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魔法使いの僕は、同じクラスの女子に飛び膝蹴りされた  作者: 海ノ10
一章「一般人なら死んでた」
15/36

家でしかできない話

更新

わ す れ て た

ので、今更新します



 僕はいろんな意味で疲労困憊になりながら、城田さんを抱えたまま自分の家の前までたどり着く。

 結局城田さんの家の場所がわからない以上どうしようもできず、仕方なく狐の妖怪に別れを告げて城田さんを抱えたまま家に連れてくることになってしまった。

 さすがに妖怪に任せるのは怖いし、かといってその辺に置き去りにはできない。結局、こうするしかなかったのだ。

 僕は鍵を開けて中に入ると城田さんを僕の部屋のベッドに寝かせ、リビングのソファーに座る。

 壁掛け時計を見ると短針はちょうど午後十時を指し示していた。感覚ではもう深夜二時とかなのだが、意外と時間が進むのは遅いものだ。

 鞄から一冊の本を取り出し、その真ん中あたりのページを開いて指でなぞる。

すると本の中から真っ黒で小さいカラスが飛び出してきて、目の前のテーブルにとまった。


『お前から連絡するなんて珍しいじゃねえか、シュウ。どうした? ホームシックにでもなったか?』


 カラスの口から若い聞き覚えのある男の声がして、僕はどことない安心感を得る。昔ヨーロッパで仕事をしていたときはよく聞いた声だ。

 彼は僕の所属する魔法協会の連絡役、ロッシ。かなり実力のある魔法使いだが、大きな怪我を負ってからは前線ではなくこうしてサポートの仕事をしている。具体的に何があったのかは怖くて聞けていない。


「ははっ、まさかだよ。僕がホームシックになるわけないじゃないか。なるとしたらとうの昔になってるよ」


 僕たちは誰かに聞かれても解読されないよう、ヨーロッパの古代魔法語を使って会話をする。これは秘密厳守のためのルールで、このために僕は必至で古代魔法語を覚えたものだ。


『それもそうだな。俺としたことがうっかりしてたよ。

 で、本題は何だ?』

「僕がバカンスに来た学校に『異形』が現れた」


 簡潔にそう言うと、通話の向こうでガッシャーンと何かを倒す音が聞こえてくる。これは絶対動揺しているな。まぁ僕が彼の立場だったとしても絶対動揺するし、その反応は当然だといえる。


『は? 異形だと?

 お前今完全に休みだったんじゃなかったのか?』

「休みのはずだったんだけどね。実はたまたま同級生に魔法使いがいて、その子と一緒に校舎に居るって噂の妖怪とやらを倒しに行ったら……出くわしたよ」

『相変わらず悪い意味で神様に好かれてるな』

「ほっとけ。神なんて信じてないくせによく言うよまったく」


 いちいち軽口を入れないと先に進めないのかあいつは。

 そんなことよりももっと先に話すべき重要事項があるはずだ。


「……実際問題、これはかなりきな臭くなってきた。ここに来たのは完全に休暇のはずだったけど、それは無理かもしれない」

『ああ、そうだな。異形がいるってことは、遠くないどこかに【アイツ】がいるってことだ。気を引き締めて行けよ。こちらとしても色々調べるが限界がある。そっちに派遣する人手はないから、お前が調査してくれ』

「わかってるよ。

 あ、あと一つ個人的に聞きたいことがあるんだけど、ユキ・シロタって魔眼持ちの魔法使い聞いたことある?」

『いや……ないな。

俺の情報網に引っかからないとすると秘匿されてるのかもしれない。

気になるなら軽く調べてみるが?』

「うん、何か気になるから一応調べといて。

 じゃあ、何か追加情報がつかめたら連絡する。必要になったらこっちの魔法協会に連絡させるかもしれない」

『オーケーオーケー。そうしてくれ。じゃあな』


 向こうがそう言うと、目の前でカラスが一瞬にして赤い炎に包まれて消えた。

 それを確認した僕は、思わず深くため息を吐きソファーに深く腰掛ける。

 本当面倒なことになった。まさかヨーロッパで僕がずっと探してた犯罪者に日本で会うことになるかもしれないとは。

 日本には長い休みのために来たのに働く羽目になりそうだ。

 まずはこっちの魔法協会に接触して悟られないように情報を手に入れるところから始めなければ。ああ、そうだ。城田さんに案内してもらえばいいんだ。

 手伝ったんだからそれくらいは許されるはずだろう。


 僕は明日が土曜日で学校がないことに感謝しながら、魔力を消費して疲れた体を休めるために意識を闇に落としていった。




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