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魔法使いの僕は、同じクラスの女子に飛び膝蹴りされた  作者: 海ノ10
一章「一般人なら死んでた」
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彼の血筋




 ――昨日の回想が終わるのと同時に授業も終わり、謎の疲労感に襲われた僕は深く息を吐いて机に突っ伏す。

 アレは疲れた。膝蹴りくらったことやまさかのカミングアウトも疲れたけど、それ以上に何故か怒り狂う立川から逃げるのが一番疲れた。今朝登校してからいろいろ言われたのも、今僕が机に突っ伏すほど疲れている要因の一つだ。

 本当に災難だ。僕の日頃の行いは、こんな思いをさせられなくてはいけないくらい悪かったのだろうか。自分自身でいい子だなんて決して思ってはいないが、そこまで悪いことをした覚えもない。

 因果応報という言葉が日本にはあるが、今の僕の場合は何もしてなくても悪いことが起こる。こういうのを運がないと言うのだろう。魔法使いらしく言えば、『星の巡りが悪い』だろうか。

 占星術は僕の得意分野ではないが、今度試しに自分自身を占ってみようかと思ってしまう。


「柊、疲れてるみたいだけどどうかした?」


 隣の席からこちらに体を少し寄せて話しかけてきた城田さんは、僕がこうなっている原因が自分にあるとは微塵も思っていないらしい。いや、さっきは僕の怪我の心配をしてたし、一応はあるのかもしれない。


「いや、何でもないよ。ただ朝から立川(めんどうなひと)に絡まれて疲れてるだけだからさ」

「今さりげなくディスられた気がしたのは気のせいか?」

「そっか。よくわからないけど頑張ってね、柊」


 会話に割って入った立川を完全に無視する城田さん。

 立川が「なんでスルーされたんだ?」みたいな顔で僕のほうを見てくるが、面倒なので僕もスルーすることにした。

 これ以上誤解を広げられても困る。僕の今朝の頑張りにより何とかクラスメイトの誤解は解けたけど、立川だけはその後もしつこくいろいろ言ってくるので、本当に面倒なのだ。

 あまりにしつこいと僕の雷(魔法)が落ちそうになるから、本人の体のためにもいい加減にしてほしいものである。割と本気で「最終的に記憶消して傷も治せば何してもいいよね?」と考えてしまう。


「それより、今夜、忘れないでね?」


 城田さんは内容をぼかしてそう言うが、言いたいことはわかる。今夜妖怪を倒しに行く話をしているのだろう。


「さすがに忘れないよ」

「今夜?」


 またも立川が会話に割り込んでくる。いちいち説明することでもないはずだが、また誤解されても面倒なのであらかじめ考えておいた言い訳を立川に伝えることにした。

 これは前もって城田さんにも話しておいたので穴はないはずだし、城田さんもフォローしてくれるだろう。

 情報共有のために、追ってくる立川を撒いてから連絡先を交換しておいたのが早速功を奏した形になった。

 ()しくも高校生になってから初めて連絡先を交換した異性が同業者(まほうつかい)ということになったが、狭い交友関係が少しでも広がったのはいいことだろう。

 ……まぁ、城田さんと関わった経緯から考えて僕自身のコミュ力が上がったわけでもなんでもないのが残念なところではあるが。

 次に連絡先を交換するのは誰だろう。もしかしたらあと一年くらいそんな人は現れないのかもしれない。


「城田さんが英語わからないって言ってたから、今夜電話で英語を教えるって話になってね。

 ほら、僕これでも最近まで外国に住んでたから、英語は得意なんだ」

「ああ、そういえばクォーターなんだったか」

「そーだよ」


 父さんが北欧と日本のハーフで、当然だが僕にもその血が流れている。僕の顔つき自体はほぼ日本人なんだけど、目の色が茶色とか黒じゃなくて青だからクォーターと言ってもあんまり驚かれない。

 立川との雑談中に初めてクォーターということを打ち明けた時もそんなに驚かれなかった。

 ちなみに、僕が外国で生活していたのもそのへんが関係ある。父さんと母さんはどちらも魔法使いで、母さんは日本の魔法使いなのだがヨーロッパに行ったときに偶然父さんに出会ってそのまま恋に落ち結婚したらしい。ハーフの父さんは最初からヨーロッパで働いていた。

 二人とも初めは僕を日本で育てようとしたらしいのだが、二人とも仕事で呼ばれて仕方なくそのまま家族三人でヨーロッパに住むことにしたらしい。

 その後諸事情あって僕一人で日本に戻ってきたのだが――そのあたりの話は別にいいだろう。


「へぇ、柊そうだったんだ。クラスで自己紹介した時に帰国子女なのは言ってたからわかるけど、クォーターなのは知らなかった」

「わざわざ言うほどのものでもないから言わなかったんだよ」

「ちなみに、どこの国?」

「北欧の国だよ。

 まぁ、そっちのほうの言葉が喋れるわけじゃないんだけどね。基本的に家では日本語だったし、他の人とのコミュニケーションは英語とかだったからさ。ヨーロッパのいろんな国を転々としてたし」


 欧米の魔法協会はだいたいの人が英語か古代魔法語でコミュニケーションを取っていたため、英語ができれば何の問題もなかった。というか一年に一回は引越しをして別の国に行っていたので、現地の言語を覚えている余裕なんてなかった、というのが正直なところだ。


「そうなんだ。でも、英語できるのは羨ましい」

「僕の場合はどうしても必要だったから習得しただけだけどね」


 というか、幼少期から日本語も英語も聞いてたから自然とバイリンガルになったというだけの話。ただ日本語の本はあまり読んでこなかったので、誰しもが知っているような話を知っていなかったりすることもあるのが悩みどころだ。かといって英語も『話せはするが語彙が豊富ではない』といった程度なので、どちらが母国語かと言われれば非常に悩む。どちらかと言えば日本語になるが。

 三人(結局立川はずっと話に入り込んでいた)でそんな話をしていると、すぐ十分間の休憩時間が終わり授業の開始を告げる鐘が鳴ったので、話はそれで終わったのだった。




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