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Detective File  作者: blueのイルカ
序章2
5/8

猫と、それれから映画鑑賞

「聞きたいんですが、いつぐらいから、アクアさんと知り合いなんですか? あ、名前はくるめちゃんでいいですよね」

「……しりたいの? うーん……幼稚園……ぐらいかな」

「ええっ、そんなに前からですか? それなら、仲良しなのも納得ですね」

「……そう、みえる?」

首をかしげなら、私を見るくるめちゃん。その、仕草がとても可愛らしかった。思わず、撫でたくなってしまう。

「はい、見えますよ。羨ましいと思います。私も、昔から、何度も顔を合わせたことはありますけど、アクアさんのことは、ほとんど知りませんから」

「……ただの、お人好し。それだけ……わたしが、助けないと……危なっかしいから」

くるめちゃんは真剣なまなざしで答える。そうしながらも、洗う手は一切止まっていない。私は、話すたびに一旦手を止めていた。食器類をそのまま乾燥機に入れ、スイッチを押した。これで、作業は終わった。キッチンタオルで手を拭うと、両親から連絡は、ないと分かりつつも、スマホをポケットから取り出し、メッセージがないか確認する。

「……まだ、飛行機の中ですかね。仕方ありませんね、今日は、もうここに泊まるしかないですよね」

この家に泊まるのは構わないのですけど、心が追いつかない。ママとパパがいきなり決めてしまうことには慣れていますが、いきなり旅行に行くと言い出すのはさすがに驚きです。

それを、察したのかくるめが声を掛ける。

「……しんぱい、だよね。とりあえず……わたしが……使わせてもらっている……部屋に、案内する」

小さな手で私の手首を掴むと、引っ張る。思っているよりも力が強い。その勢いのまま、部屋まで連れて行かれる。

「……アクア、七海を……部屋に連れてく」

「ああ、そう。頼んだよ」

本の間から顔を覗かせて、返事を返すとまた、本に集中する。

くるめちゃんが案内してくれたのは、台所から、一番奥の部屋。途中に部屋が二つあった。一番前の部屋が客間となっていて、今日私が寝る場所らしい。その隣は、アクアの部屋だそう。部屋には小学生の書いたような字で、AQUAとやや古くなった木のネームプレートにあった。くるめちゃんの部屋には、黒猫のレリーフの真ん中にくるめと名前が掘られていた。こちらは、新しそうに見える。猫が好きなんですかね。

くるめが、部屋を開けると学習机の上にやや小型のデスクトップのパソコンとモニターが、あった。後は、2段組みの本棚と猫のグッズや写真立てなどの、小物を置く棚に木枠のベッド。部屋の隅には、折り畳み可能な椅子が二脚立てかけられていた。こちらも、猫の足跡のような模様がデザインされている。他にも猫のカバーの着いた丸型のクッションなど、たくさんの猫グッズで溢れていた。

「へぇぇぇ、たくさんの猫グッズですね。見ても、いいですか?」

「……いいよ。くれぐれも、慎重に……扱って……あげてね」

私が、気になったのはいかにも高そうな猫のオブジェ。さすがに、手に持つのは落としてしまいそうで、そのまま屈んで見つめる。本当に精巧にしていて、見事に作られていた。その右隣には、かまくらの中でコタツに座っている少女の膝に白猫が寝そべっているスノードーム。とても癒される光景だ。そして、さらに右隣には白猫の写真と黒猫の写真が写真立てに二つ置かれている。もしかして、くるめちゃんが飼っている猫なのかも。

