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Detective File  作者: blueのイルカ
序章
1/8

プロローグ1ーA

今年から高校一年生となった、俺は、朝食の準備をしていた。

今日はとりあえず、トーストとスクランブルエッグ、ソーセージ。飲み物は紅茶だ。

甘いものも用意したいが、あいにく時間が足りなかった。

いつも、学校に行くときは、五時くらいに起きるのだが、春休みのせいで生活リズムが狂っているらしいので、今日起きたのは六時だった。

このままでは甘いものを朝に用意できなくなる。それだけは避けたかった。


「おはよう。今日から学校だな」


いつもは朝早くからなかなか起きない叔父さんが、新聞を読みながら言った。


「おはようございます。いつもこの時間に起きたらどうかな?」

「…そいつは、無理だ。野暮用があるからな」


叔父さんはだいたい眠るのは4時で、起きるのはいつも昼過ぎだ。何をしているかといえばもっぱらテレビゲームだ。俺もやったりはするが夜中に起きてまでやろうとは思わない。やってもいいのだとは思うけど、そうすると朝食が食べれなくなるからだ。それだけは嫌だった。


出来上がった朝食をテーブルに運んでいると、テーブルに置かれていたスマホが震えていた。おそらく、チャットアプリからのメッセージだろう。席に座りスマホの画面をスワイプして確認する。


【おはよう、アクア。私はもう学園にいるから、着いたら理事長室までお願いします】

【はい、わかった】


一言だけメッセージを打つ。それから、探偵事務所当てに依頼があるかの確認をする。新しい依頼は数件あったがだいたいが浮気調査の依頼だった。特に叔父さんが解決するような依頼はなかった。なので、俺が解決できそうな依頼を探す。


【へクレール洋菓子店 : アルバイトの子が怪我をしてしまって一週間ほど手伝いを募集したい】

【kojima商店 : 落書きを消したいので、人手がほしい】


これは探偵の仕事ではない。とりあえず洋菓子店の依頼は受けるしかない。


スマホをテーブルに置くと朝食のトーストに噛り付いた。


叔父さんと、他愛ない話をしながら食事を終えるとキッチンに食器を持っていき水に漬ける。

時計を見ると、ちょうど七時半。学校が始まるまでまだ一時間ある。ここからだと、自転車でだいたい二十分程度だ。

もう少し、ゆっくりしたいが人ごみの中クラス確認はしたくないので、早めに家を出ることにする。


「いってきます!」

「おう、がんばれよ」


がんばってほしいのは、叔父さんのほうだよとおもいつつ外に出て、階段を降りて、自転車が置かれている駐車場へと、向かった。

自転車を走らせているが、早い時間のためか人はほぼいない。

これならもっと早くつきそうだな。

しかたなく、通りにあるコンビニでもよろう。

俺が、この高校を選んだのは通学がしやすいから。ただ、それだけ。

コンビニ入り、クリームパンだけ購入し、店を出る。

自転車を再び漕ぎ出すと学校に向かう。

何事もなく、駐輪場に自転車を止め、校門近くにある掲示板を見に行く。

そこには、入学おめでとうと大きな字で書かれており、その下にクラス順に名前が書いてある。

当然人はいないだろうと思ったとおり、俺一人。そんなことはどうでもいいとして、自分の名前を探す。

どうやら、三組のようだ。

それを確認して教室に向かった。

一年生の教室は3階の東棟と西棟にそれぞれあり、5組までは東棟。6組からは西棟になる。

あまりに早く来すぎたので、リュックを机に置くと、教室を出て、理事長室に向かう。

理事長室は、西棟1階の最奥にある。

到着すると、ドアをノックした。

コンコン。


「…誰? まあ、入りなさい」

「俺だけど、仕事中だったか?」

「……! なーんだ、アクアだったんだ。せっかくだし、休憩しちゃおうっと」


彼女は、小学校から俺と同じ学校に通っていて、クラスもだいたい同じだった幼馴染だ。名前は石川美波。とても人懐っこくて、優しい。気品も良くまさにお嬢様と呼ぶにふさわしい。

美波は、ソファにゆっくりと腰かけるとあらかじめ、用意してあったカップに紅茶を注いだ。

俺は反対側のソファーに座る。


「ふぅ、おいしい。…それにしても、よく頑張ったよね。私が付きっきりで教えたかいがあったね」

「え? そうだったか? プリントだけ渡して、俺の家には一度しかこなかったが」

「あははっ、冗談だよ。本当は行こうとしてたんだけど、色々あったからねぇ」


こいつは笑っているが、実際は本当に大変なことが起きていた。この学校の理事長が亡くなったのだ。普通なら、親が理事に就くはずなのだが、両親は離婚している。母親は理事長はやりたくないのか娘に押し付けたのだ。


