだ。『次はあなたです。アリア・ヴァレンティン』と」


「そんなことが……」


「古封異人たちは古の魔道具を集めているようだ。もしかしたら、アリア君が身につけているアクセサリーが関係しているかもしれない」


 ビーリスは静かに目を擦り、息を整えました。


「これから言うのは国王としての勅命だよ。ビーリス・グラミアン公爵」

「はっ!」


「アリア君を君の手で守りなさい。そして、この国のために力を貸してほしい」


「承知しました。この命に代えてもアリアさんを守り、主君のために尽くします」


「頼んだよ」


 リトニアは微笑み、ビーリスは王室を後にしました。


「ただいま戻りました」

「おかえりなさいませ、ご主人様」


 屋敷に戻ったビーリスは、コトネに荷物を手渡しました。


「アリアさんはどこにいるか分かりますか?」


 ビーリスの問いに、コトネは庭の方を指します。


「お庭で、グレイス嬢とメリアと鬼ごっこをしております」


 冷静な口調でした。


「グ、グレイスもですか!? そ、そうですか……ありがとうございます」


 ビーリスは一度、自室へと戻ります。


 机の引き出しを開けると、複数ある小型のケースの中から一つを手に取りました。


 それを右胸のポケットにしまい、アリアたちのいる庭へ向かいます。


「父上ーー!」


 先に気づいたのはグレイスでした。


「おぉ、グレイス。走れるほど元気になったんだね」


 グレイスは父の胸に飛び込みます。


 ビーリスは愛娘の頭を優しく撫で、しっかりと抱きしめました。


「グレイスちゃん、見ーつけたーー!」

「アリアお姉様! 見つかってしまいましたわ!」


「あ、先生だ! こんばんは!」


「アリアさん、こんばんは。娘と遊んでくださってありがとうございます。今日はアリアさんにお渡ししたいものがあるのです」


 そう言うと、グレイスは父の胸から離れました。


「なーに?」


 ビーリスは右胸のポケットから小さな箱を取り出し、ぱかりと開きます。


「これです。受け取ってください」


「わぁぁっ! 綺麗なバッジー!」


 箱の中には、円形の中に蝶の紋章がレリーフ加工されたバッジが収められていました。


 アリアはそれを受け取ると、空にかざして輝きを楽しみます。


「これは『爵位推薦バッジ』といいます。このバッジを七つ集めると、国王様から爵位を授けられるのです」


 それを聞いたアリアは、そっとバッジを箱に戻しました。


「どうしました?」

「私、貴族に興味ないから、受け取れないよ」


「それでも、受け取っていただきたいのです。私からの感謝の印です」


「うーん……こういうのは、軽々しく受け取っちゃダメな気がするの」


「では、こうしましょう。このバッジを検問官に見せれば、アリアさんは特別に通すよう、こちらから伝えておきます」


「そんなことできるの?」


「本来、このバッジにそのような効力はありません。しかしアリアさんは特別です。私から伝えておけば問題ありません」


「そんな、悪いよぉ」


 まだ迷うアリアの手を、グレイスがきゅっと握ります。


「アリア姉様、ぜひ受け取ってください。またわたくしと遊んでくださいませ」


「むむっ!? グレイスちゃんたちと遊ぶには、これがあった方がいいの?」


「はい。出入り自由になりますから。なんでしたら、このままあの部屋を使っていただいても構いませんよ」


 ビーリスの言葉に、アリアはさらに悩みます。


「うーん……気持ちは嬉しいけど、ズルしてる感じがするぅ」


 しばらく考え込んだ末、アリアは顔を上げました。


「先生! それ、もらうね! またみんなと遊びたいから!」


 その言葉に、ビーリスは穏やかに微笑みます。


「アリアお姉様! また遊びに来てくださいね!」

「私、グレイスちゃんのお姉ちゃんじゃないよぉ?」


「お姉様はお姉様です」


 そう言ってグレイスは抱きつきました。


「えへへ〜、お姉ちゃんかぁ。懐かしい響きだ」


 照れくさそうに笑うアリア。


「では改めて。受け取ってください」


 ビーリスは再び箱を開き、差し出します。


「わーあ! ありがとう! 大事にするね!」


 こうしてアリアは、爵位推薦バッジを受け取りました。


 また遊びに来ると約束を交わしながら、彼女はグラミアン領を後にするのでした。


遅くなりましたm(__)m

これにて第4章裏が完結となります♪

次回の第5章は『魔王会議編』となります\(//∇//)\

魔王メインの物語となり、新たな魔王も登場します(^^)

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