私は、振り向いて聞いてみる。

「ねえ、この子達は、どんな名前なのかな?」

「えっと、白いほうが……クリームで、黒いほうは……ショコラ」

どちらの猫の名前もおいしそうで思わず唾を呑み込んでしまう。

「へ、へえ、何だかおいし――食べ物の名前の様な気がしますねえ」

「……ぜんぜん、ごまかせてない……でも、その通りだから」

全然気にしてないので、私はそのまま、部屋の観察を続けることにする。


一方、映画を見ていた二人組は黒い箱に入っている高級クッキーと、美波はホットミルクティー、莉音はジンジャエールを飲みながら鑑賞していた。ちなみにそのお菓子は今朝の理事長室でアクアがもらったはずの物だが、さすがに一人では食べきれる量ではなかったので、半強制的に食べてもらっている。正確には『どうせ、一人では食べられないでしょうから、寄こしなさい。後、紅茶も準備、お願いね』と、強引に取られた。飲み物は、ポットと紅茶セットだけを置いてやった。レモンを用意するのは面倒で、コーヒー用のミルクと砂糖をついでに置いた。さすがに、文句を言うことはなく、自分でやっていた。

比較的短い映画だったため、そろそろクライマックスを迎えようとしていた。場面は主人公が自分の正体と自分がやった罪を自覚してしまったところだ。

ゾンビであると知ってしまった青年は、青ざめてていた。それに、何人もの罪のない市民を殺していたことに動揺を隠すことができなかった。

「う、嘘だ――俺が、そんなことができるはずがない」

少女は悲しむような、憐れむような顔で彼を見つめる。

「もう、言い逃れできるとおもっているのかしら。後ろをみなさい、それが答えよ……っ!!」

彼は、おそるおそる、家の中を確認する。そこには、首を嚙み千切られて死んでいる両親の姿があった。床は両親の血液で、赤黒く染まっていた。

「うそ……だろ。これを、俺が、やったと言うのか……」

青年は、膝からくずれ落ちて、涙を流していた。

「すまない……すまない……」

それから、エンドロールが流れ出す。

俺は、読書を中断されて読む気が失せてしまったので、結局映画を最後まで、見てしまった。あまり、ゾンビの設定が生かされていないが、実に王道的なミステリーだと思った。

「この映画、ゾンビにする必要があるのか? 関係なかったじゃん」

「その通りだよね、普通のミステリー映画だったね」

二人とも、俺が思っていたことと、大体同じ事を思っているようだ。普段だと、美波はここら辺で家からの迎えの車で帰る時間だ。これでも、一応お嬢様だからな。莉音はここの3階に部屋を借りているし、くるめは事件の解決をするために、徹夜で事件の解決をするための優秀な人材だ。なので、おじさんから、特別に部屋とやや高性能なパソコンを与えられている。正直、俺よりもいいコンピューターなんて羨ましい。

そんなことを、考えていると、大きなブレーキ音が聞こえる。停車させるのが、全く上達しない運転手さんである。何度かは、乗ったことはあるが、それが発覚してから、絶対に乗らないと心に決めている。

「もう、迎えに来たようね。それじゃあ、帰るから、二人ともおやすみなさい。くるめちゃんにも、挨拶したかったけど……それじゃあ、また、明々後日ね」

「おやすみ!みーちゃん!!」

「ああ、おやすみ。学校でな」

それぞれ挨拶を交わすと、美波は玄関を後にして帰って行った。さすがに、片づけはしてくれている。紅茶セットだけだったが。ポットは俺が片付けることになる。

「あたし、部屋に戻るからさ、じゃあねえ」

莉音もそう言うと、玄関を出ていった。

俺は、手早く食器を洗うと、乾燥機にいれずにそのままにしておく。

それから、リビングのテーブルを綺麗に拭いた。

読書をする気がないので、とりあえず、地上波にチャンネルを切り替えるが、特に、見たいと思う番組は放送されていなかった。時間はもうずぐ10時になるので、お風呂にでも入って寝るか。

そうして、自分の部屋で着替えを準備する。でも、すぐには入らず湯船にお湯が張るのを待ってからだ。なので、少しばかり時間を持て余していた。

その時間を潰すために、部屋でラジオを聞くことにする。

「明日の天気をお知らせします……明日は全国的に晴れるでしょう……」

そうか、明日は晴れるのか。それなら、自転車でも買ってくるか。今の自転車は、かなり錆びていたので、変え時だったんだろう。おじさんは、たぶん酔いつぶれて車の運転は無理そうなので、バスを使って明日はショッピングセンターまで、行くことにする。バス停は学校近くにしかないので、歩いて向かうことになる。

