月曜から金曜まで
月曜の朝、いつも通っている道が工事のため金曜日まで通れないらしく、迂回することを余儀なくされた。
高石はいつもは通らない道を歩き、バス停の前を通り過ぎた。バス停の前のベンチには中年の女性が座っており、じっと携帯の液晶を眺めている。
その女性の隣に、小さな子供の足があった。
足が一本、ベンチの上にぽん、と置かれている。
赤い靴を履いた子供の足。
人形の足だろうか。そうに決まっている。付け根がきれいに丸くなっていて、本物の足が切断されたようには見えない。本物の子供の足にしては今にも折れそうなくらい細く、色も黒ずんでいる。しかし、膝もすごくリアルに創られている。
なんであんなものをベンチに置いているのか、と思いつつ、高石はバス停を通り過ぎた。
火曜の朝、バス停の前のベンチには昨日と同じ女性が座っていた。やはり同じく携帯をいじっている。
その隣に、二本の足が置かれている。右足と左足だ。
あの女性は人形師か何かだろうかと高石は思った。
水曜の朝、つい気になってベンチを見てしまう。同じ女性が携帯をいじっている隣に足が二本と腕が一本置いてある。
木曜の朝、足が二本と腕が二本。両手と両足が揃った。
金曜の朝、ベンチを見た高石は息を飲んだ。
首のない胴体に、両手と両足がちゃんとくっついていた。頭がない体は薄汚れた黄色いティーシャツと茶色の短パンを履いてベンチに足を投げ出して座っている。
女性は相変わらず携帯に熱中していて、隣に座る頭のない子供になんら関心を示していない。
だが、高石は見た。黒ずんだ細い指が、女性の服の裾をしっかりと掴んでいるのを。
高石は足早にベンチの前を通り過ぎた。
あの女性が頭のない子供とどういう関係なのかは知らないが、高石には関係ないので気にしないことにしよう。
だって、今日は金曜日。工事は今日までだ。明日からはもうこの道を通らない。
おそらく、明日は頭がくっついて、完全な子供が出来上がるのだろうが、高石はそれを見なくて済む。
頭が最後で良かった。どんな顔をしているのか見なくて済む。見たら、忘れられなくなるかもしれないから。
明日、頭がくっついた時に何が起きるのか。明日以降、完全に人間の形になった子供が女性の隣で大人しく座ったままでいるのか。何もわからない。けれど、高石には何も出来ることはないしするつもりもない。
あの女性が何をして、これからどうなるのか、高石にはわからない。関わるつもりはない。
土曜日に何が起きても起きなくても、高石にはどうでもいいことだ。