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ウィルスではない





 パソコンの電源をつけると目の前に花柄の画面が広がった。


「……は?」


 思わず硬直して、高石は画面を凝視した。可愛らしい花柄の壁紙は女子のパソコンなら違和感がなかったであろうが、これは高石の自室のパソコンだ。壁紙は初期設定の青い空の写真のままいじっていない。

 デスクトップ型のパソコンだから持ち出された訳はないし、そもそもこの家でパソコンを使うのは高石だけだ。


 デスクトップには「アルバム1」「アルバム2」「アルバム3」という名称のフォルダが三つあるばかりで、高石のいろんなファイルがごちゃごちゃしている画面とは正反対だ。


 明らかに他人のものだ。しかし、パソコン自体は高石の使っているものに間違いないし、パスワードもそのままでログインできたのだ。

 もしかすると、何か変なウィルスにでも感染したのだろうかと、高石は俄かに不安になった。

 どういう仕組みかはわからないが、パソコンの中身が他人のものとすりかえられてしまうようなウィルスがあるのかもしれない。


 同じ目に遭っている人がいないか、検索してみようと携帯に手を伸ばした時だった。

 何も操作していないのに、プレビューが立ち上がり写真ファイルが開いた。

 一枚だけではなく、次々に、何十枚もの写真が開いて画面を埋め尽くしていく。

 その写真は、全部同じ写真だった。花柄のワンピースを着た少女が、無表情で立っている。


 同じ写真が何枚も何枚も重なって開いていく。


 一瞬呆気にとられた高石だったが、はっと我に返って電源ボタンを押した。

 消えなかったらどうしようかと思ったが、幸い強制終了することができて、画面は暗くなった。


 しばらくの間、パソコンの前に座ったままどくどくと鳴る心臓を落ち着けていたが、不意に階下から叫ぶように名前を呼ばれて驚いて立ち上がった。


 階段を降りると、母親が居間で腰を抜かしていた。


 どうしたのかと尋ねると、たった今、花柄のワンピースを着た見知らぬ少女が階段を駆け下りてきて、玄関の前で消えたのだと言う。


 一時間ほど経ってから、高石は恐る恐るパソコンの電源をつけてみた。

 画面には青い空が広がり、いつもの見慣れた乱雑なデスクトップが現れた。

 どこにもおかしな点はなく、セキュリティソフトからの警告もない。


 とすると、あれは人工的なウィルスが原因ではなかったのだろうか。

 パソコンがウィルスに感染していなくて良かったと喜ぶべきだろうか。

 それとも。





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