『わたし、やりたくない…』

『あなたに、拒否権はないのよ。やってくれたらお小塚いもたくさんあげますよ』

『お、お金の問題じゃない。まだ、学生だしっ!』

『それは断る理由にはなりません』

『え? そんなのやだぁ。ひどいっ…』


結局母親の言うことに従って理事長代理を引き受けることになった。


「わたしに逆らったら、退学にできるんだよ。ね? アクア」


悪い笑みを浮かべる美波。


「いやだ、やらねえよ」

「これならどう? アクアの好きなお菓子よ」


そうやって、目の前のテーブルにある黒い箱を開けた。


「!? 卑怯だぞ。これ、ブリアンクッキーだろ。こんな物を貰ったら引き受けるしかないだろ」


ブリアン社が開発したクッキーで、一個の値段が300円もする高級菓子である。

俺は、気づいたら小袋を手に取りクッキーを食べていた。

サクッとしていてほんのり甘い。


「…単純だね」


彼女はあきれた顔をしている。

俺はそのままクッキーを紅茶で流し込む。


「美味い…! この口どけのいい食感に、そこまでしつこくない甘さ。最高! もう、こいつは俺のものだ。返さないぞ」

「契約成立ね」

「ああ、特にやることもないからな。手伝うのは全然いい」

「手伝ってもらうのは、新しい部活の副部長!」

「部活? めんどいなぁ」

「その名も『ミステリークラブ』よ。まずは、メンバー探しね。私と、りおん、くるめ、アクア。とりあえず四人は決まってるから、後一人ほしいのよ」

「そうか。でも、検討つかないな」

「それは、理事長権限でどうとでもなるから気にしないで。それよりも、今日の学校集会で新入生代表として挨拶しないといけないの…でも、あんまり目立ちたくないからアクアがやってくれない?」


ブレザーの左側のポケットから、二つ折りの紙を俺に手渡した。

俺は紙を広げると内容を確認する。


『ただいま、ご紹介されました石川美波です。

入学したばかりの私が言うのもおこがましいのですが

一日一日の日々を大切にしていきたいです。

わずか、三年のこととはいえ、この学園に入学できたことを嬉しく思います。

諸先輩方、先生方もどうぞ、よろしくお願いします。

新入生代表、石川美波』


「ま、せいぜい頑張れとしか言えないな」


そのまま折り畳むと、テーブルに置いた。


「そろそろ休憩も終わりにして、体育館にいくわよ」


彼女は立ち上がるとテーブルに置かれた紙をブレザーの左側のポケットに入れた。

俺も立ち上がると、先に理事長室を後にする。


ガチャン。


理事長室を施錠したのを確認して、体育館に向かう。

理事長室近くの出入口から出て東棟の傍にある体育館に行くほうが近いのだが靴に履き替えるために下駄箱まで戻るのが面倒くさいので遠回りになるが西東と東棟を一週するように歩く。


「しっかし、お前の制服見てると高校生になったんだと実感するな」

「もしかして、照れてるのアクアさん?」


前を歩いていた彼女がくるっと回転して振り向き、いたずらな笑みを浮かべる。


「は? それはない」

「そうなの? 私はどっちでも気にしないけど…やっぱりアクアの可愛いさには負ける。ぎゅっって、していい?」

「かっ、かわいいは禁句だ! 抱きつくのは…。いいけどっ!」

「あははっ、えいっ!」


アクアの後ろから両手を首に巻き付ける。


「ね、ね? 少し大きくなったの分かる? 服の上からだから分かりにくいと思うんだけど」

「セクハラをするんじゃない。そもそも、女の子がすることじゃないだろ」

「あ、一応私のこと女の子としては見てくれてるんだ。こうしてると、安心するな」

「もう、好きにしてくれていい」


からかうのは止めてほしいが、弱音を吐かずに頑張っている姿を知っているのであまり強く言えない。


「ありがと、アクア。なんか、上手くやれそうかも」


俺から離れて彼女は前を歩き出す。その後ろをついて行く。西棟と東棟の間の渡り廊下を通ると生徒もちらほら増えているのが目に取れた。リボンやネクタイの色が紫なので、恐らく一年生だろう。ちなみに二年生はオレンジで、三年生は赤色だ。

通り過ぎると男女共に、ちらちらっと好奇な目で見られる。美波は黒髪の長髪で顔は真っ白くて凛としていて美人である。俺の容赦は短髪で目はクリっとしていて美波曰く、庇護欲を刺激するらしい。美波は見た目は大人しく見えるため、皆騙される。昔は、本当に大和撫子の様に大人しかったが、父親が死んでから、母親とはあまり上手くいかなくなった。一人の時間が増えるにつれて、今のような感じになった。

俺は、自分の顔ははっきり言って嫌いだ。この先、好きになれるかもしれないが、そんな未来は全然浮かばない。生まれ変われるなら、もう少し男らしい顔にしてほしい。今のところ生活には苦労させられていないのはありがたかった。


「…ア、ねえ、聞こえてる?」


考え事をしていたせいで聞き逃したらしい。

顔を上げると目が合ってしまい、つい観察してしまう。いや、見とれていた。というか、なんか、納得いかない。反則だろ。


「え~と、反応してっ!」

「ぐふぇっ!?」


お腹に何やらダメージを受ける。


「なにすんだよ、みなみ! 痛いのですが」

「口調まで、変わってるよ。早く、席に座ろ。特に決まってないから一番前の席に行こ」


俺の、痛いと言うのは無視されてそのまま腕を引っ張られて連れて行かれる。



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