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第3話 復活

爽やかに頬を撫でる風と、サラサラと草木の奏でる音でマサキの意識が戻った。


ムクっと起き上がり、寝ていたベッドの上で無い事を確認したのである。

(何処だ?ここは?)


周りを見渡すと一面は草原で、上を見ると葉が茂り大きな木が視界に入ってきたのである。

どうやら、丁度日陰になる大きな木の下で寝ていたようだった。

当然、下はベッドでは無いので地面なのだが、木の#下__もと__#は芝生状になっており、昼寝をするには持って来いの場所であった。

(な、なんでこんな所で寝てるんだ?俺……やっぱ、あれは夢じゃ無かったのか!てことは、マジで俺、お亡くなりに?)


流石に、今観ている現実と記憶が混乱していたので、ベッドに入り眠るまでの記憶をマサキは辿ってみたのである。


(ベッドに入る迄は憶えている。そして……あれ?そう云えば、途中でスマホが震えたよな……確か……緊急地震速報だったよな……で?どうなったっけ?)


マサキは記憶の糸を手繰り寄せて、何とか思い出そうとしたのだが、そこからの記憶をどう頑張っても一切思い出せなかったのであった。

何故なら、その瞬間に絶命したからである。(笑)


(アレは夢だったのか?転生が何とかって言ってた気がするけど一体何だったのだろう??

てか、転生て……もしかして本当に死んじゃった?

明後日までの納期の仕事とかあったのに……

あ、死んだから関係ないのか?で……

で?ここからどうすりゃ良いんだ?大抵は転生開始のチュートリアル的なイベントが発生するのがお約束なんだけど……いや、まさか、あの夢の内容がチュートリアル?だった、とか…………(汗)

と、取り敢えず街に移動か?兎に角日が暮れるまでに移動して情報収集が異世界転生のセオリーだもんな……)


マサキはそんな事を考えながら立ち上がり、スウェットに付いたホコリを払ったのであった。


「あれ?寝たまんまの服じゃん……( ̄▽ ̄;)」

黒いTシャツに赤いラインが入った某アニメのジャージ、そして黒のスウェットパンツと云う出で立ちである。

足元は、何故か#裸足__はだし__#で、仕事で使って居たDUNLOPの靴を履いていたのであった。

そして、ポケットには耳栓が入って居た。


(まさかの初期装備これだけ?)


無一文。孤立無援。

そんな言葉が、マサキの頭の中に思い浮かんだのである。


(取り敢えず動こう……)


かなり遠くに道らしきものを発見し、道なりに白い木の冊が見えたのでそこへ向かってマサキは歩き出したのであった。

取り敢えず道なりに歩いて行けば、何処かに着くなり、人に会うなりするだろうと思ったからである。


暫く歩くと疲れて来たので、道端の木陰に座って休憩を始めた。

(はぁ……疲れた……普段歩いてなかったからなぁ……てか、誰とも会わないぞ!この世界って人類て居るんだよな……居なきゃかなりピンチで、いきなり人生リトライとかにもなりかねんぞ!)


等と、陽炎で揺らめく道の先を眺めていたら、遠くから馬車が此方へ走って来るのが視界に入ったのである。


「!!!!ば、馬車……だと……」


ガラガラと大きな音を立て、かなりのスピードで道を掛け抜けて行ったのである。


(馬車?馬車初めて見た。某ランドで見た事あるけど、それとは違うな。つか何時代?てか何処よ?ここは……馬車が走るって事は自動車は存在しない世界なんだな。)


マサキは意を決した様に立ち上がり、色々と考えながら黙々と歩みを進めたのであった。


震災で俺は死んだ。そして家族も死んだ。

ケジメとして家族に別れを言う為に転生した。

ココは日本ではない。

時代も2000年代ではない。

(大抵、転生ラノベとかゲームだとチート能力とか起承転結の「承」で可愛い娘とか出てくるハズなんだけど……)


「なんだ!このクソゲーはっ!」


思わず独りで叫んだのである。

が、小心者なので、叫んだ後周りを見渡すが、誰も居ない。


「あ!なんか「力」がどーのとか言ってたよなぁ…」


マサキは立ち止まり、思い出した様に試しに少し弱く地面を殴ってみたのである。


「ぺち」


と音がして中指辺りの拳から出血……


「おおおおおお!ってぇぇぇ!」


(力変わってねーじゃん…つか痛いわ!いきなりヒットポイント減る感じだわ!自分でやっといてなんだけど……)


「ウィンドウオープン!」

と声を出しながら空をスライドしてみるが、何も出て来なかったのである。


「ですよね~………(泣)」


「どーすりゃいーんだよ!」


マサキは思いついた事を試し終え、結果に満足行かないと解ると、街道をとぼとぼ歩き始めたのであった。

当て度の無い行脚の始まりである。


(馬車が来たから人類が住んでるんだろうけど、一体どこまで歩けば良いんだ?てか、今何時頃よ?)


太陽は真上ではなく微妙な位置にある。


11時頃か?

「ヒトヒトマルマル、行動を開始する。(小声)」


独り人歩いていると、色々懐かしくなって来る。

好きだったアニメや曲、芸能人やらを思いだして、もう過去の事なのかと、少々寂しさを感じたのであった。


(てか、いい加減なんか、おいしいイベント起きろよな……)


現在の状況にウンザリしながら歩いていると、人影が見えて来たのである。


(この世界での初めての人だ!)


