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第5話 孤独な作業の上

高々と日が昇り、太陽が照り付ける中、マサキは黙々と地面を凝視していたのであった。


一応は「見ているだけ」では無く「探す」努力を居ているのだだ一向に見付かる気配は無いのである。


「無い……」


マサキは力なく言葉が漏れ、コメカミから汗が雫の様にポタポタ落ち、白っぽい舗装されて居ない地面に黒い跡を残したのであった。


「なんで俺こんな事やってんだろ?」


ティナと云う美少女が、叔母さんとやらの家に向かって数十分、岩の影やら草むら等を探してみたものの、指輪らしき物は一向に見当たらないのであった。


彼女が帰ってきた時、たまたまタイミング良く休んで居ると、本当に探していたのかと疑われそうなので、ポーズ的な意味合いでも、黙々と真面目に探しているのであった。


「あ~!もぅ!早く指輪見つかれよ!飛んでったとか言ってたけど、どんだけでかいんだ?その指輪?」


いい加減、炎天下の中、人様の指輪探しと云う「地道な作業」にマサキは飽きて来ており、暑さと疲労でヤケになって叫んでしまい、もう諦めようと向きを変えた時に「ガリっ」と何かを踏んだのであった。


「っと!石か?」


何かを踏んだ脚をどけて下を見ると、そこには探してたであろう指輪があったのである。


「えええ?何故??ここ、最初から探したのに……俺の苦労は一体……」

(てか踏んだ時「ガリっ」とか音したけど……傷とか壊れてないよね……)


今まで、暑さで吹き出ていた汗が、一瞬で冷や汗に変わったのである。(笑)


取り敢えず、何故急に見付かったのか訳が解らないが、探して居たであろう指輪が見付かり、安心やら、アチコチ探した苦労やら、傷付いてないかの心配で、マサキは少し複雑な心境になったのである。

(なに?この、「偶然上手い具合に見付かりました」展開は……。こうも上手く見つかると逆に怪しいわ……)


取り敢えず「指輪探し」と云う彼女との目的が果たせたので、戻って来るまで休んで居ようと、マサキは先程休憩した丘の上の木陰の#下__もと__#にゆっくりと移動したのであった。


この世界の世界観ってどうなってるんだろう?

人に捜し物を任せて、探してた本人がどっか行っちゃうって……

(まぁ、探す申し出をしたのはこっちだけど……)


その探し物とやらを、俺がちょろまかして換金するとか考えなかったのかな?

それとも、この世界ではそんな悪党は居ない設定なのかな?

(んな事は無いか!追い剥ぎで生命がって言ってたもんなぁ……)


ま、どっちにしろ、俺は最初からそんな事するつもり無かったから良いんだけどね……



サラサラと風で草や木の葉が揺れる音がコダマしている。


ムワッとする気温なのに、この世界には蝉は鳴いていないのであった。

(蝉とか存在しないのか?あ~……だる……ちょっと寝るか……)




「…………さん…………さい!」


「…………おーい!…………」


(何?夢?また続きかよ……)


「……キさん…………ださいよ!」


(え?ダサいよ?なぬ?まぁ……ダサいけど。)


「もぅ、マサキさん!起きて下さいってば!……」


「( ✧Д✧) カッ!!」


「ごつっ!」


衝撃を感じつつ、マサキはムクリと起き上がり周りを見渡のである。

陽もかなり傾き、空はオレンジとピンク色に染まっていて、時折ひんやりした風が辺りを吹き抜けていた。


「頭が痛い……」


(寝過ぎて頭痛か?てか今何時よ?)


腕時計を見ると17︰15と表示されている。

(なんで俺外で寝てるん?)


マサキは状況把握が出来ないまま横を見ると、例の美少女が頭を抱えてうずくまっていたのであった。


「あれ?」


「うぐぐぐぐ……」


「おーい……」


(やっと状況を思い出した……ティナと言ったっけ?指輪探してたんだよな……なんでうずくまってるんだろう?)


「うぐぐぐぐ……」


キッ!と大きなブルーの瞳を涙目にして、こちらを睨んでいたのであった。


「もしもーし!」


「もしもーし!じゃ無いですよぅ!急いで戻って来たら居ないし、探したら寝てるし、起こしてもずっと寝てて、急に起き上がって頭突きされるし……(泣怒)」


(あ~……起きた時の衝撃はそれか……痛いと思ったわ……)


「ごめんよ~……てかもう夕方じゃん。」


「そうですよ!早く帰らないと行けないのに……」


「ですよね……申し訳ないです……」


「ところで、指輪は見つかったんですか?」


マサキは少しドヤ顔で言葉は出さず親指を立て、ジャージのポケットからそっと指輪を取り出したのであった。


「わぁ~!ありがとう!ありがとう!本当にありがとう!」


ティナは掌に出している手を両手で掴んでお礼を言って来たのであった。


(お、おにゃのこに手をつ、つかまれてるぞぃ!)


