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第6話 年の差二人

ティナに招き入れられて室内に入ると、フワッとハーブの香りが鼻腔をくすぐった。

(いい香りなんだけど……眠らされて、とか無いよな……〇ザリーのトラウマが、こんな所でも発揮されるとは……)


「お、お邪魔しま~す。いい香りがするね!」


マサキ反射的に「間が持たないという感覚」で、わざとらしく感想を口にしたのである。


大抵の場合、初めて訪れる家の感想は視覚情報と香りである。

よっぽど広いとか狭い、汚い等の強烈な視覚情報以外は、その家の香りの方が印象が強くなる物である。


前世のスメルハラスメントといった言葉もある様に、視覚情報を重視すり余り「香り」に気が付かない人が多いのも確かだが、臭覚は自分等が思って居るよりも敏感なのである。


「はい!どうぞ!これはキンモクセイの花から、香り成分を抽出してお香にした物なの。」


(キンモクセイとかこの世界にもあるのか?なんで名前同じなん?お香?って作れるもんなのか?)


「そういうこともできるんだね。」

(ん~……俺にしては、何とわざとらしい爽やかな口調だ……言ってて恥ずかしくなって来るわ。)


「色々やらないと生きて行けないからね!

ちょっとご飯作るから、その辺でゆっくりしてて!」


ティナと名乗る美少女は、警戒心を微塵にも感じさせない様にそう言ってマサキを置き去りにし、その場を立ち去って夕食の支度を始めたのであった。


「あ、有難うございます。」

(何か、置いて行かれた……とはいえ、この家の間取りは1LDK?かなり広いリビングと寝室が1間……なのかな?食卓テーブルの椅子に座ってじっとして置こう……つか他の人は?見ず知らずの人を家に招き入れるとか、危機管理どうなってんだろう?自分で思ってなんだけど……しかも何故こんなにフレンドリーなんだ?オッサン耐性とかでもあるのか?)


カチャカチャ……

トントントン……


ボーッとしながらティナの後ろ姿を見ていると、疲れからなのか睡魔が襲って来たのである。

それはそうだ。前世の最期が寝てたとは言え色々あり過ぎた。

転生を告げられた事、よく解らないまま異世界召喚、ティナと云う美少女との出会い、初対面にも関わらず捜し物を手伝ったり、家に招かれたり……と、転生とか召喚は別にしても、マサキにとってはリアルでこれらのイベントをこなしても疲れるレベルであった。

何せ「コミュ障」なので初対面の人と会話をする事さえ、ハードルが高いのである。

その俺が、今回#行__おこ__#ったクエストは、自分的には「高難易度」にカテゴライズされるものであった。


「頑張ったよ……俺……」

等と下らない妄想をしている内に、睡魔には勝てずに寝てしまったのだった。


「…………さん」


「………………きさ ん」


(こういうのをデジャブって言うのか?)


「マサキさん、ご飯できましたよ!」


眼を擦りながら食卓を見ると、シチューとパンとサラダが用意されていた。


「す、すみません、寝ちゃってて……」

(何故そんなに普通なんだ?てか、美少女に名前呼ばれて起こされるとかどんなシチュよ?絶対有り得ない!)


「別に良いですよ!こちらこそ初対面なのに捜し物手伝って貰っちゃって……せめてもの御礼ですって!」


ティナは何故かドヤ顔でサムアップ。

(いやいや……だから何だってそんなにフランクなのよ?)


「さ、食べましょう!お口に合うかは分かりませんけど、合わなければマサキさんの食事は無しの方向で……(ニヤリ)」


何かがおかしい……

何故普通に俺、名前で呼ばれてんの?

色々と、疑問が脳内に思い浮かび上がって来るのだが、食欲には勝てず、マサキは慌てて出された物を口にしたのである。


「い!いただきます!」


「はい、どうぞ召し上がれ!」


「あつぅい~!!!」

(俺、猫舌なの忘れてた……)


「だ、大丈夫?そんなに熱かった?」


「大丈夫……ちょ、水!水を頂けると助かる!」


はい、と水の入った木のコップを受け取る。


「舌、火傷した……けど美味しい!」

(普通に美味しい。シチューとか失敗しようが無いんだが、散々歩き回って食べる物は何よりも美味に感じる。あれ?よく良く考えれば、今の状況って美少女の手料理万歳じゃね?)