そろそろお湯もたまったことだろうし、お風呂に入ろう。

シャワーで軽く汗を流し、湯船に浸かる。

「はぁぁぁぁ……いい湯加減だ」


その頃、すっかり、猫に癒されたところで、私は、ベッドに座っていた。くるめちゃんは、カタカタとパソコンで作業をしていたので、声をかけていいのか分からない。

すると、くるめちゃんは手を休めず私に話しかけてくる。

「……もうすこしで、終わるから……待ってて」

「何をしてるんです?」

「……日誌。記録は大事だから」

「そうなんですか。毎日、これを、書くんですよね。大変なんでは、ないんですか。私は、さすがに、できませんね」

何度か、日記を書こうとしたことはあるのですが、続かないんですよね。

「……慣れたら、たいしたこと……ない。よし、これで……終わり」

くるめは、立ち上がると軽く伸びをしてから、言った。

「……まってて、アクアに報告……してくる」

くるめは、部屋を出る。必然的に、一人になる。やることがなくなり、どうしようかと、考えていると、スマホが震えだし、数秒して、すぐに止まった。

ポケットからスマホを取り出して、確認する。

【七海、すぐに連絡できなくて、ごめんなさいね。丁度、ホテルに着いたので、今、落ち着いたところよ。それにしても、こんなに時間がかかると、思っていなかったから、すっごく疲れているの。せっかく、夕食は高級ディナーの予定のはずだったのだけど、今宵は、コンビニで買ってきたカップラーメンと、おにぎりで我慢しないといけないのよ。もう、疲れたので、寝ますので、返信は、明日にお願いね】

その母親の言葉通りに食べ終わって、割り箸が突っ込まれたカップの器とくしゃくしゃのビニール袋の写真がメッセージの次に添付されていた。でも、これで両親が旅行に出かけていることに、確信を持てた。すると、安心したのか、欠伸が出た。でも、寝るのはせめてお風呂に入ってからにしたい。そう、思っているのだが、眠くなるのを我慢することが、出来なかった。そのまま、ベットに体を、横にした。


部屋を出た、くるめはリビングに向かった。でも、アクアの姿は見当たらない。時間帯からして、お風呂ぐらいしかいそうな気がしない。脱衣所に入り、ガラス戸を軽く叩いた。

「ん? くるめか。一体、どうしたの? ああ、日誌のことか」

納得したように、手で、水を叩く音がした。

「……そう、だよ。わたしも、はいりたいから……もう、出て」

「ああ、もうちょっとしたらな。もう、少しで、読み終わりそうなんだ」

「それは、だめ。ぜったい、一時間は、過ぎるから」

くるめの言う通りなので、俺は反論せずに、従うことにする。

「分かった。10分ぐらい、待ってくれ」

「……うん、それじゃあ、へやで、まってる……出たら、声かけて」

そう言うなり、脱衣所から、出ていく音がした。くるめに、従って、風呂から上がった。そうして、体を洗い始めた。


くるめが、部屋に戻ると、寝息を立てて、ベットに寝ている七海の姿が。それを確認したくるめは、起こさないようにタンスから、着替えを取り出して、そっと部屋を出た。そうすると、アクアがお風呂場から、出てきていた。肩には、タオルをかけている。

「あれ……どうしたんだ? まあ、いいか。それより、明日は自転車を買いに行くからさ、街まで、いくんだけど、くるめは、用事でもあるのか?」

「……予定は、ない。だから、一緒に……いっても、いい」

「そうか。それなら、七海にも、伝えないとな」

「……ねてた……から、明日にするべき」

「そうなのか。じゃあ、もう寝るからな、おやすみ」

「……おやすみ」

俺は、キッチンに、くるめは風呂場に向かった。

冷蔵庫からペットボトルの水をコップに注ぎ、飲み干すと、部屋に入った。

それから、ベットに横になり、布団をかぶり目を閉じた。

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