ルビの間違った使い方
ある日私の躰が乗っ取られた。
「うわー懐かしいなぁ、この時代」
「へぇ~、ここがお父が子供の時の時代なのね」
「いやいや、大学生ぐらいだぞ」
「ふ~ん、まあいいわ。ま、兎に角色々見て廻りたいな~」
「お父さんはうち系ラーメンが食べたいな」
「え~?すい~つがいいな。すい~つすい~つ!」
「いいや!ラーメンだ!」
「そんなん何時でも食べれるじゃんすい~つがいい
「出てけよ!お前ら!」
あー嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ自由じゃないことがこんなにもどかしいなんて・・・あれ?
「ああぁぁぁ!体が!元に!戻った!」
こうして私の不思議な体験は終わったのだった。
以下リメイク
大学生の私は或る休日街を歩いていたら突然体が動かなくなり、そして急に喋りだした。
「成功…かな?」
あれ?何言ってるの?手で口を押さえようとしたけど動かない。
(動いてー!)
と心の中で叫んだら、体がびくっと震えたような気がした。
「うわ、ビックリした。誰? 叫んだの」
(そういうあなたは誰よ)
「あ、もしかしてこの体の人? ごめんね勝手に体取っちゃって」
(説明してよ。これ何?どういうこと?)
「あのね。実はね。薬を使ってお母さんに会いに来たの。」
薬? お母さん? 全く意味が分からない。
「それでね、お父さんも一緒に来てる筈なんだけど」
(お父さん?)
「うーん、どこ行ったんだろ」
知らないし、そいつにも体に入られたら嫌だなーと思っていたら電話が鳴った。
私の体を乗っ取っている子―――何て名前だろう―――が勝手に電話を出した。知らない番号だなぁ。
(あ、勝手に出ないでよ)
と言ったけど遅かった。
「もしもし、秋だよ」
『お、秋。無事過去に来られたみたいだな』
「あ、お父さん? うん、美味くいったんだね」
『で、今からそっちに向かおうと思うんだけど、場所は分かるか』
「えっと。お姉さんここ何処?」
(……R町の駅前)
正直その父親なる人物とは会いたくないけど、正直に答えた。流石に娘(が乗り移った私)に悪さはしないと思いたい。
『お、じゃあ今から行くわ』
数十分後
「お父さーん」
「おう。無事合流できたな。はっは、よかったよかった」
「ねぇ、秋、早くお母さんに会いたいんだけど」
「そうだ、そうだったな。それなんだが」
「うん」
「今乗り移ってるその人が母さんなんだ」
(えぇ!?)
「えぇ!?」
つまり目の前のこいつを乗っ取ってる奴が未来の夫で、私を乗っ取ってるアキって子が未来の娘ってこと? なんか人生のネタバレを食らった感じだ。
「お母さん、秋ね、秋ね、大きくなったんだよ。一人で小学校に行ってるよ。勉強頑張ってるよ。ねえ何で死んじゃったの。ねぇお母さん」
うわー急に何? てか死ぬ? 私が? あ、ちょっと泣かないで
「あー…すまんな秋。その母さんはまだ秋を生んでないから、言っても解らないんだ」
「そんなぁお父さん酷い」
「ごめんなぁ、秋。薬の量が多すぎて昔に戻りすぎたちゃったわ。弘子ごめん。娘に勝手に体使わせちゃって」
名前を知ってるってことは本当に未来の夫なんだろうなあ。ってか一生独身を貫いたら今日の出来事はどうなるんだろう…と考えていたら
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眩暈がした。
「あれ? 私」
何してたんだっけ。
「おーいヒロ、大丈夫かー?」
「え? あ、うん、大丈夫、大丈夫」
あ、そうだった。今日は休日。友達とカラオケに来てたんだっけ。
目の前の事すら忘れるなんて…私、疲れてるのかな?
その後、私は大学の研究室で或る男と出会う。そいつは天才肌ではあるんだけど生活面が全然駄目で、何となく世話をしていたら何となく結婚してしまい、そしていつの間にか娘を生んでいた。
そしてその数年後、大きな事故に巻き込まれた私は……