「誰も取りはしないから、ゆっくり食べても大丈夫だって(笑)」


「お、おう!有難く戴きます!」


(リアル世界てか、前世の世界の食べ物とこの世界の食べ物の違いが解らないのだが、どうなんだろうな?つーか美味いなぁ……)


自分で感じているよりも思いの外、空腹だった様で、マサキはお代わりを3杯程してしまったのであった。


「ご馳走様でした。」


「お粗末さまでした。」


(なんか日本みたいだよなぁ……でも金髪娘なんだよなぁ……)


マサキは、食べっぱなしだと申し訳無いので、食器の片付けを手伝おうとしたのだが、お客なので座っててと断られたのであった。


ふぅ~と食事を終え一段落していると、食後のお茶を出されてティナが席に着いた。


「マサキさんは何処から来たの?あと、何歳なの?」


(来た~!その質問。ヤバいよヤバいよ……(汗)


「え、えーと、遠く?……かな?歳は見たまんまオッサンで46だよ」


(じぃ~…………(ジト目)


「ホントだって、(嘘は言ってない)遠い所から来たんだわ。歳もサバ読んでないし…」


「ホントに46なの?その格好で?なんて国から?」


(あれ?なんか尋問されてる?まぁ、それは仕方ないか。普通は初対面で家には招いたりしないもんな。)


「この格好でだよ。あ、違う!サイショハシッカリシタソウビシテマシター……」

(しまった!追い剥ぎされた設定だったわ!(冷汗)


「え、えーっと……国の名前はニホンて国。だからサバ読んでないって。」

(ヨシ!嘘は言ってないぞ!)


「ふ~ん……ま、歳はいいわ。で、その国ってどの辺に有るの?」

とティナは、周辺国を記載してある地図を開きながらマサキに質問をしたのであった。


(じ、準備が宜しいようで……身内は警察官かな?……歳は良いんだ。つーかハタチとか言ってたけどハタチに見えないんだよな。)


「え、えーっと、ここには載って無いみたい……です……」

(地図の絵は解るんだが、なんて書いてあるのか全く文字が読めない……)


「本当にぃ~……(ジト目)」


ティナはそう言いながら、前屈みに近づいて来たのであった。


(まぁ、見ず知らずのオッサンを、家に迄上げて何も聞かないってのは無いわな。前屈みで近寄ってきたので、男の#性__さが__#的にチラッと胸元を見ると……つーかブラしてないんかい!)


「( ✧Д✧) カッ!!(ニュータイプの音)」


ティナはマサキの目線に反射的に気が付き、と引き気味に元の位置に戻るティナであった。


「見た?」


「え?何を?(ヒューヒュー)」

(希望が詰まった柔らかそうな物は脳内保存だぜっ!)


「絶対見た…」


「だから、何を?(すっとぼけー)」


「ま、まぁいいわ……で、どこから来て、これから何処へ行くの?」


「え、まだ続くの?この話……」

(早いとこ他の話題に逸らさないと……)


「当たり前でしょ?何処の誰だか解らない人を家にまで上げてるんだから。」

(ですよね~……)


「信じるか信じないかはティナさん次第なんだけど……」

とマサキは前置きをして、この世界にやって来た事の顛末を嘘偽り無く話したのであった。

(嘘言うと後から辻褄合わすのめんどくさいから。)


「まさかの……けど、嘘を言ってる風でもないし、まぁ……取り敢えずは信じるよ。」


ティナは、その話を耳にすると、かなりドン引きな視線をマサキに送ったのであった。


「私をからかってる様子でも無いし、作り話でも無さそうなんだけど、ちょっと信じられない、ってのが私の正直な感想かな。」


(ま、そうなるわな……自分でも信じられないからなぁ。)


「親とか妹に会える見込みはどうなの?」


「ノープラン!(白目)」


「ノープランて……着るものもそんな格好じゃ目立つし、お金も無いんでしょ?

いつ会えるのかも分からないのなら、長丁場になるのは必至だよ!」


「うん、まぁそうなんだよなぁ……

てかさ、迷惑掛けついでに、この世界の事を色々教えてくれないかな?」

(先ずは情報収集が鉄則だ。解らない事が多すぎて進むべき道が全然わからん!)


「それは良いけど、何から話せば良いの?と言うか、話が本当なら、旅人でも無いし、追い剥ぎもされてない……よね(ジト目)」


(やばっ!バレたー!バレたー!)


「ごめんなさい!咄嗟に付いた嘘です!」


ティナは少々警戒を露わにして、ジト目でマサキに視線をおくったのである。


(取り敢えず、質問の内容を考えないと!色々聞きたいけど具体的に全く思い付かん(テンパリング)


マサキはアタフタと、眼を泳がせながら質問を考えるのだが、色々な事がいっぺんにあり過ぎて質問が思い当たら無く、咄嗟に頭に浮かんだ事をそのまま口にしたのである。


「取り敢えず…………彼氏とか居ないの?」


「ぶふぉっ!」


ティナは、飲んでいたお茶を盛大にマサキに向けて吐いたのであった。


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