転生
「それで結局、焼き殺されてしまったと?」
「ウム・・・そうらしい」
彼女は苦々しさを滲ませながら答えました。
「大口を叩いていた割には・・・」
「・・・言うな」
そう呟いて赤面するヒルダ。とんだ赤っ恥、というところでしょうか。
話を聞く限り、どうやら彼女はキレやすい性格のようです。口には出さず、心のうちに仕舞い込んでおきましょうね。
「と、ともかく! 本当にここが別の世界、もう1つの宇宙だというなら、帰る方法を考えねば・・・」
「アテは有るんですか?」
彼女がばつの悪そうな顔をしながら話題を逸らそうとするので、私もそれに合わせて質問を投げ掛けました。
ところが・・・。
「無い!」
「でしょうね」
自信たっぷりに否定されました。いいですね、そういう何の根拠もない元気は好感が持てます。
しかし、現状を分析するに、色々と考える必要が有りそうです。特に私は、先程から気になっていた事を打ち明けました。
「それにしても、おかしいですよね」
「何がだ?」
「もし本当に焼き殺されたのなら、貴方の肉体は炭クズになるまで焼失しているはず」
「クズは言い過ぎだろう・・・」
私は彼女の目を直に見据えながら、こう指摘しました。
「なぜ、貴方の肉体は、今ここに存在しているのでしょう?」
「それは、まぁ・・・確かに」
その時、咄嗟に私はある言葉を思い出していました。宗教界で「生まれ変わり」を意味する、最近は本屋のオタク向け書棚で頻繁に目にするようになった、あの言葉を。
「ひょっとして、これが『転生』・・・?」
「な、何だと!?」
肉体に死が訪れても、魂や記憶、宗教的役割、霊的エネルギーなど、その人物の中核をなす部分が、新たな肉体に宿って新しい人生を始める事。それが転生です。
もしかすると、ヒルダの身の上に起きた事もそうかも知れない。そう告げると、彼女は目を丸くして驚いていました。
「私は異世界に転生したというのか!?」
「可能性は有ります。が、疑問も残ります」
私はそう断ってから、深く息継ぎをしました。幾らか長いお話になりそうだったからです。