第12話 王国記念日と国王誕生祭
リトニアとビーリスたちは、古封異人の襲撃から一夜明けて無事に戻ってきました。彼らには特に怪我もなく、バロンたちに何事もなかったと報告しました。
リトニアは集まった人々に、先日の襲撃が試練であったことを伝え、急な試練で驚かせたことを詫びました。また、誰一人怪我をすることなく訓練を終えられたことへの感謝も述べました。その言葉に周囲からは安堵の声が漏れ、和やかな空気が広がりました。
その後、『王国記念日』と『リトニア国王誕生祭』のプログラムは順調に進行し、行事は盛り上がりを見せました。
そして、次なる行事として、王室近衛騎士団の部屋の入れ替えを行う『室替の儀』が予定されています。この儀式は騎士たちにとって新たな節目となる重要なイベントであり、さらに会場の期待を高めていました。
玉座に座っていたリトニアは静かに立ち上がると、一枚の紙をメイドから受け取り、それを手に読み上げました。
「これより室替の儀を執り行います。――と言いたいところだけど、少し僕の話を聞いてもらってもいいかな?」
突然の発言に場内がざわつきますが、リトニアが手を軽く上げると、次第に静けさが戻り、貴族たちは一斉に彼へと注目しました。
「ありがとう。僕はこの国の雰囲気や文化、人々の笑顔が本当に大好きなんだ。国民が楽しく安全に過ごせること、それが僕たち王族にとって一番の幸せであり使命だと思う。もちろん、ここにいる貴族のみんなも僕たちの大切な仲間だ。だけど、平和が永遠に続くわけじゃない。それが現実だよね。
これまで先代の国王は王室近衛騎士団の部屋を七室に限定してきた。でも僕は、適任者がいれば部屋の数を増やしていきたいと思う。どうかな? みんなの賛同が得られれば実行に移したいんだ」
リトニアの提案に場内は大きな拍手に包まれました。その響きに、彼は穏やかな笑みを浮かべて続けます。
「君たちが受け入れてくれると信じていたよ。それでは発表するね。新たに『王室近衛騎士団』第八室を設立し、その頭領にベリル・ガルハート子爵を任命、副団長としてルシアナ・ユルガンダ女男爵を任命することをここに宣言する」
二人は即座にひざまずき、力強く言葉を発しました。
「ありがたき幸せ」
その場はさらに大きな拍手と歓声に包まれ、新たな時代の幕開けを祝福するような空気が広がっていきました。
新たな第八室の頭領に任命されたのは、ベリル・ガルハート。彼は黄色い鷹を思わせる鋭い眼光と俊敏な身のこなしを持ち、どこか亜人のような雰囲気を漂わせています。羽毛のように柔らかな金色の髪が肩にかかり、その瞳も金色で、夜でも鋭く周囲を見渡すことができます。普段は寡黙で神秘的なオーラを放ちながらも、内には誇り高く強い意志を秘め、人を寄せ付けない孤高の雰囲気を持っています。
彼が静かにうなずくと、その隣で任命を受けた副団長のルシアナ・ユルガンダが明るい声で応えました。
「はーい! ルシアナ、全力で頑張りまーす!」
ルシアナは草木を思わせる緑色の髪が特徴で、その髪は柔らかな輝きと健康的な色合いを帯びています。彼女の瞳は深い森の奥を覗き込むような神秘的な緑色で、その表情は常に穏やかで見る者を癒すような温かさがあります。優しく包容力のある性格で、誰にでも親切に接し、争いを避けながらも問題を平和的に解決しようと努める彼女は、相手の本質を見抜く洞察力にも優れています。
その後、リトニアは再び紙に目を通し、新たな任命を発表しました。
「では、次に第六室の副団長にエンクリース・マッサーカ子爵を任命する」
エンクリースはすぐに前に出て一礼しながら、得意げな笑みを浮かべました。そして、ぼそぼそと独り言を呟き始めます。
「フッ……やっと俺が副団長の座を手に入れた。この調子でどんどん駆け上がって……いつか、第一室の頭領になった俺にみんなが『きゃー! カッコイイ! 王室近衛騎士団第一室頭領エンクリース公爵様ー!』なんて……ぐへへへ」
その様子にリトニアは眉をひそめ、心配そうに声をかけました。
「エンクリース君、大丈夫かい?」
エンクリースは急いで背筋を伸ばし、涼しい顔を装います。
「ま、まさかー、問題なんてありません! このエンクリース・マッサーカにすべてお任せください!」
彼の少し浮ついた様子に、場内の空気は少し和み、微笑ましい笑いが漏れる中で式典はさらに進行していきました。
「頼もしいね。頼りにしてるよ」
エンクリースは快活な印象の青年で、妄想癖があり、大きな野望があるみたいです。妄想を口に出す癖があり、口が軽くそれがトラブルを招くこともあるそうです。明るい瞳が魅力的で、いつも身軽に動き回っています。髪は短めで乱れがちですが、その無造作さが彼の自由さを物語っています。
お調子者で、少し空気を読まないところがありますが、誰に対してもフレンドリーで親しみやすい性格で意外と子どもたちから人気があります。
呼ばれた三人はリトニアの前に整列し、それぞれが今後の活動や目標について語りました。
そして、最後のプログラムである社交ダンスの時間が訪れます。
玉座から立ち上がったリトニアは微笑みながら、手を広げて声を張り上げました。
「さぁ、今宵はみんなで踊って、食べて、飲んで、そしてこれからの明るい未来のために乾杯しよう! みんな、飲み物は持ったかい?」
その場にいた者たちは、ワインやジュースが注がれたグラスを高く掲げます。
「これからの我々の未来に……カンパーーイ!」
リトニアの掛け声に合わせて、皆が声を揃えました。
「「「カンパーイ!!!」」」
歓喜の声が広がる中、大人たちはリトニアやビーリス、バロンの周りに集まり、和やかに談笑を始めました。一方、食事のテーブルではメルジーナが目を輝かせながら料理を楽しんでいます。
「これ美味しい! あっ! これも美味しい! ソフィア、そこのパスタ取って!」
ソフィアはため息をつきながら、パスタを皿に盛り付けて渡します。
「貴族の娘というのはあれなのかい? ゆっくり食べられないのかい?」
それを受け取ったメルジーナは口いっぱいに頬張りながら答えました。
「だってー! 国王様たちが心配で、食事が喉を通らなかったんだもーん! どれもおいひー!」
その姿を見たソフィアとゼルは呆れたように顔を見合わせます。
「お前、食べるなら行儀よくしろよな。俺たちまで品のないやつに見られるだろ?」
ソフィアが間髪入れずに返しました。
「問題ない。ゼルは手遅れだ」
「なんだとぉ!? そういうソフィアこそ、いつも偉そうにしてるだけじゃねぇか!」
ソフィアは肩をすくめ、冷静な口調で言い放ちます。
「偉そうではない。私は実際に偉いのだ。賢いのだ。天才なのだ。君たち凡人とは違ってね」
「その発言に知性のカケラも感じないけどな!」
軽口を叩き合う三人のやりとりが続く中、突然、優雅な音楽が流れ始めました。
「おっ、始まったな!」ゼルが音楽に気づき、視線を向けます。
リトニアが舞踏会の中心に進み出て、軽く手を打ちます。
「さぁ、みんな、ダンスの時間だよ。パートナーを見つけて、この夜を存分に楽しもう!」
それを合図に、会場は一層賑やかさを増し、次々とペアがフロアに集まりました。煌びやかな舞踏会の幕が上がり、リトニアの微笑みとともに、この宴は最高潮に達していきます。