少しの喜びと共にイベントが起きれば起きたで、小心者なのでドギマギしてしまうのであった。(笑)


5ミリ程に見えていた人影が確認出来るほどの大きさになった時、思わずマサキは心の中でガッツポーズをしたのであった。


(おにゃのこや……ニヤニヤ……でも変に思われたらいけないから関わらんとこ……)


その女の子は下を向いて挙動不審にウロウロしていたのである。


(なんか探してるのか?無くし物かな?いや、関わらんとこ……)


ふと、その女の子も顔を上げてこちらを確認したのである。


(超美少女じゃん!なに?外人?

てかごめんね~おっさんだから~(笑)怪しくないからササッとフェードアウトしますよ~……(心の叫び)


その美少女はゆっくりと端に寄り、道を開けてくれたのであった。

そもそも、馬車が通れる道幅なのでそこまで端に寄らなくても余裕であり、人が通過出来るのだが、何故か彼女はそうしていたのであった。


(うわ~……超警戒されてんじゃん俺……サッと行こ……サッと……)


そうマサキは思い、歩くペースを上げて女の子との間隔を敢えて取って横を通過したのである。

(くわばら……くわばら……)


「あの~すみません……」


トコトコトコ……ピタ。


マサキは振り返り自分を指さした。


「はい?」

突然の美少女の問い掛けに、マサキは声を出す事もできなかったのである。


「あの~……」


「はい?」

(初対面の女の子と話すの苦手なんだよなぁ……)


「…………」


「………………」

(何だ?何だ?イベントか?てか眼が怯えてる様に見えるんだが……何故怯えながら声を掛けて来る!)


「あの……悪いんですけど、指輪一緒に探して貰えませんか?」


(ハイ!キタキタキタキタキタキター!イベントキター!ワッフルワッフル!やっぱ異世界転生はこうでないと!)


「え?何故ですか?」

(うぉぉぉ~!思わず口から出ちまった~!そ~じゃねーよ!何でそんなこと言ったんだろ俺は……)


警戒されない様に、とわざとらしく冷静な口調で言ったのだが、マサキは本心とは真逆な事を口にしてしまったのであった。


「あ、いえ、すみません……ご迷惑ならいいです……すみません……」


(ですよね……俺のバカ!)


「いや、良いですよ!(キリッ)只、普通に「何でかな?」って思ったので。」


「ありがとうございます!」

とその美少女は笑顔で返してくれたのであった。


パッと見17~8歳?日焼けはしてなく、ベージュの膝丈がかなり短いワンピースで、腰のあたりを紐で縛るような作りな衣装を着ていたのである。

そして、日差しが強い為か、#つば__燕__#の大きな麦わら帽子も被っていた。



(う~む……超美少女!癒しやのぅ……ヒロイン確定か?)


「ところで、どんな指輪を探してるの?(キリッ)」


「えっと、銀色で四角い虹みたいな石がはまってるんですよ。大きさはこんな感じで……」


探し物を手伝うと言った事により、その美少女は警戒心を解いたようで、真っ直ぐこっちを見て説明してくれたのであった。


(色白いなぁ……髪の毛サラッサラだなぁ……うわぁ~眼クリクリじゃん!睫毛ながっ!)


「あの……聞いてます?」


(( ゜д゜)ハッ!)


「え?あ!うん、聞いてる。と言うかなんで落としたの?」

(フォロー成功!俺グッジョブ!)


「その指輪、私の指には少し大きくて……気を付けていたんですけど……走った時に飛んでしまって……」


(てか、スカート丈短っ!見たいけどマジ目のやり場にこまるわ……)


「そっか~……まぁ、ちょっと探してみるか。」


「ありがとうございます!」



その言葉を合図に、2人で地面を這いつくばったり、草むらを探してみたりと終始無言である……


「………」


探す振りをしつつ、マサキは彼女の様子を伺っていると、しゃがんで石をひっくり返したりしていた。


「じぃ~…………」

(よっぽど大事なもんなんだろうなぁ……)


マサキは適当に探しつつも、彼女の行動を改めて眺めて見るのであった。


「………………っしょっと!」


彼女は大きな岩を持ち上げて位置を変えたりしていた。


「ハッ!(キラーン)」


(屈んだ時にラッキーパンチラが!(ハート)こ、これは………………)


「………………」


(全く気づいてないな。)


「え~っと、お嬢さん。パンツ見えてるよ…」

(俺紳士!ちゃんと教えたぞ!あのシーンは脳内美少女ファイルに保存したぞ)


「え?きゃぁぁぁ!」


突然の指摘に持ち上げていた石を放り出し、真っ赤になりながら草原を駆けて行ったのであった。


「おーい!」


(おーまいがー……これなら言わなきゃよかったのか……いや、チラ見してて後からバレた方がダメージでかいよな…)


「こっち来ないでください!(怒)」


(……ですよね~……)


「いや、ごめんて。見たのは謝るんだけど、黙って見てる訳にもいかなかったからさ。」


「じーっ……(ジト目)」


(な、何か!何か武器は無いのか?!いや違う!話を逸らさないと……)


「まだ指輪はみつからない?」


「……ええ、まだ……(ジト目)」


と、名前も解らない見ず知らずの美少女は、蔑む様な眼差しを此方に向けた。


(うわ~……俺、また警戒されちゃってるよ……ま、当たり前なんだけど。)


「日暮れまでに見つけよう!」


マサキは#態__わざ__#とらしく話題を逸らすように、本来の目的である指輪探しを強調した。


(なんも考えれないわ……こんな時俺のコミュ障が恨めしい。)


まだ太陽は真上であった。


「そうだけど……」


そう小さく俯く少女の表情は、半ば諦め気味であった。



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