第7話裏 アリアvsアクィラ
リトニアの帰りが遅いので、気になったアリアは洞窟の出口を出ました。
そこには、黒髪の丸みのあるボブヘアーで、メイド服を着た謎の女性に首を絞められているリトニアがいました。
「ぐぁぁぁっ」
アリアは咄嗟にメイドの女性に攻撃を仕掛けます。
「えいっ!」
アリアの拳は避けられ、空を裂きました。
メイドの女性は避けた際にリトニアを離しました。
その勢いでリトニアは倒れました。
「大丈夫?」
「ゲホッ、ゲホッ……すまない、アリア君。助かったよ」
リトニアの首からは流血しており、何かが刺さった跡がありました。
メイドの女性の右手には、深紅に染まった手袋がはめられています。指先には鋭い注射針のような機構が仕込まれており、首筋に触れた瞬間、針が刺さって相手の血を吸い上げる構造のようです。
手袋を外し、血の量を確認すると、彼女は口を開きます。
「まあ、これくらいあれば充分でしょう。あなた方とはまたどこかでお会いすることでしょう。では、それまでごきげんよう」
言い終えた時、空中から鋭い鎌が飛んできてメイドの女性を襲います。
しかし、彼女は体を逸らす簡単な動きでそれを交わします。
そして、一人の古封異人が姿を現します。
「ほぉ、この俺様の攻撃を見切るとは、やるじゃないか」
「誰ですか? あなたは」
「あぁんっ!? お前が誰だよ!」
メイドの女性は男の声を無視してアリアたちを見つめます。
「あっ! さっきの人!」
アリアが声を出して指をさす先には、さきほど王室で襲ってきた古封異人、アクィラの姿がありました。
「さっきの人だぁ? 俺様はお前のことなんか知らねーよ。つーっか、そこの女、俺様の質問に答えろ!」
メイドの女性は何も答えず、左手から銀色のエネルギーボールを発生させ、攻撃を仕掛けます。
アクィラは鎌で切り裂きます。
そして、彼の背後でエネルギーボールは爆発します。
「チッ、ガン無視かよ。まずはお前から殺してやろうか」
鎌をメイドの女性に向けながら言いました。
「あなたの相手をしているほど、私は暇ではないのです。お子様の相手はまた今度して差し上げますので、今回はさようなら」
メイドの女性は落ち着いた様子で、そう言葉を残すと、バイナリーのようなワープゾーンを作り出します。
「誰がお子様だぁ! この野郎ぉ!!」
アクィラは怒りを露わにして、攻撃を仕掛けますが、当たる直前でその女性は姿を消してしまいました。
そして、ワープゾーンが消えた後に、こんな言葉が聞こえてきます。
「次はあなたです。アリア・ヴァレンティン」
「チッ、逃したか。気に入らねーぜ」
そして、アクィラはアリアの方を見て、「今回はお前で我慢してやろう。死に損ないの国王と一緒に地獄に送ってやるぜ」と言いました。
「あいつはバロン侯爵とレオン伯爵の二人がかりで挑んでも勝てなかった相手だ。僕のことはいいから、アリア君だけでも逃げるんだ!」
「私、強いから大丈夫! 王様、下がっててー!」
ひょいっと軽々、まるで枕でも抱えるように――アリアは国王をお姫様抱っこしました。
「ア、アリア君!? 離してくれないか!?」
「ダメだよぉ、安静にしなきゃー!」
そのまま木の影に隠すように下ろしました。
「ここから動いたらダメだよ!」
「わ、分かったよ……」
アリアの勢いに負けたリトニアは森の影に身を潜めます。
「かくれんぼはしめぇだ。こっから丸見えなんだよ」
「かくれんぼじゃないよ? 安全な所に連れて行っただけだもん」
「はぁっ? 安全な場所に連れて行くなら、もうちょっと知恵を使えや!」
アリアはキョトンとした顔でアクィラを見つめます。
「なんだよ、気持ち悪りぃ。まあいいや、お前の持っている古の魔道具、頂いていくぜ。悪く思うなよ」
「私、そんなもの持ってない!」
アリアは反論します。
「俺様は分かっているからいいんだよ。じゃあ死ねぇ!」
アクィラは鎌を前に構え、アリアの懐に飛び込んで行きます。
「死ねぇぇっ!――なにっ!?」
横一線に振り切った鎌を、アリアは軽々と受け止めてしまいました。
「うぉっ!?」
そして、アリアは鎌を自分の方へ引き寄せました。
バランスを崩したアクィラに、アリアは右拳のストレートアッパーをくらわせました。
空中に浮いたアクィラは、強く地面に叩きつけられました。
「やったー!」
「何がやったーだ。こんなしょぼい攻撃で俺様にダメージを与えることができると思ったのか? 哀れなもんだな」
「そんなぁ……」
自分の攻撃が効かなかったのは初めてのアリアは、かなりショックを受けているようです。
アクィラが再び武器を構えた矢先、彼の頭から足にかけて複数のクナイが突き刺さります。
「『忍法・杭薙喰血』!」
アクィラの背中は爆発を起こし、その場で倒れ込みます。
黒い煙を纏いながらアクィラは、「次から次へとなんだ!」と立ち上がります。
「あ! ツバキちゃん!」
「お待たせしました。はい、アリアちゃんの杖です」
忍び姿のツバキが助けに来てくれました。
そして、アリアは杖を受け取ります。
「ありがとう!」
その一言でツバキは頬を赤らめました。
「どこを見てんだぁっ!」
「うわぁっ!? 誰!」
ツバキはそう言いながらアクィラの攻撃から空中に逃げました。
そのまま鋭い鎌がアリアを襲いますが、またもや片手で止めてしまいます。
「う、動かねぇ、こいつの腕力イカれてるだろ!」
「今から大事な話をするところなの! ちょっとあっち行ってて!」
そう言ってアリアはアクィラごと思いっきり投げました。
「うわぁぁぁぁっ!!!」
アクィラは次々と木を破壊しながら飛ばされてしまいました。
「あのね、ツバキちゃん。あっちの木陰に怪我をしている王様をお家まで連れて行ってほしいの!」
「ひえぇっ!? ぼ、僕なんかが触ったら不敬罪になりませんかね?」
「ふけいざい? 何それ?」
「不敬罪って言うのは、貴族や王様に失礼なことをしたら、国から追放されたり死刑になったりするんですよ」
「へぇ! でも王様も先生も優しいから大丈夫だよ! 何か言われたら私がどうにかするよ!」
アリアの言葉にツバキは戸惑ってしまいます。
「不敬罪って言われたら身代わりの術で逃げればいっか。分かりました。僕が国王様をお城までお連れします」
「ありがとう! ツバキちゃん!」
「アリアちゃんも気をつけてくださいね。では」
アリアは元気よく「うん! ツバキちゃんもね!」と微笑みました。
そして、ツバキは気絶していたリトニアを見つけると、まだ息があることを確認しました。
持っていたタオルを首元に結び、軽く止血をしました。
「体温が下がってきている。急がないと命が危ない!」
リトニアを抱え、木の上を飛び回るように王都の方へ急ぎました。
その頃、アクィラは激突の勢いを受けたまま、大木にもたれかかっていました。
そして、鎌を触りながら――
「いってぇ、くそっ! 鋸歯の部分が折れてやがる。全く、なんなんだあの馬鹿力女、バケモノすぎるだろ」
アクィラは小言を言いながら、飛ばされた方角へ戻って行きました。