「いゃ~……このくらい訳ないさっ!ふっ……」

(どうしてこういう時に、俺ってギャグっぽくしてしまうんだろう………)


「マサキさん!本当にありがとう!何処にあったんですか?」


(感謝が大きくてスルーされた……(泣)


「なんと言うか……全然見つからなくてさ、いい加減ヤケになって出てこいやー!的な事叫んだら見つかった。」

(ココは踏んでた事は黙っておこう……)


「不思議な事もあるんですねぇ……このお礼はきっとどこかで返します!本当にありがとう!」


(どこかってもなぁ……もう会わないかも知れないのに……ああ、社交辞令的な感じか……だよね。)


「そう言えばマサキさん今日泊まる所あるんですか?

この時間だと隣街まで1人だと、もう危険だよ。

ほら、追い剥ぎとか魔物とか……」


「ノープラン!ビシ!」

(ティナさんの話し方が、微妙にタメ口になってる気がするんだけど……)


「泊まる所も決めてないけど、いま何て?」


「いや、だから暗くなると追い剥ぎとか魔物とか出るから危ないよ!って……」


「ま、魔物……居るの?」


(キタキタキタキタキタキタキタ━━━(゜∀゜)━━━!!!!魔物キタ━(゜∀゜)━!)


「居るわよ。普通に。」


ごく当たり前の様に犬が居るわよ、とか猫が居るわよ!的な感じでこの世界に魔物がいる事を肯定されたのである。


「じゃもしかして魔法とかも有るの?」


「あるわよ。」


何をそんな当たり前の事を聞いてるんだと、少々ティナは呆れ顔になりながら答えたのであった。


「とにかく、早く帰らないといけないから、マサキさんも着いてきてよね!(キリッ)」


「え?あっ……ハイ。」


(オイオイ……イベント発生かぁ~?なんかこんな行き当たりばったりで大丈夫なのか?俺……)


「てか、着いてきてって何処へ?」


「勿論家よ。早く帰らなきゃって言ったでしょ?

聞いてなかったの?」


(な、なんか口調変わってるんですけど………)


「は、はい……聞いてた、聞いてました。

でも急に見ず知らずの他人とか呼んだら、御家族にご迷惑が掛かるんでは……」

(本当は野宿とか嫌~泊まりたいけど、一応紳士の体を取らなければ……)


「大丈夫よ、1人だもん。」


「なんと!」

(こ!これは!攻略ルート入ったぁ!けど1人て?なんで1人なんだ?)


「なら、尚更男の俺なんか行ったら不味いのでは……」


「だから大丈夫だってば。ここら辺では旅人に親切にするって習慣があるからね。」


そんなこんなでティナとマサキは行きがかりの出会いを果たし、家路に向かうのであった。



テクテクテクテク……


「い、いや、そうだとしても間違いが起きる可能性とかさ、色々あるじゃん?」


テクテクテクテク……


「マサキさん……間違いを起こすつもりなのかな~?(ジト目)」


「滅相もございません……(シュン)」

(何故、いきなり初対面の美少女の尻に敷かれてるんだろう?)


「なら、急いで帰ろう!」


(なんか最初の印象から大分違うなぁ……これはこれで気が楽だけどオッサン相手に気後れしない神経は凄いわな……)


テクテクテクテクテクテクテクテク……


「家はどの辺なの?」

(変な会話にならない様にしてるつもりだけど、なんだかナンパしてるみたいな感じだわ……したことないけど。)


テクテクテクテクテクテクテクテク……


「ん~30分位歩いた所だよ!」


(時間の概念とかは前世と同じなんだよね……)


テクテクテクテク……


(あ~完全にタメ語だ~悪い気はしないんだけど。)


「そうなんだ、てか、歩くの……早くね……俺、息がさ……ちょ、待って……」


トボトボトボトボ……


マサキは日頃の運動不足の為か、指輪探しで殆ど体力を使ってしまっておりティナの歩く速度に付いていけないのであった。


「え~……歩いただけで息切れ?もう少しだからちゃんと歩いてよ……」


「そ、そんな事言われても……しんどくて……」


「ほら、もう見えてるから、ゆっくりでいいから歩いて!」


先程まで茜色に染まっていた空も、今では黒くなって完全に夜になり、月明かりを頼りに夜道をトボトボ歩くと10分程でティナの家に着いたよであった。


木造のちんまりした一軒家で煙突が付いている。


「どうぞ!」


ティナの言われるがまま家にマサキは入ったのだった。

(某〇ザリーみたいな事にはならんだろうなぁ……)




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