第4話 問題解決
「えっと、俺の名前はクラタナマサキって言うんだけど、お嬢さんのお名前は?」
(リアル世界でこんな事言ったことないわ…というか、こんなシチュエーションあったら先ず不審者で通報されるって……(笑)
「クラタナマサキ?あ、私の名前はティナです。変わったお名前ですね。」
ティナと名乗るその美少女は、社交辞令的な感じで警戒しながら返答をしたのであった。
「そ、そうかな?あ~……確かに変わった名前かもなぁ……(震え声)」
(なんだって、転生世界ってヨーロッパとか外国的な所になるんだ?たまには日本的な異世界があったって良いのに……仮に日本だったら何時代になるんだろう?江戸とか?)
「ま、取り敢えず探そう。」
(間が持たん……何話して良いのか全くわからん。てか、気まずい……なんだって俺に話しかけて来たんだ?この#娘__こ__#は?)
「あ、はい。そうですね。手伝って貰っちゃってすみません!」
「いえいえ。お構いなく。」
マサキはそう言うと、風のそよぐ音だけが辺りに響き渡る草原で、また黙々と地面や草むらを掻き分けて指輪を探したのであった。
「……」
「…………」
(俺、なにやってんだ?転生して、いきなり物探し。魔法も使えないみたいだし、そもそもステータスとかスキルってのもあるのかどうか疑わしい。
力があると言われてもパワー的な力は前世と同じ。
なんなん?このクソゲーは……やっぱ、チュートリアル少なすぎだよ。)
自分の知識上の異世界や転生とは全く程遠い状況に対して、少しばかりイラッとして来るマサキであったが、その時、ふと名前を呼ばれたのである。
「マサキさん!あそこで少し休みましょう。陽も高くなって来たし!」
と、少しばかり起伏のある丘の上に、ポツンと立っている大きな木の下を指さしてティナが言ったのであった。
探してる場所からは、五百#米__メートル__#程ある場所である。
「あ、うん。……そ、そうだね……あちぃ……熱射病になりそう……」
(おいおい……いきなり初対面の美少女に名前呼ばれたよ……俺。しかも手慣れた感じで……リアルじゃこうは行かん罠……)
マサキは指示された辺りに、ヘトヘトになりながら、木の木陰まで行ったのであった。
「どっこいしょ……と」
オッサンらしく掛け声を出して、地べたに腰をおろしたのである。
「ぷぷぷ…どっこいしょって……ぶふふ……コレどうぞ!」
ティナはいつの間にか、木のコップに水を注いで渡してくれたのである。
お礼を言いつつ、コップを受け取り
「いや~歳には勝てんよ、オッサンだし(笑)」
と言ったのであった。
「そんな事ないですってば!(笑)ところで、マサキさんは何処へ向かってるんですか?」
「お世辞は良いって(笑)
で、え、えーと…街?的な……(汗)
この辺よく分からなくて………うん。」
(この辺と言うか、殆ど何もわかっちゃいないんですけど……)
「旅人さんなんですか?」
「あ、いや……(人生の旅は迷ったまま終わったなぁ)旅人と言うか……はい。旅人だす。(やべ、噛んだ)」
(旅人!旅人とかめっちゃかっけぇ~!そんな職業があるなら就きたいわ!俺、職業旅人!ぶふぉ!)
「だす?ぷぷぷ…」
噛んだ所で、ティナがそっぽを向いて肩を震わせたのであった。
(ツッコミやめれ!なんか見た目に反して、めっちゃフランクなのね。)
「旅人さんなのに荷物とかその装備?というか、そんな着物で?」
そう思われるのも仕方が無いのであった。
ある意味寝巻きなのだから。
上はTシャツにジャージで、下はスウェット、持ち物無し。
ちょっとコンビニ行くわ、的な格好で旅人と言われても信ぴょう性が全くない。
この出で立ちを見て、誰も旅人とは信じないであろう。
「あ~……追い剥ぎされてさ……(嘘泣き)実はその時に旅の路銀から荷物から奪われて……(嘘泣きチラッ)」
マサキは白々しい演技を交えて、目頭を押さえながらかたったのである。
ティナはその話をしんじたのか、 驚いた表情でこちらを見ながらこの世界の一般常識を口にしたのであった。
「よく命が助かりましたね!物騒な話ですけど、大抵の場合は持ち物取られて殺されてお終いですよ。」
「マジで?」
(いや、マジ物騒じゃん。武器持ってないし…ヤベーよ……生きる術を先ず見つけないと……)
「マジです!(キリッ)」
ティナは親指を立てて返答に答えたのである。
(何故そこで親指立てる!)
「とはいえ、マサキさんが合間を見計らって逃げたのか、敢えて逃がしてくれたのか分かりませんけど、生き延びたのはラッキーだと思いますよ!」
「そ、そうかな。良かったー良かったー(棒読み)」
(まぁ、でっち上げの話だからラッキーもクッキーもないんだよね………)
「ティナさんは何処に行く途中だったの?
てか、こんなだだっ広い場所に女の子1人で大丈夫なの?」
マサキはティナに対して、良心が傷んだので気配りをして振りで思い付いた事を、取り敢えず文章にして話してみたのだった。
「えっと、ちょっと遠くの叔母さんの所に、家で作ったパンプキンパイを届けに行く途中だったんですよ。
それに、まだ陽が高いから追い剥ぎとかは大丈夫ですね。
と言うか、いつやられたんですか?」
(ギクッ!)
「あ、あー……。お、追い剥ぎされたのは……き、昨日……かな?
ま、まぁ、生命が助かったから良いんだけど……
で、でさ、届けるんなら早く行かないと、叔母さんが心配してるんじゃ無いの?」
「そ、そうなんですけど、指輪が……こんな事なら付けてくるんじゃなかった……走っててすっ飛んでくとは思わなかったんですよ……」
今にも泣きそうな顔でティナが言葉続けるたのだった。
「せっかく久しぶりに会うから、ハタチのお祝いに貰った指輪付けておしゃれして行こうと思ったんだけど…」
(叔母さんに会うのにお洒落?そういう年頃なのか?やれやれだぜ…ぶっちゃけめんどくさい……が、ほっとく訳にも行かない。
てか、ハタチ?こ、コレは!合法〇〇といふものか?いかんいかん……)
「じゃ、取り敢えずさ、そのパイ届けて来たら?その間俺が探してるから。」
(超!俺良い奴じゃん!)
咄嗟のマサキの申し出に、ティナの表情が途端に明るくなったのである。
「え?良いんですか?そんな、見ず知らずの人にそこまで……」
(貴方……絶対、俺からそういう風に話振るの待ってただろ?)
「まぁ、特に急いでる訳でも無いから良いよ~」
(俺、なんて良い奴なんだ……)
親指を立てながらマサキはそう言ったのであった。
「じゃぁ、1時間程で戻って来るので、探すの宜しく御願いします!」
ペコリとティナはお辞儀をしてバスケットを抱えて一目散に丘を駆け下りて行ったのだった。
「いいけど、走ると転ぶぞ!」
(フラグ立てちゃった?俺……)
そして豆粒程の大きさになる頃、ティナはコケたのであった。