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 用事があって通りかかった隣町で、妙なものを見た。


 狭い道の向かい合ったセメント塀と黒渋の板塀。

 セメント塀から人間の形をした真っ白な何かが抜け出そうとしている。頭と肩が塀から出ていて、全身抜け出そうとするようにもがいている。

 だが、うまく抜け出せないようだ。

 何故なら、向かいの板塀からにゅうっと突き出た黒い手が、白い何かを抑え付けて、まるでセメント塀の中に押し戻すようにぐいぐいと力を込めているように見える。

 そのうち、黒い手に押し負けたのか、白い何かはセメント塀の表面に埋没していった。

 すると、黒い手もするすると板塀の中に戻っていった。

 変なもん見ちゃったなぁ、と思った高石は、その道を通るのは流石に気が進まなくて、一本向こうの通りを通った。


 そんなものを目撃した数ヶ月後、再び隣町に行く用事が出来て、高石はうっかりその道に通りかかってしまった。

 果たして、セメント塀からはやっぱり白い人型の何かが抜け出そうともがいており、向かいの黒渋の板塀から突き出た長い黒い手がその白い何かを必死に押し戻そうとしていた。

 白い何かは前回見た時よりももっと大部分が塀の外に出ていた。前回は頭と肩だけだったのが、今は腰まで塀の外に出ている。もう少しで、完全に抜け出せそうだ。

 黒い手はその白い何かをぐいぐいと押し戻し、外に抜け出ようとするのを防いでいた。

 結局、今回も白い何かがセメント塀の中に押し戻されて終わった。黒い手は役目を果たしたように板塀の中に戻っていく。


 やっぱり一本向こうの道を通りながら、高石は考えた。


 あれは、出てこうようとしている方と、出すまいとしている方の、どちらが「良いもの」なのだろうか。


 あの白い何かが外に出てきた方が、良いことなのか。

 それとも、あの白い何かが外に出るのを防いでいる黒い手の方が、正しいのか。

 白い何かが完全に外に出たら何かが起こるのか、それは良いことなのか悪いことなのか。それとも、何も起こらないのか。

 あの黒い手は、良いことを邪魔しようとしているのか、悪いことを防ごうとしているのか。


 残念ながら、目で見ただけでは何もわからないし、判別できない。


 ただ一つ、高石がはっきりと確信できるのは、たぶん出来ればもう二度と、あの道に近づかない方がいいということだ。





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